大野拓朗、甲斐翔真 インタビュー|Daiwa House Special 音楽劇「クラウディア」Produced by 地球ゴージャス

写真左より 甲斐翔真、大野拓朗

18年の時を超えて、豪華キャストにより、伝説の作品が蘇る。岸谷五朗・寺脇康文が主宰する演劇ユニット「地球ゴージャス」による、音楽劇『クラウディア』は、桑田佳祐が書き下ろした「FRIENDS」ほか、サザンオールスターズの数々の楽曲で綴るジュークボックスミュージカル。2004年の初演、2005年のアンコール上演では、岸谷と寺脇が主軸となる役を演じ、約12万人の観客を動員した伝説の作品だ。18年ぶりの再演にあたり、主にミュージカルで活躍する豪華なキャストが集結した。その中心となるのは、禁じられた愛に翻弄される「根國」の剣豪・細亜羅(ジアラ)をダブルキャストで演じる、大野拓朗と甲斐翔真。ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』ではロミオ役を演じた経験もあり、身長も同じ。似ているというふたりの共通点は“ゴールデンレトリバー”。これまでもお互いに気になっていたそうだ。本格的な稽古に入る前に、お互いについて、作品について、様々に語り合った。

――ミュージカル界期待のおふたりが、初めてご一緒されますが、お互いにどんな印象ですか?

大野 僕は、甲斐君の舞台を観ているんですよ。

甲斐 二作品観ていただいてるんですよね。『ロミオ&ジュリエット(ロミジュリ)』と……。

大野 観れてないのよ。

甲斐 えっ!?そうでしたか?

大野 『October Sky ―遠い空の向こうに―』と『マリー・アントワネット』を観ているんです。ロミオは超観たかったのですが、僕がロミオをやっていたときに、(黒羽)麻璃央がマーキューシオをやっていたから、麻璃央のほうを観なきゃと思って、他の日に時間がとれなくて。

甲斐 それはそうですね!全然大丈夫です!

大野 歌がめちゃくちゃ上手ですし、甲斐君のお芝居が好きです。好きと言った後にこんなことを言うのもですが、僕らはちょっと似ているなと。お芝居の方向性やキャラクターの持っていき方というか。端正なゴールデンレトリバーというか。

甲斐 あははは!

大野 だから、ロミオを観てみたかったんです。僕はロミオをやった時に、よくお客様に「ハッピーなゴールデンレトリバー」と言われていて。

甲斐 どっちもゴールデンレトリバーなんですか!

大野 人懐っこそうで、大型犬っぽい。だから、同じ役をやらせていただくと、どういう違いが出てくるんだろうか、逆に似た感じになるのかなと。今までのダブルキャストでは、雰囲気が違う人たちとご一緒させていただくことが多かったのですが、今回は身長もまったく一緒です。年齢が大幅に違うので、そこでどういう違いが出てくるのか楽しみですね。

甲斐 大野君のロミオを観ていた人たちが、僕のロミオを観て、その影が見えると言っていました。

大野 おお~!

甲斐 本当にゴールデンレトリバーという名前を使って、ツイートしていたんです。だから、同じ犬種かと思って……。

大野 同じ犬種(笑)。

甲斐 だから、共通の知り合い(舞台のヘアメイクさん)に大野君の話を聞いたのですが、僕の話をしていたと伺って、勝手に嬉しくなっていました。本当に、遠いところで、早くお会いしたいなとは思っていたんです。


――甲斐さんも、大野さんのロミオはご覧にはなっていないですか?

甲斐 DVDは死ぬほど見ました。

大野 どっちのロミオのほうが良かったですか?嘘、嘘(笑)。

甲斐 どっちも!(笑)


――ロミオを演じる前にたくさん見たんですか?

甲斐 もちろんです。


――影響されませんでしたか?

甲斐 ロミオがどう演じられてきたのかを知りたかったんです。大作なので、不安でしたから。まずは作品を自分のなかにちゃんと入れようという意味でも、大野君と古川(雄大)さんの『ロミジュリ』を交互に見ていました。


――物語の構図的にも、そのロミオに近い印象もありますが、『クラウディア』の細亜羅役に関して、おふたりはどう思っていますか?

