ロックと笑いをふんだんに散りばめたシェイクスピア作品という意外性のある組み合わせの妙を、とにかく徹底して豪華なキャストで観られるのが新感線☆RS『メタルマクベス』だ。上演するのは、360°客席が回転する特殊な機構を持つ、東京・豊洲のIHIステージアラウンド東京。アジア圏ではここにしか存在しない、この没入型の劇場で果たしてどんな劇空間が体験できるか、興味は尽きない。今回は3組のカンパニーに分かれての上演となるこの『メタルマクベス』、7/23(月)~8/31(金)のdisc1に続き、9/15(土)に開幕するdisc2で、主人公のランダムスターに扮するのは人気歌舞伎俳優の尾上松也だ。
――劇団☆新感線にはこれが初参加になりますね。オファーが来た時の心境はいかがでしたか。
尾上「感無量でした。いつか新感線に出演したいと思っていましたので、今回いのうえ(ひでのり)さんからお声をかけていただいた時には本当に天にも昇る気持ちでしたね。ですが『メタルマクベス』で、というのは予想外でした。参加させていただけるなら和物の作品になるんじゃないかと、自分で勝手に思っていましたので」
――『メタルマクベス』という作品のことは、以前からご存知でしたか?
尾上「知ってはいましたけど、どんな歌を歌っていたかなど、具体的なことは全然覚えていなくて。出演が決まってから、改めてDVDで観返しました」
――観返してみての、ご感想は?
尾上「いや~、やっぱり宮藤官九郎さんらしいというか、いろいろな時代に話は飛んでいくのですが、最終的にそれがひとつにつながってくる不思議な世界観で。そこに『マクベス』というシェイクスピアの名作が重なってくるところが、とても面白い。僕自身、DVDでもう何度も観たのですが、観るたびに新たな発見がありますし、気づきがあるんです。逆に言うと、一度観たくらいではすべてはわからないということですよね。ということは、つまり何度観ても楽しめるということでもあるので、ぜひ何度でも足を運んでいただきたいです(笑)」
――ランダムスターという役柄については、どう思われていますか。
尾上「一言で言えば悪、なんでしょうけど、実はこういう役どころ、僕はとても好きなんです。ただの悪ではないというところをしっかりと演じられるということに、すごく魅力を感じます」
――ランダムスター夫人の大原櫻子さんとは以前、歌番組でご一緒されたことがあるとか?
尾上「僕が某歌番組に出演させていただいた時に、櫻子さんも出ていらっしゃって。そこで初めて「よろしくお願いします」ってご挨拶だけさせていただいたんです。今回共演できるのがとても楽しみです」
――disc2チーム内で、他に気になる方はいらっしゃいますか。
尾上「大原さんと僕の年齢差もありますが、親友役の岡本健一さんとも結構離れていると思うんですよね。今回、年齢層が意外にバラバラで。なかなかない顔合わせでもあるので、その点からも面白く演じられたらいいなと思っています。僕も岡本さんの舞台は何度も観させていただいていて、まさかこの舞台で共演させていただけると思っていなかったので、実はすごく楽しみなんです。あと木場勝己さんとはずいぶん昔ですが、中学生時代に『スタンド・バイ・ミー』という舞台でご一緒させていただいていたんです。それ以降、舞台では何度も拝見しているのですが、なかなかお会いする機会はなくて。今回、中学1年の時以来の共演になりますので、これもまた楽しみですね」
――いい出会いや再会が重なる舞台になりましたね。
尾上「はい、素晴らしい共演者の方に恵まれて、本当にうれしいです」
――さらにdisc3で同じランダムスターを演じる浦井健治さんとは、以前からのお友達だとか。
尾上「浦井くんとは、実は共演したことはないんですけどね。あるミュージカルで、浦井くんが以前演じていたお役をさせていただいたことがありまして。その役を演じていた時に、初めて楽屋でお会いできたのですが、なんだか昔からすごく知っている友達かのようにフレンドリーに話しかけてくれたんです。そこからずっと仲良くしていただいて、連絡を取り合ってお互いの舞台を観に行ったりしていましたので。今回は共演というわけではないですけれど、同じランダムスターを演じるというのは、また縁を感じますね。一方、disc11のランダムスターである橋本さとしさんは、出演されている舞台をこれまでに何度も拝見していて、毎回本当に素晴らしいと思っていた方です。僕は、その橋本さんの直後に同じ役を演じることになるわけなので、ちょっと緊張します。もちろんdisc1の舞台も観に行きたいですね。僕も先輩に負けないよう、がんばりたいと思っています」
――『メタルマクベス』の楽曲については、どういう印象をお持ちですか。
尾上「やはり、ロックじゃないですか。好きなので、ふだんから聴くことは聴くのですが、カラオケも含めてなかなか歌う機会というのはなかったですし。スポット撮影の時にシャウトするシーンがありまして、思い切ってシャウトしてみたら我ながら意外とイケてましたね(笑)」
――特に高音がものすごくきれいでした。
尾上「今日はいいシャウトが出せましたね。自分でもちょっと安心しました。これが本番ではどうなるか、まだわからないですけど(笑)。みなさんにもぜひ、楽しみにしていただきたいですね」
インタビュー・文/田中里津子
Photo/村上宗一郎
ヘアメイク:岡田泰宜(Living you)
スタイリスト:曽根原未彩
ジャケット/D’URBAN
カットソー
パンツ、ブーツ/call&response