日本総合悲劇協会VOL.7『ドライブイン カリフォルニア』 松尾スズキ インタビュー

不朽の傑作悲劇が、キャストを一新し18年ぶりの再演


“21世紀の不幸を科学する”と銘打ち’96年に立ち上げられた「日本総合悲劇協会」の不朽の名作『ドライブイン カリフォルニア』が、’96年の初演、’04年の再演以来、18年ぶりに上演される。日本総合悲劇協会の第一作である本作について作・演出の松尾スズキは「僕の他の芝居とはちょっと違う」と明かす。

松尾「僕の戯曲の中でも一番ウェルメイド※1に近いのではないかという思いがあります。今回は3回目ですからね。人間の悲しみ、おかしみなどがより幹の太いものになって、見応えのある芝居にできたら」
※1 出来や構成が良くできているさま


それを上演する「日本総合悲劇協会」とは、松尾のプロデュース公演企画。

松尾「僕には(主宰する劇団)大人計画という母体があるのですが、いつも劇団員でやっていると行き詰まるのではないかという思いから、外部の人たちとも積極的にやっていこうと作ったものです。足りないからゲストを招くというのではなく、外部の人たちと大人計画が渾然一体となって行う芝居をやっていこう、というもので、戯曲に関しても大人計画の芝居のような“当て書き”をせず、戯曲単体で成立するものが書きたいと思っていました」


そうして生まれた『ドライブイン カリフォルニア』や『ふくすけ』『業音』『不倫探偵 ~最期の過ち~』は、これまでの松尾作品とはまた違う魅力を放つものとなる。中でも本作は、「何度か再演をやりたくなるということは、自分の中で質の高い戯曲だと思っているからだと思う」と明かす自信作。今回はキャストを一新し、大人計画の阿部サダヲ、麻生久美子、谷原章介ら多彩な面々が揃う。

松尾「阿部が演じるアキオは、初演は徳井優さん、再演は小日向文世さんが演じてきた役です。阿部もようやく年齢を重ねてきたので、そろそろ大人の役を、と思いキャスティングしました。麻生さんは、ご本人はすごく明るい方なのですが、舞台に立った時の儚い感じがいいなと思っていて。秋山菜津子さんが演じてきた役なのでご本人はプレッシャーもあるかとは思いますが、新しいマリエ像をつくってくださるのではないかと期待しています。谷原さんとは初めてですが、今回の若松役に合っていることと、大人計画の芝居を観ていただいているので、僕の笑いを理解してくださっているはず、ということでオファーしました」


そもそも作品を“悲劇”にしたのは「コメディよりは悲劇のほうが僕らしいから」と松尾。

松尾「人間というものを描こうとすると、僕はどうしても悲劇的な側面を見てしまう傾向があって。それをきちんと意識してやってみようと思ったのが『ドライブイン カリフォルニア』です。他人から見たら滑稽に映ることでも、本人にしたら悲劇的ってことはいくらでもありますよね。そういう多面性を描くのは散漫に見える危険もあるのですが、その“カオス”こそが僕に見える世界なので、そのことを書き続けるしかない。“笑い”と“悲劇”が同価値で同じ場所に存在するのは、人間にとって普遍的なことなのではないかと思いますしね」


悲劇としか言いようのない状況の今こそ、松尾の悲劇作品を全力でオススメしたい。



インタビュー・文/中川實穂



※構成/月刊ローチケ編集部 3月15日号より転載

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【プロフィール】
松尾スズキ
■マツオ スズキ 作家、演出家、俳優。1988年に「大人計画」を旗揚げ。多数の作品で作・演出・出演を務める。映画、舞台、小説など様々な分野で活動中。