大野 状況や、愛の話ということ、隔たりがあって、それを乗り越えて愛を成就させるみたいなストーリーは似ています。でも、誰もが一度は聴いたことがあると言っても過言ではない、サザンオールスターズさんの歌で作り上げられる作品ということと、エンタテイメントが詰まった岸谷五朗さんの演出は、コレクションに登場しそうな衣装を身に纏いながらの激しい殺陣や豪華な群舞とコーラス、コメディ要素も取り込まれるので、全く違うかなと。僕はロミオの時に、ハッピーで弟キャラのゴールデンレトリバーでしたが、庇護欲的な意味で、「弟キャラ」と言っていただけていたとは思うのですが、今回は分かりやすく、殺陣や衣装でカッコいいところを魅せられたりするので、新しい自分を出せるのではないかと、とても楽しみです。

甲斐 僕はロミオと比べると、細亜羅のほうが全然大人で、年齢や考え方、その場での出で立ちなども、ある種自立している人で、愛についても元々知っていたと思うんですね。それを踏まえた上で、「僕はこの戦いは嫌なんだ。戦う意味がないじゃないか」と言っていた。でも、知っていた愛じゃなかった、本物の愛、もっとすごい愛に出合って、その愛を追求するためには戦いから逃れることはできなかった、という結末だなと思います。ロミオは、とにかく、ジュリエットが好きだから一緒に駆け落ちしようとして死んでしまった、本当に若く世間知らずだからああいう結末になってしまった。その差は大きいと思います。もちろんストーリーの構成や、古くから争い続けている家同士の恋愛というところは、確かにロミジュリっぽいですが、実は中身はそんなことない。表面上ではそういう印象があるかもしれませんが、深くまで知っていただけたら、和製ロミジュリではなく、『クラウディア』の物語がある。ロミオじゃないですよと、今のうちに言っておきたいです。


――作品は18年ぶりの再演で、クラウディアを演じた本田美奈子.さんや、山本寛斎さんらのDNAというか、いろいろなものを受け継がれて、また皆さんが演じられると思いますが、演じられる上で、ご自身のなかで大切にしているものはありますか?

大野 僕はどの作品に出る時もそうですが、劇場に足を運んでくださって、この作品を選んでくださった皆様に、一生の思い出に残るような空間をお届けしたいという気持ちを持って取り組んでいます。その中でも、やはり一番エンターテインメント性あふれる、直で見られる芸術がミュージカルだと思っています。だから、毎回ミュージカルをやらせていただく時には、『ロミジュリ』の最後の挨拶でもいつも言っていましたが、「この空間で過ごした時間が皆さんにとって一生の思い出になりますように」という思いを大切に、役者をやっています。

甲斐 僕は誰かの思いを受け継ぐというよりも、とにかく突き進んでいる感じです。もちろん、いろんな役者の皆様の演技や歌に、すごいなと感動したり、勉強しながら今まで来ていますが、作品を大事にしています。その根底は、もちろんお客様のためにですが、作品を完璧に仕上げなければ、お客様にも喜んでいただけないと思います。作品に全力を注ぐのは、当たり前かもしれませんが、作品のことを考えながら、稽古は本当に大事にしています。本番中でも、やはり作品を磨いていくことは忘れずにやっていますね。


――地球ゴージャス作品へのご出演は初めてになりますが、地球ゴージャスに出演すること、その中心でということについてのお気持ちはいかがですか?

甲斐 実は『The Love Bugs』という作品の稽古場に2回ぐらい見学しに行ったんですよ。本当に仕事を始めたばかりの頃で、舞台をやる予定もなかった頃で、稽古場の端のほうで一日中見ていました。まさか自分が五朗さんの演出で、ゴージャスの作品で、こういう風に重要な役をやらせていただくなんて、その頃の自分に教えてあげたい、びっくりすることです。ありがたい挑戦権をいただきました。


――ゴージャスの稽古場はちょっと独特というか、みんなで作る稽古場という感じだとお聞きしますが、何も舞台のことを知らなかった甲斐さんは、そこでどんなことを思いましたか?

甲斐 こういう風にやるんだな、としか思えないです(笑)。

大野 他の現場入ってみたら、「全然違うじゃん!」って?

甲斐 マット運動しないんだみたいな(笑)。

全員 (爆笑)

甲斐 初めて出演したミュージカル『DEATH NOTE』の最初の稽古で、「あれ!?マット運動しないんだ?みんなでストレッチしないんだ?筋トレ部とかないんだ?」と思いましたが、ゴージャスならではの稽古の仕方なんだなと、そこでやっとわかりました。今回は、地球ゴージャス作品というよりは、寺さん(寺脇康文)さんも五朗さんも出演されないので、どんな風になるのかわからなくて。噂によると『フラッシュダンス』はマット運動をしなかったらしいです。

