松本利夫(EXILE)主演舞台『7本指のピアニスト〜泥棒とのエピソード〜』│開幕レポート到着!!

2022.07.25

 

松本利夫(EXILE)が主演する舞台『7本指のピアニスト〜泥棒とのエピソード〜』が7月24日(日)に東京・サンシャイン劇場で開幕した。NYでプロデビューし、あのカーネギーホールでのコンサートも成功させた経歴を持つ世界的ピアニスト・西川悟平の実話をもとに、成井豊が舞台化。“奇跡のピアニスト”とも呼ばれる西川の山あり谷ありの半生を力強く明るく描きだす作品だ。松本のほかの出演は、土屋神葉、筒井俊作、木下政治、畑中智行、原田樹里、石黒賢。
初日前日に行われたゲネプロ(最終舞台稽古)の様子をレポートする。

東京2020パラリンピックの閉会式、グランドフィナーレでの『What a Wonderful World』を記憶している方も多いだろう。その演奏をしていたピアニストこそが、西川悟平。彼はピアニストとして順調にキャリアを重ねていたさなかに難病ジストニアを発症、両手全指の演奏機能を完全に失い、医者に「ピアニストとして再起不能」と宣告される。しかしそこから懸命なリハビリを重ね、右手5本、左手2本の機能を回復。7本指で再起を果たす――。

舞台『7本指のピアニスト』は、そんな困難を不屈の精神で乗り越えたヒーローの感動実録……では、ない。もちろん難病からの復活も西川の人生に起きた事実ではあるが、ここで描かれているのは、もっと泥臭くて、みっともなくて、ただピアノが好きで、好きなことにしがみついていた男の姿だ。幼少期から始めるのがプロへの必須条件のようなピアノを15歳から習い始め、音大への入学は無理だと言われたら、1日10時間練習する。練習しなくても弾ける才能を持っていたわけではない、努力で、必死に夢に食らいついていく。しかもそのとんでもない努力も汗と涙のスポ根方面には向かわず、好きなことだから苦ではないと言わんばかりにカラリと明るいのが、良い。

写真左から原田樹里、松本利夫 (EXILE) 、石黒賢

その西川を演じる松本がなんともチャーミングだ。登場の瞬間から見る者を自然と笑顔にしてしまうような“陽”の気をまとい、人を惹きつけていく西川の魅力を体現。物語は、NYの自宅に押し入った2人組の泥棒に自分はピアニストだということを説明するために、西川が自身の半生を語っていく回想劇の形をとっており、そのため松本は出ずっぱりの喋りどおし。だが力みを感じさせない自然体で、俳優としての柔軟さを見せている。

回想の中で次々と登場する、西川をとりまく人々もそれぞれ生き生きとしている。
泥棒コンビに扮する土屋と筒井は、“嘘みたいな実話”の中でもしっかりとリアリティを持って泥棒の迫力を見せていたし、西川のピアノの師匠、ブライトン&オズマを演じる石黒と木下は愛情深さを丁寧に描き出している。西川の背中を押し、見守り、協力する様々なキャラクターを演じた畑中、原田は明るく作品を彩っていく。6人のパワーが物語にたしかな説得力を加えている。

写真左から筒井俊作、土屋神葉

この作品で描かれる“奇跡のピアニスト”西川悟平は、奇跡と呼ばれる数々のエピソードを持ちながらも、尊敬される偉人であることを自ら否定するような身近さ親しみやすさで、我々に歩み寄ってくれる。「僕は立派な人じゃない」と言う。しかしそれでもなお、彼の生き様はまぶしい。西川という人物の持つポジティブパワーを浴び、観劇後、ちょっと世界が明るく見えるに違いない。

写真左から石黒賢、松本利夫(EXILE)

開幕に先立ち、松本は「実際に存在する方を演じるのは初めて。なかなかハードルが高いのですが(笑)、とにかく悟平さんの思いや情熱を、自分というフィルターを通し、皆さんにお伝えできれば」と意気込みを。また石黒は「悟平さんの素晴らしい物語を、本当にマツが2時間出ずっぱり、しゃべりっぱなしで紡いでくれている。観に来てくださった方に『やっぱりライブっていいよね、生っていいよね』と感じていただけるように、そして『いい話を観せてもらったな』と思って帰ってもらえるよう頑張りたい」とコメントした。舞台『7本指のピアニスト』は同劇場にて、7月31日(日)まで上演。チケットは発売中。

 

取材・文/平野祥恵