舞台『4000マイルズ~旅立ちの時~』主演・岡本圭人 取材会@大阪

「役作りで新潟→千葉 400キロの自転車旅」

12月12日(月)からの東京公演を皮切りに、来年1月まで全国4都市で上演される舞台『4000マイルズ~旅立ちの時~』で主演をつとめる岡本圭人が、11月5日(土)に大阪市北区のカンテレ本社で取材会を開き、意気込みを語った。

舞台『4000マイルズ~旅立ちの時~』は、2011年にオフ・ブロードウェイにて世界初演、2012年にオビ―賞のベスト・ニュー・アメリカンプレイを受賞、2013年にはピューリッツアー賞の最終候補となり“ヒューマンドラマの傑作”と絶賛された作品。2020年春にはロンドンのオールド・ヴィック劇場で、ティモシー・シャラメ主演で上演されることが発表され話題となった。そんな世界的話題作の日本初演版に岡本圭人、森川 葵、瀬戸さおり、高畑淳子の4名がこの冬、挑む。

数々の世界的な賞に名を連ねてきた本作。その作品の魅力について岡本は「作者のエイミー・ハーツォグは“人間”を描くのがとても上手な方です。最初はどういう人物なのか明らかにされないのですが、徐々にわかるようになるストーリーの運び方。本を読んでいると、途中からそれぞれの役に親近感も湧いてきて、“本当にこんな人がいるのかも?”と思わせる力があります」と語った。

物語は、大学生のレオ(岡本圭人)が祖母・ヴェラ(高畑淳子)の住むマンハッタンのアパートに、深夜、突然現れるところから始まる。レオはアメリカ西海岸から東海岸までを自転車で横断する旅の途中で不幸な事故に遭い、心に傷を負いながら、旅の最終地点であるニューヨークにたどりつく。一方のヴェラも、夫の死を未だに受け入れきれず、隣人と朝晩電話で安否確認するだけの孤独な毎日を送っていた。突然始まった2人の共同生活に、レオのガールフレンド・ベック(森川 葵)や行きずりの女子学生・アマンダ(瀬戸さおり)が加わり様々な波紋をもたらすが、次第に、レオとヴェラは互いへの理解を深め、誰にも言えなかった心のうちを明かすようになる―という、孫と祖母のめぐり逢いの物語。

役の魅力について問われると「レオは明るくて快活、ポジティブでよくしゃべる子なんだけど…時おり見せる“影”を感じるところに惹かれます。僕、この役をいただいた時に『自転車で2か月以上かけて旅する気持ちはどんなだろう?』と思ったんです。レオの気持ちを知りたくて、実はこの前の休みに、新潟の日本海沿いの町から千葉の海浜幕張公園までロードバイクで縦断してみたんです! 1日100キロを4日間、合計400キロの旅です」と驚きの役作りエピソードを明かした。道中では“発見”が多かったようで「トンネルはめちゃくちゃ怖いし、群馬を通ろうと思ったら1000m級の山を越えなくちゃいけなくて、でも暗くなってきてペンションに急きょ泊まったり…。山を登るのは大変でしたけど、登った後の爽快感がすごかったです。山では猿を5匹見かけました! あと狸も!(笑)。荒川を90キロ下ったりもしました。台本の中に、おばあちゃんから『どんな旅だった?』と聞かれて『大変だけどいい旅だったよ!』と答えるところがあって、どういうことかなと思っていたのですが、その意味が分かった気がしました。その日その時『今日はこっち行ってみようかな?』と思い付きに任せて旅する、きっとレオもそんな感じだったのかなと。帰ってきてから周りには『なんでそんなに焼けてるの?』と驚かれました(笑)」と旅を振り返った。

この物語のもう1人の主人公とも言えるのが、高畑淳子演じる祖母・ヴェラ。岡本演じる孫・レオと心を交わしていく存在だ。「この2人の関係性はまさに副題『旅立ちの時』のとおり。まったく違う世代がお互いの傷を癒し合い、次に進んでいく。そんな関係性が僕は好きです。ヴェラはすごくお節介なおばあちゃんだけど、根はやさしくてアートにも詳しくて、いろんな知識も豊富。孫・レオからしたらリスペクトできる魅力的な存在です。演じる高畑さんは日本一の女優さんだと思っています。稽古場でまだ3日しか一緒に過ごしていませんが、本読みを聞いているだけでその役の裏側まで見えてきそうな勢い。すごく刺激的な時間を過ごしています。この舞台の重要なところは会話。会話だけで関係性を見せていくところです。人間らしい会話を展開できるように、高畑さんとも『おばあちゃんは小さいときに何をして遊んでくれたんだろうね?』と台本に書かれていないことまで話してキャラクターを膨らませています」と、すでに“孫と祖母”の息はぴったりの様子。

実は高畑とは“深い関係”があるという岡本。「僕は覚えていないのですが、その昔、僕の父(俳優・岡本健一)と高畑さんとが同じ舞台に出ていた時、まだ3歳だった僕が父の楽屋で暴れまわっていて、その相手を高畑さんがしてくれていたらしいんです…(笑)。自分の小さいころを知る方と、こうして作品を共にするのは貴重な経験。言葉にならない親近感があります。高畑さんへの親近感をいい方向に使えたらと思います」と感慨深げに高畑との思い出を語った。

最後に「人間誰しもネガティブな部分が必ずあると思います。でもそういう部分って、人との繋がりで解消されていくものかなと思っていて、この作品はまさに人と人とが繋がることで心が浄化される、カタルシスを味わえる作品です。皆さんの心、というより、“心の中”にきっと響くはず。この舞台を観終わった後に『いい1日になるかもしれない』と思える、そんな舞台を作りあげていきたいです」と締めくくり、作品をアピールした。

舞台『4000マイルズ~旅立ちの時~』は、12月12日(月)からシアタークリエ(東京)にて上演スタート。大阪公演は来年1月7日(土)~1月9日(月・祝)まで梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで上演される。それぞれに痛みを抱えながら生きる大学生の孫と祖母。ともに暮らすうちに繰り返す、何気ない会話を通して互いの人生に触れるとき、世代をこえて共感し、寄り添うことで互いの痛みを癒していく―珠玉のヒューマンドラマを、是非、劇場で!