尾上右近自主公演「研の會」/「ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル」尾上右近&G2コメント

2018.06.14

先日、7月6日(金)より紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAにて開幕いたします、尾上右近初挑戦となる翻訳現代劇、「ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル~スプーン一杯の水、それは一歩を踏み出すための人生のレシピ~」、さらに、8月26日(日)・27日(月)に、国立劇場 小劇場にて上演いたします、尾上右近による自主公演第四回「研の會」の記者懇親会が開催されました。

「ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル」は、キアラ・アレグリア・ヒュディスにより執筆され、2012年にピューリッツァー賞戯曲部門賞を受賞した作品で、この度G2の翻訳・演出にて日本初上演となります。本作で、尾上右近は現代翻訳劇に初挑戦となります。
また、「研の會」は尾上右近が主宰する自主公演で、今年で第四回目を迎えます。今回は中村壱太郎丈をメインゲストに迎え、「封印切」と「二人椀久」をお届けします。

記者懇親会では、尾上右近からそれぞれの試みにつきまして抱負や意気込みを、また、第二部では「ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル」の翻訳・演出を手掛けるG2も登壇し、作品にかける想いを口演いたしました。

【コメント】
■第一部「研の會」
≪尾上右近≫

僕は、3歳の時に観た「鏡獅子(かがみじし)」に憧れて歌舞伎の世界を目指してきました。研の會では「毎年経験がないことに挑戦する」というテーマで、演目を選んできました。今回上演いたします「恋飛脚大和往来(こいびきゃくやまとおうらい)は、(坂田)藤十郎さんに憧れて、25日間通っていたぐらい大好きな演目なんです。自分が一度も話したことのない、関西弁に挑戦します。雰囲気や言葉、関西の空気感を大事にしたいです。女形を楽しみにしてくださっているお客様には申し訳ないですが(笑)、“男の自分”を観ていただければと思います。「二人椀久」で共演させていただく、中村壱太郎さんは、仲の良い先輩であり、思い切りぶつかってきてくださる方です。壱太郎さんは型があるところにいかに心を込めるかというところに注力されているので、型とリアルとのせめぎ合いで何が起こるのか、楽しみです。吾妻流、尾上流それぞれの伝統の型と、自分らしさを出した演技との間に起こる摩擦も、どんな作品に仕上がるか楽しみです。

 

■第二部「ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル」
≪翻訳・演出/G2≫
僕は元々ピューリッツァー賞戯曲賞に注目をしていて、日本人向けな面白い作品が出てきた、と思ったのがこの「ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル」です。これは上演しておかなければならない作品だと思っていて、日本でやったことのない本であり、斬新な作品であり、この作品に僕は「どうやって演出するんだ?」とニヤりとしながら問われたように感じました。
右近さんは、とても意欲的に勉強してくれていて、やる気の塊のような方です。違うジャンルから違う文化を持つ人が入ってくれて、新たな刺激になると思っています。そして歌舞伎の土台とは別にある、右近さんの魅力を新たに作っていけたらと思っています。役者の方々にとって、演じるのは難しい作品だと思いますが、作品のテーマはとても普遍的なものです。社会の中で生きている弱者と呼ばれる人たちが、明日に向って歩いていく、心温まる作品です。気軽な気持ちで観に来てください。

≪エリオット役 尾上右近≫
初翻訳劇、初現代劇、初主演と初めて尽くしで、僕にとって困難を極める作品だと思っています。戸惑うことや分からないことだらけで、途方に暮れているところではありますが、この乗り越えなければいけない壁を、乗り越えるというより、ぶつかって壊すつもりで挑んでいきたいです。歌舞伎と違って、演出家がいる現代劇では、分からないこともしっかりぶつけていくのもとても大事なのだと感じています。いかにそのアウトプットの作業をしていくか、というのが課題です。この作品は、劇的ではない劇だと思っていて、個性や人種も違う人たちの繋がりが魅力で、「人の心」の温かみやぬくもりの伝わる作品だと思います。皆さんには、ほっこり、豊かな気持ちになって欲しいです。僕の演じるエリオットは、年齢が近いという共通点があります。少年から青年に向かう過程でのどっちつかずの悩みや、人間としての戸惑い、同年代だからわかることがあると思うので、生きる中で起こる問題を役とリンクさせ演じていきたいです。