昨年7月に福岡・博多座、8月に大阪新歌舞伎座にて上演され好評を博した『羽世保スウィングボーイズ』が、10月23日(日)から10月28日(金)まで、いよいよ東京・明治座で上演される。博多華丸をはじめ多彩なキャストが本格タップダンスや和太鼓を劇中で披露するという本作。とある九州の湾岸都市を舞台に、造船会社に勤める腕利きの溶接技師・五代剛が、業績が低迷する会社を立て直すべく、街の未来まで巻き込んで奮闘していく物語だ。この熱い芝居に、どのように挑んだのか。博多華丸に話を聞いた。
――今回のお芝居の魅力は、どのようなところにあると思いますか?
本当にバラエティに富んだ内容で、音楽と芝居が良い感じにミックスされているところですね。飽きないお芝居になっているな、と自分でもやりながら思います。過去、飽きちゃった作品もあるんですけど(笑)、これは飽きないね。
――華丸さんが演じる五代剛はどのような男でしょうか?
憧れるような、責任感のあるおじさんですね。でも、感覚的には「めんたいぴりり」の時とあんまり変わらないかな。セリフこそ違えど、キャラクターの部分では似ているようなところがあると思います。職人気質で、すぐにガッと熱くなる瞬間湯沸かし器的な感じでやってくれ…と、たぶん演出を受けたはず。博多華丸としては、割と湯は沸かないタイプなんで、そこは奮い立たせてやりました。
――演じる際に意識されていることは?
さして大きく意識してやってることは無いんですが、明治座さんにはやっぱり関東のお客さん、全国から来るお客さんが多いだろうから。方言のほうが熱くはなりやすいけど、ちょっと控えめにした方がいいかな、と思うので、そこは気を付けたいですね。方言で伝わる部分と伝わらない部分があるんで、そのあたりの匙加減はこれからの稽古で考えていこうと思います。
――博多、大阪で上演されたときの手ごたえはいかがでしたか?
新歌舞伎座さんでやった時は、初めての劇場でしたし、大阪のお客さんなのでどう受け止められるんだろう、と思いました。ここはウケないだろうな、と思ったところは、やっぱりウケなかった(笑)。僕は心の準備ができていたけど、ワンチャン受けるんじゃね?って思っていた人たちは動揺していましたね。僕としては、ここは関西のお客さんには違うんじゃない?って思っていて、そこはなんばグランド花月での経験が生きたかもしれないです。博多座さんはやっぱり地元だから、だいぶ自由にさせてもらいました。お客さんも博多訛りというか、九州の方言に慣れていらっしゃるから、僕の年代でも使わないような方言をあえて入れちゃったりしましたね。やっぱりホーム感がありました。
――博多・大阪のときの稽古場の雰囲気はいかがでしたか?
コロナ禍の中での稽古だったので、本当にゲネまでマスクを外さずにやっていたんですよ。だから、マスクを外すと新鮮だけど、大丈夫かな…みたいな気持ちはありました。初日に天津木村くんがマスクしたまま出ちゃって、外したら外したでアイツいつチョビ髭剃ったんだよ!ってね(笑)。稽古では食事も離れ離れで黙食だし、マスクで表情も読めなくてコミュニケーションもなかなか取れなかったから、博多座での本番が始まってから、どんどん信頼関係や仲間意識が強くなっていたように思います。以前なら、稽古中に飲みに行ったりして打ち解けてたんだけどね。でもある意味、結束力は強いですよ!ノンアルでできた絆ですから。アルコールが入ると忘れちゃいますからね(笑)
――(笑)。ノンアルだからこそ、強い絆ができたんですね。いろいろなキャストが集まっているので、稽古場も役者さんだけのお芝居とは違う雰囲気かもしれませんね
こんなに役者が少ない芝居も珍しいですよね。30人くらいいて、役者が1桁なんですよ。あとは、バンドマンに芸人、アイドル、ダンサーですから。ダンサーの方はセリフを言うのが初めてだったり、芸人は芸人でタップダンスが初だったりしたから、ふだん携わっていないところで、お互いがお互いに楽しくやれてたように思いますね。セリフが初めての人なんかは、稽古の最初は顔が真っ赤になってたりしたんだけど、セリフを言う気持ちよさを1回味わったら楽しくなったみたいで。結構真面目にやっていましたね。…こう、ダンサーさんって、パッと見チャラくて、マスクでよくわかんないし、最初はあんまり信用してなかったんですよ(笑)。本当にできんのかよ、って。でもすごく熱心に取り組んでくれて、いい相乗効果になりました。
