つかこうへい復活祭2023「新・幕末純情伝」菅井友香 インタビュー

幕末の京都を舞台に、新選組の沖田総司が実は女だったというユニークな着想で描かれる舞台「新・幕末純情伝」。この、演劇界で一時代を築いた劇作家・つかこうへいによる名作が、2023年1月28日(土)より東京・紀伊國屋ホールにて、2月17日(金)からは兵庫・AiiA 2.5 Theater Kobeにて上演される。主演を務めるのは、櫻坂46を卒業したばかりの菅井友香。彼女はどのような想いで本作に挑むのだろうか。

――まずは、櫻坂46のご卒業おめでとうございます! 卒業セレモニーを終え、どのような想いでいらっしゃいますか?

ツアーファイナルの東京ドームのステージまで駆け抜けるような感じで、精神的にも体力的にもかなり追い込んで挑みました。本当に素敵な形でみんなに笑顔で見送ってもらえて…応援してくれたみなさんへ何か恩返しになったらいいな、と思いながら頑張りました。自分の中では、ライブが終わって、バックに入った時に、卒業を初めて実感しました。あぁ、終わったんだ、って。卒業のステージを終えてみて、お仕事の部分ではいい意味でそんなに気持ちは変わっていないです。でもちょっとだけ、心を休めて、家族とご飯を食べるとか、普通の幸せも改めて楽しみたいな、とは思っています。

――卒業後、さっそく舞台「新・幕末純情伝」へのご出演が決まりましたが、率直にどんなお気持ちですか?

すごくありがたいなと思いました。「飛龍伝」をやらせていただいたときに、“予告編”で本当に少しだけシーンをやらせてもらっていて、その時にストーリーとかを共演者の方に教えていただいたりはしていたんです。その時に、すごく苦しいお話だけれど、だからこそ刺さるものがたくさんあると感じました。まさか、今回改めて挑戦させていただけるとは思っていなかったので、緊張と喜びが入り混じったような気持ちです。

――予告編で演じたときはどのような手ごたえでしたか?

その時は夢中でした。赤いジャージも着させていただいて、身が引き締まるような感覚もありましたね。それに、沖田総司にも、「飛龍伝」の神林美智子と通じるものがあるようにも感じました。違う作品ではありますが、信じる者のために戦っていく姿は勇敢でかっこいいですよね。つかこうへいさんの作品にしかない、魅力やメッセージがある気がして、もっと知りたいという気持ちになりました。

――つかこうへいさんの作品は2作目になりますが、どのような印象をお持ちですか?

とにかく、ついていくのに必死です。畳みかけるようなセリフ回し、そこに真っ直ぐじゃない…セリフとは真逆のことを伝えようとしているときもあって、そういう奥深さや難しさはすごく感じました。つかさんの作品にしかない熱さ、エネルギーを感じます。本当に熱く、泥臭く、人間らしさを出していて、人間同士がぶつかって、愛して、という深い愛情の伝え方、その大切さを私は感じました。だからこそ今もファンがたくさんいらっしゃるんだと思います。今、こういう情報社会の時代だからこそ、より伝わるし、伝えたいことのような気がしますね。

――岡村俊一さんの演出についてはいかがですか?

本当に愛情をもって、とても丁寧に、私が理解できるように教えてくださいます。この場面ではどういうことを伝えたいのか、例え話とかを入れながら、わかりやすく、私が置いていかれないようにしてくださっていました。すごくありがたかったですね。自分の中で疑問点があったら、ちゃんとすぐに聞ける環境でしたし、物語を理解して進めることができたので、とても感謝しています。「飛龍伝」が終わってからも、グループの活動で何かあるたびにエールを送ってくださったり、私も共演していたみなさんの出ている作品を定期的に見に行って勇気をもらっていました。だから、今回また舞台に出られるのは嬉しかったですね。

――今回演じる沖田総司について、今の印象をお聞かせください

まっすぐでカッコいいイメージはあったんですけど、今回の作品では女性ということで、そこにほっとけないような、人を引き付ける魅力があると思うんですね。みんなに愛される役だと台本を読んで思いました。自分が信じている人、愛している人のために、自分の身を削って戦っていく姿は、すごくまっすぐで、芯がありますよね。うまく言葉にするのが難しいんですけど、ちゃんと説得力を持たせられるように頑張りたいです。