大野 『The PROM』の時は、取り入れていたそう。

甲斐 『The PROM』は、寺さんも五朗さんも出てらっしゃいましたもんね。おふたりが出ているか、出ていないかで、どう違うんだろう……。


――率先してやらなきゃいけないかもですね。

甲斐 僕あんまりマット運動得意じゃないので、そっとしまっておきます。奥の方に。

大野 地球ゴージャスは僕の憧れです。歌ありダンスあり、一糸乱れぬ群舞やコーラス、それにコメディ要素が加わって、本当に華やかな楽しいエンターテインメント作品という印象です。僕自身も、至極のエンタテイメントを伝えたくてこの仕事をやっているので、メインキャストで出演させていただけるのは本当に幸せなことです。僕は、『エリザベート』でミュージカルに初めて出させてもらって、悔しい思いをして、その後5年間ボイトレをして、『ロミジュリ』で、再びミュージカルの世界に戻ってきました。その間に、ゴージャスの舞台を観て、めちゃめちゃ格好よくて、いつかあの世界に自分も入れたらなぁと漠然と考えていたことを覚えています。「いつかゴージャスに参加したい」という気持ちを糧にしてボイトレを5年間頑張れたということもあるので、すごく思い入れの深い作品、劇団です。


――岸谷さん、寺脇さんと共演経験はありますか?

大野 共演経験はないです。一方的におふたりの作品を観ているただのファンです(笑)

甲斐 僕は舞台ではないですね。映像では、寺さんとNHKの語学番組をご一緒しました。本当に“ゴージャスの寺脇さん”みたいなボケをずっとしていて、アドリブでダジャレが出てくる。それを、楽しくやらせていただいたので、今回共演できないのは寂しいです。でも、寺さんが演じたのと同じ役なのは面白いです。


――岸谷さんとはどんなお話をされましたか。

甲斐 ビジュアル撮影の時に、細亜羅は根に正義感がある人で、自分の真っ直ぐな意思がガンと通っていて、というイメージは伺いました。まだビジュアル撮影しかしていない段階で、台本も見れていないので、どうなるかわかりませんが、五朗さんの演出が楽しみだな、早く始まらないかなと思っているところです。

大野 本当に楽しみだよね。

甲斐 コメディはお手柔らかにとお伝えしたいです(笑)。

大野 え、挑戦しようよ!

甲斐 すごく乗り気(笑)。

大野 コメディ大好きなのよ。お客様や演じている方まで幸せにしてしまう空気感が大好き(笑)。

甲斐 今までは?

大野 『プロデューサーズ』が、ガンガンコメディだったんだけど、たくさんのお客様の笑い声が劇場中に響いて、すごく幸せだったなぁ。


――岸谷さん、寺脇さんが出演しないとなると、その要素を受け継ぐのが誰なのでしょうか。

甲斐 台本がブラッシュアップされて、コメディ部分も結構変わるみたいですが、ちゃんと受け継がれているところもあるらしいので怖いです。おふたりの関係性ありきのやりとりがありますからね。本田美奈子.さんの、あの感じもすごく素敵ですし。


――大野さんは、岸谷さんと何かお話されましたか?

大野 甲斐君と同じアドバイスや、戦いたくないけれど、止めなくてはいけないから戦わないといけない、と葛藤している感じや、強い顔のなかにもちょっと憂いを入れてほしいと仰っていました。岸谷さんは役者としても大好きなので、ビジュアル撮影の際に、少しですが、演出をつけていただいて、稽古場がますます楽しみになりました。現場にいる全員に分け隔てなく丁寧で、すごく優しくて、とても尊敬しています。


――その想いはお伝えできたんですか?

大野 まだ、お伝えできていないです。緊張してしまって(照)。稽古場に入って、徐々に距離を縮めさせていただいてからですね。


――おふたりは舞台のなかでサザンオールスターズさんの楽曲を歌われますが、『真夏の果実』はご予定されているとのことです。

大野 そうなんですか?やったー!『真夏の果実』とても心に響くんです。ですが、まだ、舞台上で歌う曲としての解析をしたことはなく、今回どのような感情で歌えば良いのかはまだ掴めていません。2012年の『エリザベート』の地方公演の時に、古川雄大さんといつも一緒にいたんですが、休演日に2人でカラオケへ行ったこともありました。そこで、雄大さんが『真夏の果実』を歌っていて、それがとてつもなく格好よくて、素晴らしい曲だなぁと改めて実感して、そこから僕もカラオケで歌わせていただくようになったんです。だから『真夏の果実』を聞くと、あの頃を思い出すんです。大切な思い出の曲ですね。

