リーディングアクト「六人の嘘つきな大学生」原作者・浅倉秋成×牧島 輝×中村ゆりかインタビュー到着!

原作者・浅倉秋成×牧島 輝×中村ゆりか リーディングアクト「六人の嘘つきな大学生」

リーディングアクト「六人の嘘つきな大学生」が、6月22日(水)から25日(土)まで東京・渋谷区文化総合センター大和田 さくらホールで上演される。

浅倉秋成のミステリー小説『六人の嘘つきな大学生』(KADOKAWA)を原作とした舞台作品。脚本を真柴あずき、演出を山崎 彬(「悪い芝居」)が手がけ、朗読劇と演劇の中間を目指す“リーディングアクト”として上演される。出演者は、W主演を務める牧島 輝と中村ゆりか、小越勇輝、吉田健悟、高野麻里佳、山根 綺、京典和玖、佃 典彦。

本作は、成長著しいIT企業の新卒採用で最終選考まで残り、「1カ月後までにチームを作り上げ、ディスカッションする」という課題を与えられた6人の就活生の物語。全員内定を目標に仲を深めていくが、本番直前に課題が「6人の中から1人の内定者を決める」へと変更され、その最終選考の場でとんでもない出来事が起きる――。

原作者の浅倉秋成とW主演の牧島 輝、中村ゆりかに話を聞いた。

作者でも、登場人物たちの“顔”は見たことがないから

――まず浅倉先生にうかがいたいのですが、ご自身の著書である『六人の嘘つきな大学生』がリーディングアクトになることに、どんな感想を持たれましたか?

浅倉 書いている時点ではやっぱり、小説は最後まで小説として消費されるものだと、良くも悪くも割り切ってしまうのですが、今回、舞台化のお話をいただいて。「これ、できるのかな?」と一瞬考えました。でも、そう言ってくださるからにはできるんだろうなと思って(笑)。僕が書いた登場人物ですが、彼らの“顔”は見たことがないし、直接会ったこともないので、もちろん役者さんが演じるわけですが、「とうとう当人たちに会えるのか」というような喜びは間違いなくあります。以前、オーディオドラマにもしていただいた作品ですが、それともまた違う喜びが込み上げています。非常に楽しみです。

牧島 原作者の方とお話しできる機会はなかなかないので、ぜひ訊いてみたかったのですが、ご自身の書かれた登場人物が肉体を持つって、どんな感覚があるのですか?

浅倉 不思議な感覚はありますね。いま僕は漫画の原作もやらせていただいていて、その過程で、自分ががんばって描いた絵をプロの漫画家さんが本物の絵にしてくださる瞬間があるんですが、これが感動的なんですよ。それに近い感覚なのかなと思っていましたが、今日、おふたりにお会いしたことで、また別の感慨も湧いてきそうだなと感じています。楽しみです。僕は逆に「演じる」ということが、どういう気持ちなのかなとよく疑問に思うんですよ。その人に“なる”のか、あくまで“自分”というベースがあったうえで役がのっかってくるのか。

中村 私は今作が舞台初出演なのでまだわからない部分があるのですが、普段、役に向き合うときは結構時間がかかりますし、難しいなと思うことも多いです。肉付けしていくのは時間がかかるタイプです。

浅倉 「この役のこと、わからない」っていうときもあるんじゃないかなと思うんです。

牧島 ありますよね。

中村 はい、ありますね。

牧島 やっぱりどれだけ役になりきっても、“自分”というフィルターは通さないといけないので。例え役と似たような経験をしていても、同じ経験ではないんですよね。だからわからないことは出てきます。でも、それがふとわかる瞬間が、俳優として楽しい瞬間だったりもします。例えば舞台では「この台詞を言ったらあの場所に行く」と決まっていたりします。でも、役を深めていくと、「段取りとしてあの場所に行く」ではなくて、自然に足が向かったりするんです。そういうときの“役になっている感覚”はやっぱり楽しいです。

浅倉 役と自分がひとつになる瞬間、みたいなことですか?

牧島 そうですね。

浅倉 なんかそういうの聞くと感動しますね。かっこいいです。

牧島 かっこつけて言っちゃった感じになったけど、でも実際は必死です(笑)。



――出演するおふたりは原作を読んでいかがでしたか?

中村 作品の中で、登場人物の過去の過ちが明らかになると、周りの人が手のひらを返すみたいにして、その人への見方や関わり方を変えてしまう。そういう“人間性”みたいなものがここまでかというくらいあぶり出されるシーンには爽快感すら感じました。だけど、そこで終わりではなく、その先にさらに秘められたものがあって、そこを追っていく新感覚のミステリーを体感した感じで楽しかったです。

浅倉 ありがとうございます!

牧島 僕は読んでいて怖くなる瞬間もありました。僕自身、人と接するなかで、相手のことを簡単に判断するのはあまりよくないと感じているのですが、小説を読んでいるときに、登場人物のなにか悪い情報が出てくると、そこにどんな思いがあったのかも考えないまま、「この人ちょっと悪いヤツじゃん」と判断してしまっている自分がいて。だから物語の中で、それぞれが本当はどう思っていたのかが明かされていくにつれ、「自分ってすごく寂しい人間じゃないか」という気持ちにもなりました。でも実際はそうやって判断するしかなかったりもするから。人との付き合い方や距離感を、改めて難しいなと思いました。

中村 たしかにそうですね。

浅倉 感無量です。そこまで読んでいただけたら作者冥利に尽きます。でも俳優さんこそ、そういうことを感じられる機会があるんじゃないかなと思うのですが、どうですか? ご自身に対する世間の目というか、例えば役を引きずられちゃったりとか、なにかひとつ切り取られて全部が“それ”になっちゃったりとか。