――岡村さん曰く、沖田総司は“恋を知らない役”なんだそうです

そうなんですね!それならいけるかも知れない、って思いました。役と一緒に、探して、探し続けて、という感覚は、卒業というこのタイミングですし、すごくまっすぐ演じさせていただけるような気がします。それを必死に模索しながら愛を求めて戦うというのは、もしかしたら今の自分だからこそ出せるものがあるのかも知れないですね。

――今後、挑戦したいことややってみたいお仕事はありますか?

やっぱり私自身としては、「飛龍伝」をきっかけに舞台がすごく好きになって、グループで活動していたときも、少しでも時間ができたら見に行っていたんです。それがすごくエネルギーになるというか、生だからこそのパワーをいただけて、それで自分も頑張れたということがたくさんあったんです。そうやって、演じる姿とか、物語、作品を通して、少しでも「明日から頑張ろう」と思ってもらえるような、パワーを持った役者を目指して頑張りたいです。

――それくらい、舞台には魅力を感じている?

すごく感じますね。一生懸命に役に没頭されている姿とか、カーテンコールとかを見ると、涙が出てしまうんです。みなさんが身を削って届けようとしてくれている姿から、私は生きる力をもらっていました。だからこそ、私もお芝居をやらせていただくからには、いつもまっすぐでいたいと思いますし、周りからのアドバイスをちゃんと受け取れる素直な心を持ったままでいたいですね。本当に舞台は、人間性が出るというか、一挙手一投足、ごまかしが効かないんです。お芝居は、嘘をつかなきゃいけない仕事でもあると思うんですけど、人間として正しく、どんな役であっても生きられるような器でいたいと思いますね。

――そのためには、これからどんなことが必要だと思いますか?

やっぱり、いろいろな経験とか知識とかを吸収しないといけないな、と思います。どんなものが繋がっているかわからないですから、とにかくいろいろなものを見て、経験をして、いろんな感情をこれからも知っていきたいですね。

――ここ最近で、感動したことや心が大きく動いたことはどんなことですか?

やっぱり、今は櫻坂46を卒業したことが大きいですね。それ以外だと、この間、埼玉の長瀞に行って本当にきれいな景色を見ました。川下りをして、紅葉を見て、もうそれだけですごく感動して…。かき氷が有名なんですけど、凍えながら食べました(笑)そういう、ひとつひとつの気付きや感動を大事にしたいと思います。

――お仕事が忙しい中、癒しになるのが猫のトムくんと以前お聞きしましたが、最近のトムくんはいかがですか?

相変わらず私の癒しですね。昨日も一緒に寝ました(笑)。最近寒くなってきたので、お布団にいる時間も増えてきて、私はトムを枕にしながら寝ています。お腹に顔を埋めさせてもらうんですよ(笑)。

――やっぱり、おうち時間が癒しなんですね

基本的に、家でいる時間が一番の癒しです。ただ座っているだけの時間もいいんです。最近は、中にクリスタルが入っているアロマディフューザーをお部屋に置いていて、香りも楽しんでいます。それで、朝起きたら、どんなに寒くても窓を全開にしてそこでリセットします。1日がここから始まるぞ!って深呼吸をしてスッキリするんですよ。それと、なるべく生きたお花をお部屋に飾るようにしています。以前はお花を定期的に届けてくれるようなのを使っていたんですが、だんだん自分の好みがわかってきて、今はお花屋さんで自分の好きなお花を選ぶのが楽しいです。

――しっかりお家で癒されつつ、日々の稽古も頑張っていただければと思います!公演を楽しみにしているファンにメッセージをお願いします!

改めて、こんなに長年愛され続けているつかさんの作品に、もう一度チャレンジさせていただけることを、本当にありがたいと思っています。私にとってとても大きなきっかけになるはずですし、この作品の素晴らしさをしっかりと伝えられるように、全力で毎日を過ごしたいと思います! ぜひ楽しみにしてお越しいただければと思います。

インタビュー・文/宮崎新之
撮影/篠塚ようこ