芸術文化の未来をつくる 国際舞台芸術祭「東京芸術祭2022」
9月23日(金・祝)、GLOBAL RING THEATRE〈池袋西口公園野外劇場〉にて、東京芸術祭 2022を都民・区民の方々と祝し、芸術祭のオープニングを宣言する「開幕式典」を開催いたしました。東京芸術祭は2016年に始まった都市型総合芸術祭で、「ひらく」 「きわめる」 「つながる」をキーワードに展開、今年で7回目の開催となります。9月~12月にかけて、豊島区池袋地区を中心に30を超えるプログラムを揃え開催しています。
式典では小池百合子東京都知事、近藤誠一東京芸術祭実行委員長からのご挨拶や開幕宣言、東京芸術祭実行委員・来賓の紹介、そして、9月23日が「手話言語の国際デー」であることから、『となり街の知らない踊り子』出演の北尾亘氏による手話ソング「ありがとうの花」が披露され、登壇者をはじめ、来場の皆様で一緒に手話で歌いました。
そして、芸術祭の上演演目である、野外劇『嵐が丘』出演の片桐はいり氏と『守銭奴 ザ・マネー・クレイジー』に出演する佐々木蔵之介氏のトークセッションを行いました。
コメント
片桐はいり
野外劇「嵐が丘」を池袋のど真ん中で、まさにここでするのかと実感しています。野外劇は以前にも、出演したことがあるのですが、雨の音が拍手の音のように聞こえたり(笑)、したのを覚えています。通りを行く車の音、ネオンの明かり、街の雑踏といった、ある意味都会の自然を取り込みながら芝居したいと思います。「嵐が丘」は、愛憎劇という印象がありましたが、今回改めて読んでみて、キャサリンの激情に、人間ではない激しさを感じています。野外劇には向いている作品かもしれません。
私の初観劇は本多劇場のこけら落とし公演の緑魔子さん出演の「秘密の花園」でした。今作はワンコインで観られてハードルが低いので、通りすがりの人も「何かやってるな」「こういう事をしている人がいるんだ」ということを知っていただけたら嬉しいです。茶々を入れるつもりでも構いません(笑)!ぜひ、覗きにきてほしいなと思います。
佐々木蔵之介
初めての観劇体験は、唐十郎さんの作品でした。内容はよく理解できませんでしたが(笑)、すごいエネルギーを感じて、これが演劇のパワーか!と、圧倒されたのを覚えています。また、ルーマニアのシビウ国際演劇祭を観にいったときは、そこかしこで同時多発的に芸術に触れることができて、演劇やダンスやアートをすごく身近に感じることができました。この芸術祭も7年続いているので、この先もずっと続いたらいいなと思っています。私が出演する「守銭奴 ザ・マネー・クレイジー」は、以前「リチャード三世」でご一緒したシルヴィウ・プルカレーテさんの演出で、前回ご一緒した際の豊かな時間を思い出しました。プルカレーテさんの演出は、人の醜い部分を残酷に、だけど美しく強烈に、かつユーモアを交えて表現される方なので、「守銭奴」をどんな喜劇に持っていくのかとても楽しみです。
そして、歌舞伎作品をプルカレーテさんが演出した「スカーレット・プリンセス」は、ルーマニアのカンパニーが演じています。シビウ演劇祭に行ったときに劇場は拝見したのですが、上演は観ることができなかったので、やっと日本で観られることができて嬉しいです。
観劇は、日常が非日常になる機会でこの芸術祭を通じて、身近に肌で演劇やアートを感じていただけたらと思います。
東京芸術祭
東京芸術祭は、東京の多彩で奥深い芸術⽂化を通して世界とつながることを目指し、毎年秋に豊島区池袋エリアを中心に開催している都市型総合芸術祭です。東京の文化の魅力を分かりやすく見せると同時に、東京における芸術文化の創造力を高めることを目標とし、今年で7年目を迎えます。中長期的には、社会課題の解決や人づくり、都市づくり、そして、グローバル化への対応を視野に入れ、日本最⼤級の舞台芸術を中心とした幅広いジャンルの公演事業、アートプロジェクト、また、芸術分野で国際的に活躍する人材の育成プログラムも多数実施し、“芸術文化の未来をつくる芸術祭”を展開しています。
「ひらく」「きわめる」「つながる」—— 3つのキーワードを体現する主要演目
東京芸術祭は、フランスで開催されるエクサン・プロヴァンス⾳楽祭でもオペラ演出を⼿掛けるなど世界的にも評価の高い宮城聰がディレクターを務め、「ひらく」「きわめる」「つながる」の3つのキーワードを掲げています。これらを体現する今年の主要3演目をご紹介します。