牧島 あります。ちょっとした発言が僕の解釈とは違うふうに伝わって、広がっていっちゃったり。それは嬉しいこともあるけど、怖いことのほうが多いです。

中村 ただ、作品にのめり込んでいると、そこに精神も使い果たしてしまって、意外と人からどう見られているか気にせずに没頭することもあります。その時間が終わってもまた次の作品が待っていたりして、そうするとその作品の準備や態勢を整えないといけないですし。それはそれでちょっと切なくなるんですけどね。

浅倉 ああ、なるほど。感動しました。僕なんかは作品の評価もそうですし、全部にびくびくしてしまうのですが、その作品の中にしっかり入ってしまえば、周りの騒音も聞こえなくなる瞬間があるんですね。

牧島 いや、僕は相当ビビってますよ(笑)。切り取られた情報がひとつの“牧島 輝”としていろんな人に届いているけど、それが本当の自分とはかけ離れていることもあるし。そこを「こうじゃん」と指摘されて、本当の自分が傷ついたりもするし。世の中で僕を知ってくださっている方の持つ僕のイメージと、リアルな自分の間でどのくらいギャップがあるのか、僕もあまりわからないので、そういうところにちょっと「怖い」と思う瞬間はあるかな。演じ終えて、素に戻ったときにふと考えたりとか、怖くなったりすることはやっぱりあるかなと思います。

浅倉 テレビに映っている人って元気に見えるじゃないですか。でも、芸能人の友達が一時期、胃を壊してあまりご飯を食べないようにしているのを目の当たりにしながら、テレビではすごく元気に映っていたんですね。つまり健康に見えるんです。そういうことから感じたものは、この作品にも投影されていると思います。

牧島 そういう「本当はこうだった」ってことは、現実ではわかってもらえないまま終わることのほうが多いですよね。この作品の中でも、僕は読者だから「そうか。本当はこうだったんだ」ってわかるけど、登場人物の中には本当のところをわからないままもう二度と会うこともない人たちもいるのかなと思うし。それを寂しいなと思います。

浅倉 現実ってけっこう残酷なことがたくさんありますから。「また会おうね」と言って十数年会っていない人もざらにいたりしますし、誤解されたまま終わることも山ほどあると思う。そういう意味では、作品の中でくらいいいことがあってほしいなという思いはありますね。

ひとつのトーンに二面性を持たせないといけない作品

――出演者のお二人はこの作品で役を演じるうえで、どういうところを大切にしたいと思われていますか?

中村 いまはまだ稽古前で、さらに私は舞台も初めてなので、未知な部分が多いのですが、複雑な部分がある作品なので、空気感も含め、ひとつずつ、皆さんと感じ合ってつくりあげていくことを大切にしたいです。


――舞台にはどんなイメージがありますか?

中村 私は自分が舞台の上に立つ想像をすると、足が震えているイメージがずっとありました。でも興味はすごくあって、ずっとやってみたいっていう気持ちもあります。今回はその初めてのチャレンジなので。ご迷惑をおかけしないようにがんばります。

牧島 僕もがんばります。作品に関しては、小説で読んでいると目で“文字”を追うので、その後、伏線が回収される
ときに同じ言葉が出てくると「さっきのあの言葉はそういうことだったのか!」とすぐに思わせることができますが、“会話”だと重要な言葉でもサラッと流れてしまう危険性がある。だから大事な言葉は、画鋲で刺していくみたいに、頭のどこかに残せるようにつくっていきたいです。それができれば、伏線が回収された瞬間に気持ちがいいのではないかなと思うので。そして、駆け引きが重要な作品なので、周りの人とのコミュニケーションと間合い、目に見えないところでの距離感を大事にできたら、面白くなるんじゃないかなと思っています。

浅倉 お二人の話を聞いていても思うのですが、この作品は、最後まで読んで頭から読み直すと、登場人物のトーンが違って感じられるんじゃないかなと思うんですね。「思っていたトーンじゃなったのかもしれない」って。文章だと、そんなふうに読み手のほうが「あ、私が違ったんだ」と後から修正できるわけですが、それを演じるということは、ひとつのトーンに「ああも見えるし、こうも見える」という二面性を持たせないといけない。改めて非常に難しいだろうなと思いました。そういったところ含めて、いち観客としてワクワクしてしまっています。


――最後に、お客様に楽しみにしていてほしいことをお聞かせください。

浅倉 いまもお話ししたように、舞台にするのもなかなか難しそうな小説が舞台になるということで、いろいろと想像もできないような作品ができそうな予感がしています。1分1秒ぜんぶ注目要素なんじゃないかなと思います!

中村 この作品は就職活動で内定を獲得しようとする学生のお話で、私自身は就活の経験はないのですが、そういう場で学生たちが多角的に人間性を評価し合ったり、実は騙し合ったりしている姿が描かれていて、それが舞台でカタチになっていくのはすごく楽しみなことです。 “犯人”の目的はなんだったのかを、最後の最後まで楽しみにしていただけたら嬉しいです。

牧島 僕も就活の経験はないのですが、この作品は人と人との物語だから、共感できる部分がたくさんありました。きっとお客様も「自分もこういう思いをしたことがある」と、どちらかというと「ウッ」となりながら観ていただくことになる予感がしています。登場人物のどの人に感情移入するかによって結末の捉え方も変わってくるような作品だと思うし、観る方それぞれの物語になるのではないでしょうか。結末を知らずに観ていただいても楽しいし、小説を読んで結末を知っているから見えるものも楽しいと思います。いろんな楽しみ方ができる作品だと思うので、ぜひ劇場にお越しください。

取材・文:中川實穗
写真:市川勝弘