宮沢賢治による名作「銀河鉄道の夜」をモチーフに、上田誠(ヨーロッパ企画)の脚本・演出でお届けする新作公演「たぶんこれ銀河鉄道の夜」。この令和を舞台にしたSFファンタジーコメディに挑むのは、本作で初主演を務める久保田紗友だ。ポエトリーラップなどを取り入れたポップな音楽劇というこの物語に、彼女はどう飛び込んでいくのか。話を聞いた。
――出演が決まった時の率直なお気持ちはいかがでしたか?
主演という立場で、プレッシャーはあるんですけれども、上田誠さんの作品に携われるということで、とても楽しみにしています。8月に「VAMP SHOW ヴァンプショウ」という舞台に出演させていただいたんですが、その作品がコメディだったんですね。少し苦手意識があったのですが、上田さんの作品もコメディの要素があると思うのでその時の経験を生かしながら、「銀河鉄道の夜」がどんなふうになるのか、今からすごく楽しみにしています。
――コメディの面白さや難しさをどのようなところに感じていますか。
思い切りやる、っていうのが難しいんですよね。想像の中ではできても、実際に表面に出していくのはやっぱり難しいです。そこはコメディに限らずかも知れないですが、コメディはより大変な気がしますね。それに、予想外のことが起こるから面白いわけで、その予想外を狙いすぎるのも良くないので難しいなと思います。
――今回の作品は、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」がモチーフになっていますが、現時点の物語の印象はいかがでしょうか。
「銀河鉄道の夜」というお話は、解釈が人それぞれあると思うんですけど、私はいろいろな問題が起こっても、それでも人は生きていく、生きていこうっていう前向きなメッセージが込められていると思うんですね。今回の舞台は、デスゲームという形になって(笑)、実際のところ、どんな風になるかはまだわからないんです。でも、問題を抱えているときって、自分にとってはすごく大きな問題で誰よりも不幸って感じることってあると思うんです。それが、銀河鉄道に乗ると、そうでもないんじゃないか…って思えるようになるところが、プロットの中ですごく印象に残っているんです。本当にそうだよな、って。プロットが台本になる中で、それがどういう風に掘り下げられていくのかが今から楽しみです。悩みって誰しも抱えているものだと思うので、そういう意味で問題提起もできるような作品になっているんじゃないかな?
――今回演じる役どころは、地方在住の美容師で、SNSが炎上してしまう女の子ということですが、現時点の印象は?
自分ではそんなつもりはなかったのにどこか日常に対して軽視していたこと、深く考えていなかったことで炎上してしまうんですね。それで、そのまま運命を受け入れていく、みたいなことが役の設定に書いてあったんですが、私自身も運命は“決まっている”って思うんですよね。だから、あるがままに起きたことを受け入れようっていう気持ちには共感できますね。
――作・演の上田誠さんは、“自己犠牲”がキーワードになりそう、とおっしゃっていました。些細なところで言うと、例えばカラオケに行っても、自分よりも周りが盛り上がるために歌う、みたいな感覚とのことでしたが、このキーワードについてはいかがですか?
ちょっと前までは、私はマイクを離したくないタイプでした(笑)。ただただバラードを歌っていたいと思っていたんですけど、ある時自分が逆の立場だったら結構キツイな、と気づいて、みんなが盛り上がる曲を歌おう、っていう風に変わりました。そしたらみんなが楽しそうにしてくれるのが嬉しくて。なのでカラオケに関しては、自己犠牲というより、もともと我が道をいっていて自分のタイミングで変われてそうはならなかったので、自分がしてしまっている自己犠牲をたくさん探して芝居に役立てたいと思います。
――ではヨーロッパ企画や上田誠さん作品について、どのような印象をお持ちですか?
着眼点がすごく面白いですよね。それと、これはコメディになるのだろうか?っていうものを、コメディにしてしまうのが、面白いと思います。演じているみなさんもすごく楽しそうで、それをモットーに成り立っているように感じますね。あと、結構複雑なことを、シンプルにわかりやすく仕上げてしまう上田さんがすごいな、って思います。だから、そのチームに加われるのは、すごく嬉しいです。
――稽古で楽しみなことはありますか?
戸塚純貴くんと鈴木仁くんは以前に共演していて、その2人がいるから少し安心感がありますね。お芝居もすごく魅力的な方ばかりなのですごく楽しみ。それに、かもめんたるさんは個人的にもすごく好きな方達なので、ご一緒できることにワクワクしています。乃木坂46の田村真佑さんとはまだお会いしていないんですけど、すぐ仲良くなれそうな気がしています。勝手に(笑)。前回の舞台は男性キャストばかりだったので、同世代の女の子がいてくれるだけでもうれしいんですよ。
――稽古場でたくさんお話もして、みなさんと距離を縮めていきたいですね。
そうですね。コミュニケーションが得意なほうではないので、しっかり皆さんとコミュニケーションが取れるようにしていきたいです。それがあってこそ、絆が生まれたり、チームワークが生まれたりして、作品がより色鮮やかなものになると思うので、そこは大切にしたいですね。最近、コメディのお芝居をさせていただく機会があったり、ヨーロッパ企画のみなさんともご縁を感じることがあったりしているので、あまり気負わずに、楽しみながら演じたいですね。苦手分野だったからこそ、殻を破ることができるような気がしますし、課題は稽古でたくさんみつけていくことになると思うんですけど、精一杯頑張ります。
――コミュニケーションの苦手意識ってどういうところですか?
すごく人見知りで、人に話しかけて迷惑じゃないかな?とか、すごく考えちゃうんです。それで後から反省することも多くて。あの時こう言ったけど、あれ失言じゃないかな?とか。でも、今回はいじられキャラになれるくらい、しっかりコミュニケーションをとっていきたいと思います!
――久保田さん自身も変わるきっかけになる作品になるかもしれないですね。最後に、公演を楽しみにしている人にメッセージをお願いします!
絶対に、新しいエンターテインメントをお届けできると思っています! 今まで観たことのないような舞台を作れたらと思いますので、ぜひ皆さんに観に来ていただきたいです。今回は音楽劇ということで、そこもスゴイことになるはず! 歌のスキルには自信があるわけではないんですけど(笑)、音楽は大好きなので、もし歌うってなったらしっかりとトレーニングしたいと思います! 楽しみにしていてください!!
インタビュー・文/宮崎新之