はじめに、舞台芸術をより多くの⼈々に「ひらく」試みとして2018年にスタートした、ワンコインで観劇できる野外劇。演劇、ダンス、テレビドラマと活躍めざましい稀代のパフォーマー小野寺修二を演出に迎え、新作 野外劇『嵐が丘』をお届けします。小野寺が信頼を寄せる唯⼀無⼆の個性派俳優 片桐はいりとともに、エミリー・ブロンテの恋愛ロマンの傑作に挑みます。次に、独⾃の表現を究め、世界の頂点を極めると⾔って過⾔ではない「きわめる」アーティストや作品が集結します。なかでも注⽬は、ルーマニアの⻤才シルヴィウ・プルカレーテ演出により東京芸術劇場で上演される2作品。ひとつめは、シビウ国際演劇祭を揺るがせた四代⽬鶴屋南北「桜姫東⽂章」を原作とする『スカーレット・プリンセス』をジャパンプレミアで披露します。ふたつめには、⽇本が誇る実⼒派俳優 佐々⽊蔵之介と『リチャード三世』以来の再タッグで、モリエールの傑作喜劇『守銭奴 ̶ ザ・マネー・クレイジー』をお送りします。作品やアーティストを通して多様な⽂化と出会う場を創出し、国内外、多分野、他表現と「つながる」ボーダレスな東京芸術祭。新たな東京を発見し、世界とつながる芸術祭です。
主要3演目 (演劇)
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東京芸術祭2022 直轄プログラム
野外劇『嵐が丘』
作:エミリー・ブロンテ
演出:小野寺修二
出演:王下貴司、久保佳絵、斉藤 悠、崎山莉奈、菅波琴音、竹内 蓮、丹野武蔵
鄭 亜美、辻田 暁、富岡晃一郎、中村早香、西山斗真、塙 睦美、宮下今日子
片桐はいり
公演日程:2022年10月17日(月)~26日(水) 17:00開演 *10月24日(月)は休演
会場:GLOBAL RING THEATRE (池袋西口公園野外劇場)
2022・秋 池袋西口に憎悪と復讐をはらむ風吹きすさぶ荒野、あらわる。
東京芸術祭のメインプログラム“野外劇”
野外劇は、劇場を「ひらく」アクションとして、2018年、東京芸術祭のメインプログラムのひとつとなりました。会場は池袋駅からほど近い池袋西口公園にあるGLOBAL RING THEATRE(グローバルリング シアター)で、チケット代はワンコイン(500円)。“日常に出現する非日常のスペクタクル”をテーマに、これまで劇場に足を運んだことのない人々が初めて舞台演劇に触れる機会と、まちなかの賑わいを同時に創出するプログラムです。ふらりと立ち寄って、一流のアーティストによるハイクオリティーなパフォーマンスに触れられることは、芸術祭ならではの醍醐味と言えるでしょう。また、出演のチャンスをより広く多くのアーティストに「ひらく」ため、出演者の多くをオーディション方式で決定しています。
小野寺修二が挑む、新作 野外劇『嵐が丘』
「東京芸術祭 2022」の野外劇は、カンパニーデラシネラを主宰する演出家・振付家の小野寺修二を迎え、新作『嵐が丘』に挑みます。英国の女流作家エミリー・ブロンテによる文学史上の名作「嵐が丘」を大胆に再構成し、野外という特性を活かしてスケールの大きなスペクタクルに仕上げます。小野寺のマイムの動きをベースとした身体表現による独創的な世界観に、言葉、光と音、空間を最大限に活かす演出が相乗効果として作用し、1847年に英国で発表された物語が現代の物語として立ち上がります。街の只中で、夕景から夜に掛かる時間、喧騒さえも芝居の⼀部になる都会の野外劇。その異空間をご堪能ください。
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東京芸術祭2022 芸劇オータムセレクション
『スカーレット・プリンセス』 The Scarlet Princess
上演台本・演出:シルヴィウ・プルカレーテ
原作:鶴屋南北「桜姫東文章」
出演:オフィリア・ポピユスティニアン・トゥルク
ルーマニア国立ラドゥ・スタンカ劇場カンパニー
公演日程:2022年10月8日(土)~11日(火)
会場:東京芸術劇場 プレイハウス
*ルーマニア語上演、日本語・英語字幕あり
2022年、東京・ルーマニアを結ぶ新しい演劇の幕開け。
シビウで生まれ変わった歌舞伎の傑作が遂に来日!
