『スカーレット・プリンセス The Scarlet Princess』待望の来日公演!いよいよ開幕!!

2022.10.08

撮影:後藤敦司


ルーマニア・シビウで生まれ変わった歌舞伎の傑作が欧米演劇界を席捲して待望の来日!!
鶴屋南北のラジカルな劇世界をプルカレーテ演出で大胆にスペクタクル化した必見舞台

10月7日(金)東京芸術劇場 プレイハウスにて、ルーマニア・シビウで日本の歌舞伎が生まれ変わった話題作『スカーレット・プリンセス The ScarletPrincess』のドレスリハーサルが行われました。そして、ルーマニア文化大臣のルチアン・ロマシュカヌ氏、ルーマニア国立ラドゥ・スタンカ劇場総裁コンスタンティン・キリアック、美術の担当であるドラゴッシュ・ブハジャールによる取材会が開催されました。『スカーレット・プリンセス The Scarlet Princess』は、退廃的な美しさと奇想天外な愛憎ロマンで江戸歌舞伎界の話題をさらった四代目鶴屋南北『桜姫東文章(さくらひめあずまぶんしょう)』が原作。この歌舞伎の大傑作を、ルーマニア出身の演出家シルヴィウ・プルカレーテ氏が大胆に翻案し、スペクタクル化した作品です。

2008年シビウ国際演劇祭にて十八代目中村勘三郎主演、串田和美演出の『夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)』が上演され大喝采を浴びました。日本の歌舞伎をシェイクスピア戯曲や、ギリシア悲劇と同じように世界と共有したいという二人の演劇人の思いに、演劇祭のディレクターコンスタンティン・キリアックとルーマニアを代表する演出家シルヴィウ・プルカレーテが賛同してプロジェクトが始動。工場跡地に花道や回り舞台をしつらえた特設劇場が建てられ、南北の傑作『桜姫東文章』が『スカーレット・プリンセス』として生まれ変わり、10月8日(土)より、いよいよ日本初上演となります。タイトルロールのスカーレット・プリンセス/桜姫をラドゥ・スタンカ国立劇場のホープであるユスティニアン・トゥルクが演じ、桜姫とその前世・白菊丸をジェンダーを超越した妖美さで魅せます。そして物語の要となる悪党・釣鐘権助を、同劇場の看板女優であるオフェリア・ポピが男装で演じるのも大きな見どころの一つです。今回、公演のために来日したルーマニア文化大臣のルチアン・ロマシュカヌ氏、ルーマニア国立ラドゥ・スタンカ劇場総裁であり、シビウ国際演劇祭ディレクターのコンスタンティン・キリアックと美術を担当している、ドラゴッシュ・ブハジャールによる取材会を行いました。さらには、今作の演出を務めるシルヴィウ・プルカレーテよりコメントが届きました。

 

コメント

ルチアン・ロマシュカヌ(ルーマニア文化大臣)
ルーマニアの作品を日本で上演できることはとても特別なイベントだと思っています。ルーマニアと日本の親善に貢献してくれたキリアックに感謝しています。今後益々日本とルーマニアの文化交流が盛り上がっていくことを期待しています。昨今のウクライナ侵攻について、ルーマニア国内では文化的には直接の影響はありませんが、ウクライナから避難されて来られる方たちが数多くいらっしゃいます。アーティストの方も1000人以上いますので、ルーマニアでも活躍できるよう環境を整えていきたいと思います。そして日本のみなさんがルーマニア・シビウに来られる機会がありましたら、どうぞよろしくお願いします。

 

コンスタンティン・キリアック(ルーマニア国立ラドゥ・スタンカ劇場総裁/シビウ国際演劇祭ディレクター)
「スカーレット・プリンセス」を日本で上演できること、大変嬉しく思います。中村勘三郎丈が最初にルーマニアに来た時、歌舞伎を盛り上げるために今までにないようことをやりたいと話していました。男女逆転の役を演じるのも、その一つの新しい試みで、外国でも称賛の声を沢山聞いてきたので、とても手ごたえを感じています。シビウ演劇祭はこの30年でとても成長して世界最大規模の演劇祭になりました。日本からもたくさんの人が参加してくれて、今後ルーマニアと日本との交流を深めていけることをとても楽しみにしています。この作品はとても素晴らしいので、ぜひご覧になってください。

 

ドラゴッシュ・ブハジャール(美術)
この作品の立ち上げのタイミングから関わることができたので、想像力を駆使し、それを作品に反映できるようなクリエーションができたことは、デザイナーとして本当に一生に一度のチャンスだったと思いますし、とても光栄なことです。日本の大切な伝統である歌舞伎を広めるということを、串田(和美)さんと共に携われたことは、意味のある事でした。通りがかったメトロポリタンプラザでやっていた本のフェスティバルで、歌舞伎や、歌舞伎のデザインについての本がたくさんあったので、スーツケースに入りきらないぐらい買ってしまいました(笑)。その本からいろいろなことを勉強して自分の中に取り込んで“日本の歌舞伎の再現”ではなく、自分たちのアプローチをして発展させていきたいと考えています。

 

シルヴィウ・プルカレーテ(演出)
日本の歌舞伎を初めて見たのは30年前に来日した時でした。言葉もわからないし、歌舞伎独自の様式や符丁もわからなかったけど、そこに流れている感情はとても強く伝わって、とてもエモーショナルに揺すぶられましたし、その美学にも感動して、夢中になれるものでした。歌舞伎を本当に理解するためには、歌舞伎役者さんのようにその伝統に身をおくことが必要なのですが、私たちは、(鶴屋)南北を一人の作家として扱い、そのテキストに注目しました。串田(和美)さんの思いとして歌舞伎を様々な国で作ってほしいというところから始まったこのプロジェクトで、ひとつのテキスト、台本として演劇の作品に仕上げることは、串田さんの思いに少なからず応えることができたのではないか、と思います。南北の台本は、とても多様で多面的な要素をあわせもつ、豊かなものです。笑いや悲劇、残酷さなど極端なお話の展開や、そのディテールまでも描かれていて、楽屋オチまでテキストに含まれているんです。それをヨーロッパ風のお芝居にしたのが今回の作品です。私の作品でメイクが白塗りなのは、仮面、の意味を込めています。役者のリアリティーを極力、排除したいという試みです。

 

ルーマニア演劇界をリードする最強の演劇陣に加えて世界的に活躍するトップクリエーターも揃い踏みし
た“カブキ・メタモルフォーゼ”にどうぞご期待ください。

 

あらすじ

若き僧侶・自久坊(後の清玄)は、稚児の白菊丸と心中を図るが自分だけ生き残ってしまう。時が流れて高僧の清玄は、ある寺で桜姫と出会う。桜姫はどうやら白菊丸の生まれ変わりらしい。
一方で桜姫は盗賊の釣鐘権助に闇夜の中で犯され、赤ん坊を産み落とすが犯した男の釣鐘の刺青が忘れられない。 それは権助への捩れた愛の面影でもあった。しかし権助が家宝を盗んだために家は没落し、桜姫は遊女となって苦界に沈む身となった。
破戒堕落の罪で寺から追い出された清玄と桜姫に悪党の権助が絡んで、さらなる残酷非道の運命が彼らを待ち受けることに……。

 

舞台写真

 

撮影:後藤敦司