――今回のお芝居では、華丸さんも和太鼓とタップを劇中で披露されていますね
いやー、めちゃくちゃ緊張しますね。バックバンドのドラムと合わせてやったりするところもあって、ソロで演奏するところは…今でもお腹痛くなっちゃう(笑)。タップダンスはみんなでやるからそこまでの緊張は無くて、和太鼓のほうが大変ですね。太鼓って、一見簡単そうに見えるじゃないですか。叩くだけですし。でも奥が深いし、見た目の部分でも和太鼓の叩き方を抑えなければならない。作品の中では、このグループ一番の名手という役どころですから、ぎこちなくなっちゃいけないし、でも見栄えが良くても音が鳴らなかったらダメだし、本当に大変なんですよ。
――和太鼓は冒頭から華麗なバチさばきを披露されますもんね
あれも大変なんですよ…。今回はそういった意味での初挑戦が多いから気も抜けない。でもその分の達成感はありますね。でも、タップが楽しかったな。タップって、手ぶらでできるし、飛沫も飛ばないし、それでいてみんなでワイワイできるところがあるから。もう一昨年の10月からやっていて、毎日しないといけないというか、もう信号待ちのときでもやっといてください、って最初に言われたんですよね。もう慣れるしかないから、って。本当に最近になってやっと、思ったように踏めるようになった感じがして、楽しいです。和太鼓も一応は家に段ボールで組んで叩けるような場所を作ってますけど、タップのほうに比重が傾いちゃっているのは事実です(笑)。
――でも両方やることで、大変ではありますが、うまく気分転換もできそうですね
リズムを刻むとか、リズムを打つ、鳴らすという部分では一緒だから、タップをやったおかげでリズム感も良くなっているし、それが太鼓につながっているところもあると思います。あと、漫才の出番前とかにも、気が付いたら自然とタップしているときがあるんですよ。若手から「浅草キッド、観ました?」とか言われて(笑)、その前からやってるんだけど、とは言えずに「たけしさんに憧れてこの世界にね」って言ってます(笑)
――ぜひその若手の方も明治座公演に呼んでいただけたらと思います(笑)。今回で舞台も4作目となりますが、舞台でのお芝居の魅力はどのようなところに感じますか?
演出のG2さんは、稽古をめちゃくちゃ頑張って、初日の幕が上がった時がピークらしいんですよ。確かに、初日をやって、だんだん回数を重ねて、あと何回やるんだろう、ってカウントダウンに入っていく…なんとも言えないはかなさ。そのはかなさが、多分魅力です。達成感とともにやってくるはかなさです。充実しているからこそ、永遠にやっていたい、と思うくらいの気持ちよさがあるんですよね。ドラマとかお芝居もいろいろとやらせていただいていますが、舞台は続けていきたいな、と思いますね。コンビでやっているから、他の人と充実したものを作り上げていくのは大吉さんには申し訳ないけど。自分ばっかり楽しんで、専業主婦の妻をほっておいて外で楽しくやっているような罪悪感はあります(笑)。でもまぁ、お互いにそれぞれの仕事で吸収して、コンビで持ち寄ってまた楽しいことに仕上げていければと思います。
――大吉さんから、舞台の感想とかのリアクションはありました?
直接は聞かないですけど、間接的には聞きましたよ。マネージャーさんから、酔っぱらうとすごい感想を言ってるって聞きます(笑)。舞台終わりは、ちょっと漫才が大げさになるらしくて、僕の漫才がクサくなるって(笑)。そこも含めて、お芝居を見ていただいて、そのあと漫才にも足を運んでみてください。
――最後に、明治座での公演を楽しみにしているファンの方にメッセージをお願いします!
福岡や大阪には、時節柄なかなかそこまで足を運べなかったという人も、東京であればフットワーク軽く来れる方も多いと思います。博多や大阪の時以上に、僕らの絆もできているので、以前ご覧になられた方にも、より楽しんでいただけると思いますし、はじめての方にも胸を張ってお見せできる作品になっていると思います! ぜひご覧ください!
インタビュー・文/宮崎新之