鬼才プルカレーテと四代目鶴屋南北の時空を超えた出会い
2018年、シビウ国際演劇祭でワールドプレミアされ、ヨーロッパでも大きな話題を呼んだ『スカーレット・プリンセス』は、四代目鶴屋南北「桜姫東文章」が原作です。歌舞伎のエッセンスに忠実でありながらもヨーロッパの演劇人たちが挑戦した、まったく新しい“本歌取”としての演劇作品が誕生しました。シルヴィウ・プルカレーテの特徴でもある大胆で挑戦的なスペクタクルな演出は、まさしく日本の“傾(かぶ)く”という精神に通じるものです。同時に、テキストへの深い読解、日本文化への豊かな知識とリスペクトに基づいた細やかな作品アプローチが、この作品を唯一無二のものとし、観る者の魂を揺さぶります。
シビウ国際演劇祭、プルカレーテと日本のパートナーシップ
シビウ国際演劇祭では、2008年に故・十八代目中村勘三郎が平成中村座を率いて歌舞伎を上演したのち、まつもと市民芸術館芸術監督でもある串田和美が作品を発表、東京芸術劇場芸術監督・野田秀樹が『One Green Bottle』を上演するなど、その演劇祭の始まりから日本との深いつながりを築いてきました。プルカレーテは、国立ラドゥ・スタンカ劇場制作の『ファウスト』や、2017年の東京芸術劇場における『リチャード三世』(主演:佐々木蔵之介)、2020年の『真夏の夜の夢』など、古典を現代的に解釈した演出で大きな話題を集めてきました。また、招聘した『ルル』(2013)、連続上演『ガリバー旅行記』『オイディプス』(2015)でも日本の演劇ファンに強烈な印象を残しています。そして、2022年、新型コロナウイルス感染症による公演中止を乗り越え、新たな生命を吹き込まれた『スカーレット・プリンセス』の初来日公演が実現します。海外で生まれたまったく新しいこの作品は、歌舞伎の隠された一面を日本人が再発見し、日本の演劇がもつ底力を国内外に発信する、またとない機会となることでしょう。
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東京芸術祭2022 芸劇オータムセレクション
『守銭奴 ̶ ザ・マネー・クレイジー』
作:モリエール
翻訳:秋山伸子
演出:シルヴィウ・プルカレーテ
出演:佐々木蔵之介 ほか
公演日程:2022年11月23日(水・祝)~12月11日(日)
会場:東京芸術劇場 プレイハウス
“ルーマニアの蜷川”と呼ばれる演出家・プルカレーテが芸劇に帰ってくる。
モリエールの大傑作が金まみれの世界を徹底的に嘲い倒す!!!
巨匠プルカレーテと佐々⽊蔵之介が挑む、モリエールの傑作喜劇
端正なルックスとエネルギーあふれる演技で、日本が誇る実力派俳優・佐々木蔵之介。その蔵之介が徹底的に惚れ込んだ演出家が、ルーマニアの巨匠シルヴィウ・プルカレーテです。この秋、2017年の東京芸術劇場による『リチャード三世』以来、5年ぶりにふたりのタッグが復活します。プルカレーテが日本で発表した作品が、読売演劇大賞を受賞するなど国内での評価も定着しています。注目の上演作は、今年、生誕400年を迎えたフランス三大劇作家のひとり モリエールの『守銭奴』。数あるモリエールの戯曲のなかでも人気が高く、上演回数も多い優れた性格喜劇です。佐々木蔵之介が、あらゆる金を出し渋る“ドケチオヤジ”を過剰なテンションで熱演し、プルカレーテのスラップスティックな演出で、コロナ禍の鬱憤を吹き⾶ばす爆笑コメディが展開されることでしょう。プルカレーテの作品は、世界中の劇場やフェスティバルで上演され、多くの観客を魅了しています。招聘公演『スカーレット・プリンセス』との連続上演で、プルカレーテの世界を存分に堪能できるまたとない機会です。