甲斐 僕は『真夏の果実』といったら、EXILEで知った世代です。「これはカバーなんだ。誰だろう。サザンオールスターズ、えっ!?先輩だ!」って。サザンオールスターズとの出会いは、やはり親が車のなかで流れているのを聞いていたので、知っている曲が多いんですよね。題名がわからなくても、イントロが流れたらすぐに反応します。

大野 (おもむろに)テーテテレテレテテーテテー♪とかね。

甲斐 (ピンと来ていない様子で)えっ……?「テ」と「レ」じゃわからなかったです、ごめんなさい(笑)。

大野 イントロなのに(笑)。

甲斐 なかなか舞台上で、サザンオールスターズを歌うことはないので、特殊なミュージカルというか。

大野 なかなかないよね。

甲斐 海外には、例えば『MJ』(マイケル・ジャクソン)とかはありますが、和製というか、日本版ですね。

大野 和製ジュークボックスミュージカル。

甲斐 みたいな感じ。これがもしかしたら、また18年ぶりに流行るかもしれない。

大野 今、ブロードウェイでジュークボックスミュージカルがめちゃくちゃ流行っているからね。


――サザンといえば日本を代表するバンドの一つです。おふたりは、サザンの音楽のどういうところに魅力を感じますか?

大野 やはりエンターテインメント性なんですよね。舞台上での全員で魅せる感じと、さらに桑田さんの、歌声もそうですが、明るい曲だと本当に楽しそうですし、『真夏の果実』などのしっとりした曲を歌われるとめちゃくちゃ胸に響きます。笑いあり涙あり感動ありと、1曲1曲がひとつの作品、ドラマになっていると思います。

甲斐 僕は、最新の情報を言えるんですよ。年越しでサザンのライブに行かせていただいたんです。

大野 おお~!凄い!

甲斐 9時半くらいから始まって、3時間のステージで、一瞬も飽きないんです。桑田さんの歌で何がすごいのかなと、じーっと見ていたら、抜け感というか、一見ふざけているようにも見えるんですが、実はめちゃくちゃ計算されている歌い方というか。

大野 唯一無二!桑田さん特有の素敵な「味」だよね。

甲斐 音で遊んでいたり、歌詞で遊んでいたり、表情で遊んでいたり、身振り手振りで遊んでいたり、ステージ上でずっと遊んでいるんですよね。でも必ず「ありがとー!」って、歌った後に感謝を贈っていて、人間として素晴らしい方だなと思いました。今年は桑田さんから始まっているので、責任をもって『クラウディア』を頑張りたいと思います。


――共演者の皆様はミュージカルの方々が勢ぞろいですね。この座組みはいかがですか。

大野 ポスター撮りの時、僕が一番手だったので、先に衣装とメイクをして撮影をしている間に、甲斐君や他の共演者の方々が入って準備をしていたのですが、撮影が終わってメイクを落とそうとメイク部屋に入ったら、イケメンがたくさんいて「イケメンパラダイス」でびっくりしてしまいました(笑)。

甲斐 その一員ですから(笑)。

大野 皆さんと今後仲良くなれるかなと楽しみです。

甲斐 クラウディア役も、本田美奈子.さんは、本当に一等星みたいな人じゃないですか。田村芽実さんと門山葉子さんが、どう演じるんだろうと楽しみです。あとは龍の子。

大野 壮ちゃん(平間壮一)ね。

甲斐 あと、新原泰佑。彼はめちゃくちゃ動けますよ。マジで“龍”みたいな動きをします。

大野 え、あの壮ちゃんより動けるの?

甲斐 ジャンルが違うんですよ。壮一さんはヒップホップ系ですが、新原君はジャジーなダンスをするんです。僕より若いですが、ダンスの先生ですから。

大野 先生!それはすごいね。


――最近だと『ニュージーズ』に出演されていましたね。

甲斐 『LUXE』というアイスショーにも出演していました。アイススケートもできちゃうくらいに体が動けるので、どんな龍の子になるんだろうと。きっとすごく動く演出になるんだろうな。

大野 お名前や存在を客席から観ていましたが、今まで共演したことがなかった方も結構いらっしゃるので、今回ついにご一緒できて、しかも自分が中心となる役であることが光栄でもあり、頑張らなければと思います。

甲斐 廣瀬(友祐)さんとは共演されていますよね。

大野 ヒロ(廣瀬)君、共演回数が一番多くて、ずーっと共演しているなぁ。出るミュージカルに、絶対にヒロ君がいると言っても大袈裟ではないくらい。


――殺陣に挑戦されるそうですが、何か準備していることはありますか?

