2022年6月9日(木)~6月28日(火)、小竹向原SAiSTUDIOコモネAにて、作・演出 本谷有希子による舞台『マイ・イベント』の上演が決定した。
2019年8月、うだるような暑さの中、「夏の日の本谷有希子」と銘打ち、11名の出演者とともに演劇作品『本当の旅』を上演した、劇作家・小説家の本谷有希子。自身の小説を演劇として立体化する取り組みに感じた手応えをもとに、前作から3年ぶりとなる2022年6月、「梅雨の走りの本谷有希子」として、自身の小説『マイ・イベント』の舞台化に挑む。
2020年に出版された『あなたにオススメの』(講談社)に収録された今作。物語は、異常なまでに防災意識と選民思想の強い夫婦が住む川沿いのマンションに、巨大台風が接近するところから始まる。過剰なまでに利己的な夫婦ですが、どこか笑えないことに気づく、人間の裏も表も見せつけられるような一作だ。
夫・渇幸に、映画やドラマでも多彩な役柄を演じるバイプレイヤーでもあり、五反田団、ほりぶんなど小劇場でも活躍する黒田大輔。妻・張美は、ドラマ『阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし』での阿佐ヶ谷姉妹役も記憶にあたらしく、現在舞台『命、ギガ長スW(ダブル)』にも出演中の安藤玉恵。この癖の強い夫婦を、強力な個性を放つふたりが演じる。演出の本谷とも同世代であり、かねてから交流もあり信頼を寄せるふたりとともに、小竹向原のスタジオでビルドアンドスクラップを重ねながら創り上げられる、じっとりとした梅雨にぴったりの本作。滑稽なまでに意識の高い夫婦をあなたは嫌悪するか共感するのか……期待したい。
本谷有希子コメント
小説として書き上げている最中から、「この作品はむしろ舞台にしたほうがよくない?」と思っていました。いつもは難航するキャスティングも、すぐに浮かびました。「黒田大輔と安藤玉恵の、二人芝居」。もうこれしかないと思いつき、そのまま進めてしまったので、よもや二人でやる内容でない原作だということは、かなり後になって気がつきました。けれど、もうやり切るしかありません。ジメジメした季節にふさわしい、反吐が出るほどジメジメした芝居を、限界に挑戦しながら創りたいと思います。
あらすじ
巨大台風が近づきつつある川沿いのマンションに住む渇幸・張美夫妻。防災への意識の高い渇幸は、異常なまでに備えられた防災グッズや食料の備蓄をせっせと確認し、万事に備えて最上階の部屋を購入した自身を全肯定している。妻の張美もまた、過剰な買い占めをする夫に近所の噂が立つのを嫌いながらも、基本的には渇幸の選民思想には同調している。そんな夫婦の部屋へ、河川の氾濫を恐れた1階住民の大家族が押しかけてきてーーー。