絶賛上演中!舞台『フラガール − dance for smile –』 │公開ゲネプロ・舞台挨拶レポート

2022.05.17

2022年5月14日(土)に初日を迎えた舞台『フラガール − dance for smile –』(新国立劇場 中劇場)。ただいま絶賛上演中の本公演の開幕に先立ち、5月13日(金)に行われた舞台挨拶とゲネプロの様子をレポートする。

映画『フラガール』は2006年に公開され大ヒットとなった不朽の名作。その舞台化作品である『フラガール − dance for smile –』は、2019年の初演、2021年の再演に続き、3度目の上演となる。物語の舞台は昭和40年の福島県いわき市。時代の変化の中で石炭を掘り続ける炭鉱町は、石油エネルギーの台頭により多くの人が職を失う危機的状況にあった。そんな時、町おこしとしてハワイ風のリゾート施設を作る計画が持ち上がる。炭鉱の娘たちは東京から来たダンス講師のもと、町を救うためフラダンスの練習を重ねていくが……。それぞれの事情を抱えながらもひたむきにフラダンスに向き合う少女たちを軸に、時代の波に飲まれながらも強く生きる人々の姿を描く。

今回の舞台では主人公であるフラガールのリーダー谷川紀美子役に、舞台単独初主演となる潮紗理菜(日向坂46) を迎える。炭鉱の娘たちにフラダンスを指導する平山まどか役には矢島舞美、紀美子の親友でフラガールに誘った木村早苗役は、太田夢莉。舞台版オリジナルキャラクターの和美役として兒玉遥、リゾート施設に反対し娘紀美子と対立する母親、谷川千代役は有森也実が演じる。

舞台挨拶では総合演出の河毛俊作をはじめ、潮紗理奈、矢島舞美、太田夢莉、兒玉遥、有森也実が登壇し、魅力を語ってくれた。

演出の河毛は「本作は産業構造の変革や、大きな時代の流れがあった時代の物語。それは今の時代にもリンクすることで、リアルな物語として今の私たちが抱える様々な問題、それにどう立ち向かっていくのか。そんな意味を込めて3度目の舞台を作りました。今回も素晴らしい出演者を迎え、役を演じるのではなく役を生きて欲しいという思いです」と話す。

主人公を演じる潮は「紀美子はすごく芯があり、仲間のために強くなれるかっこいい女性だなと感じています。私にとって憧れのような存在なので、舞台で紀美子に少しでも近づけたらという思いで、心を込めてこの舞台から気持ちをお届けできたらと思っています」と役柄の紹介と意気込みを語った。

今作で3度目の出演となるまどか役の矢島は「毎回やっていてすごく新鮮な気持ちで演じています。稽古場で実際にうしちゃん(潮)がどんどん成長していく姿を見て、まどかが紀美子に心打たれていくのはこういう感じなんだなと思っています」と自身と役柄を重ねていることを話した。

潮は、最後に観客へのメッセージを求められると「衣装の制服を着るときに前回紀美子を演じていた樋口(日奈)さんと、初演の井上(小百合)さんの名前があって、そこに私の名前が書かれました。衣装を着るたびに身も心も引き締まる思いでいっぱいになります。背筋は伸びるんですけど、背伸びはしないで、私らしく自分なりの紀美子を演じられたらと思っています。公演期間中は天候が悪そうですが、ここの劇場では常夏の太陽くらい明るい光を舞台からお届けできたらなと思っています」と笑顔で語った。

また、舞台の印象について「劇場に入った時、一番に感じたことは本当に皆様と近いんです。日向坂46のライブ会場と比べると想像できないくらい近い。客席に手が届きそうなくらいの距離。この距離でお芝居をお届けできるんだなと、緊張と嬉しさをいっぱい感じています。舞台は一瞬一瞬違うし、一日として同じ日はないと稽古の時から感じているので、色んなフラガールをここからお届けできたら」と公演に向けて重ねて意気込みを語ってくれた。

個性溢れる役どころを、全力で演じていたゲネプロの様子もお届け!

衰退していく炭鉱の町ではリストラが増え続け、毎月何千人もの労働者が職を失っていく。「一山一家」の合言葉の中、炭鉱で働く人々は不安とやるせなさを抱えていた。

そこへハワイの雰囲気を持ったリゾート温泉施設の計画が持ち上がる。

炭鉱町の娘である早苗(太田夢莉)は、この生活を抜け出し輝くチャンスではないかと考え、紀美子(潮紗理菜)を誘ってダンサーに応募する。

しかし集まったのは紀美子、早苗のほか数人だけ。フラダンスを見たこともなければ、ダンス経験もない田舎娘たち。本当にフラダンスチームなど作れるのだろうか。

寂れた田舎町と南国のリゾート地という多比の中で、夢に向かって進む娘たちの素朴ながらはつらつとした演技が清々しい。

炭鉱は衰退の一途を辿り、いら立つ労働者は「なにがハワイだ!」とハワイセンターに反対の声を上げる。一方センターの企画部長吉本(武田義晴)は、ダンスの講師を探すため上京、元SKD のダンサー平山まどか(矢島舞美)を連れてくる。借金を抱えるまどかはしぶしぶ炭鉱の町でフラダンス講師を引き受けることに。

トップダンサーでありながら母親の借金のため地位を捨て、それでもフラガールたちと新たな目標を見つけていく大人の女性を矢島が演じる。

田舎を見下し「プロを舐めるな!」と高圧的なまどかに、紀美子たちは不信感を持つが、その卓越したダンス技術と魅力にやがて信頼を寄せていく。また、まどかもひたむきな娘たちを見ているうちに、徐々に心を開いていく。

炭鉱組合員の反対運動が激しくなる中で、紀美子は炭鉱で働く母親千代(有森也実)に反対されながらも必死で練習を続ける。

そんな時、親友の早苗が家庭の事情でフラガールを続けられなくなったことを知る。プロのダンサーになるという約束を胸に、今まで紀美子を引っ張ってきた早苗の代わりに、紀美子がリーダーとして成長していく。

今作は炭鉱町を支えながらも時代の荒波に飲まれていく男たちの熱い想いが物語の背景を立体的にしている。

そんな人々の想いを受けながら、練習を重ねてプロのダンサーになっていく少女たち。明るい音楽と魅力的なフラダンスをたっぷり楽しめるのも本作の魅力だ。

自身のため、家族のため、町のためにフラガールを目指す彼女たち。それを受けて徐々に変わっていく町の人々。町を救ったフラガールたちの奮闘は、現代の私たちにも勇気をもたらしてくれるだろう。

本作の公演は5月23日(月)まで新国立劇場 中劇場にて上演される。

撮影・文/ローチケ演劇部