大野 先日殺陣稽古がありました。

甲斐 一発目をやりましたね。

大野 甲斐君は初めてだったんだよね。刀っぽいものを握るのも初めて?

甲斐 初めてです。ビジュアル撮影の時に、「鞘の持ち方が逆」と五朗さんに言われました。それぐらいに初心者です。

大野 じゃあ、やっぱりもっている人は違うんだな~。稽古の最後のほうには、普通に格好よかったよ。

甲斐 全然そんなことないですよ!


――殺陣は何が難しいんですか?

大野 やはり刀の長さがあるので、相手との近い距離で切る時に、もし本当に当ててしまったら怖いとか、縮こまってしまう場合もあります。あと、刀を振る時の剣先の動きが一番大事なんですよね。剣先が流れるように動いていると格好よく見えるとか、切る時や切り終わりの体勢とか、挙げたらキリがなく、とても奥が深いです。でも、甲斐君は体感がしっかりしているので、最後に本番に近い殺陣の振りをつけてもらった時も格好よく決まっていたので、すごいなって。

甲斐 小学生の時に、拾った棒を振り回しているくらいしかなかったので……。空を切ってました(笑)。

大野 格好いい!(笑)。

甲斐 くそがきの遊びを格好よく言っただけです(笑)。でも、次の日は腕がパンパンでした。

大野 俺も筋肉痛だった~!

甲斐 3日ぐらいずっと痛くて。本番ではそんなことを言っていられないので、これを毎日やらないといけないのは大変だなと。普段使わない筋肉を使っていましたね。


――剣は重いんですか?

大野 竹でできているので軽いです。本番はもうちょっと軽くなると伺いました。

甲斐 でも、何百回も振ると、どうしても腕に来ますよ。

大野 自分の力で、刀を止めたりしないといけないから、筋肉痛になりやすいんです。僕は大河ドラマの『西郷どん』で、人斬り半次郎という幕末の最強の剣士をやらせていただいたので、血が燃え滾ってくるような気持ちです。この間の稽古で、久しぶりに剣を握って振りました。距離感もまだちょっと怖かったので、本気では振っていませんが、殺陣の格好よく見えるコツみたいなものは、少し勉強してきてはいるので、楽しみですね。


――今、腕を振られた時に、剣が見えた感じがしました。

大野 剣先が見えたんですか!?ありがとうございます!


――初演の時は、甲斐さんは小学生ですね。

甲斐 6歳でしたから、本当に枝を振っていました(笑)。当時は枝でしたが、今回はちゃんと刀を振って、最終的には人を切らせていただきます。


――最後に、皆さんにメッセージをお願いいたします。

甲斐 今、1月末時点ではコロナが大変なことになっていますが、きっと7月には安定していると願うばかりです。先程、お客様がいて、作品に向き合っていると言いましたが、お客様に届かなければ何の意味もありません。まずは観に来たいと思ってくださる皆様のその心を大事にしてこの時代に生きる僕にしかできない『クラウディア』が、7月に届けられるようにしたいと思います。とにかく皆様の健康を祈っています。健康さえあれば、いろいろなことができますから、観に来てくださることもできますし、本当にそれだけですね……。

大野 本当にね。夏にはもう少し状況が落ち着いてくれているのを祈っています。やはりこんなに長い間、自粛したり、規制が多いなかで、精神的にも皆さん鬱々とたまっているものがあると思います。格好いい殺陣を楽しんでいただき、ストーリーでも泣いて感動していただき、スカッとする、という至極のエンターテインメントを皆さんにお届けできたらと思います。

甲斐 ラストは、ぐっと来ますよね。僕は、いろいろな作品の取材で話してしまうのですが、差し迫った状況のなかで繰り広げられる劇が多いじゃないですか。現時点で、私たち自身がそういう状況下にあるので、いろいろな作品が響きやすいと思います。演じている僕らも、シナリオが、ふっと心に入ってきやすく、「この気持ちわかる」ということが、コロナ前より多くなっていると思うんです。コロナはマイナスばかりですが、マイナスばかりじゃ悔しいので、そこから得られるものはあるはずだと思いながら稽古したいと思います。

大野 さっそく殺陣の稽古も始まっていますが、まだまだ本番まで時間があります。それまで殺陣の稽古をいくらでもできますから、スキルをどんどん上げて、皆さんの笑顔に繋がる作品にできるよう、夏に向けて頑張っていきたいと思います。



取材・文:岩村美佳

写真:ローチケ演劇部員