「生かすも殺すも私たちのテンポと間」大地真央と花總まりが語る『おかしな二人』

‘20年10月に、大地真央と花總まりが初共演を果たし大きな話題となったニール・サイモンの『おかしな二人』が’23年4月に再演される。

演劇界きってのコメディエンヌ・大地真央が“無精者”のオリーブ役、前回がコメディ作品初挑戦となった花總まりが“病的なまでに几帳面”なフローレンス役を演じ、共演には、初演に続き宮地雅子、平田敦子、山崎静代が二人の女友達を、芋洗坂係長、渡辺大輔が近くに住むスペイン人の兄弟を演じ、青木さやかが新キャストとして参加する。

大地と花總の合同取材会のレポートをお届けする。

 

今回はお客様にリラックスして楽しんでいただきたい

――’20年の公演を経て、どんな魅力のある作品だとお感じですか?

大地「やはりまず、ニール・サイモンの戯曲が非常に面白いというところがあります。それと、8人の登場人物それぞれのキャラクターが非常に面白くて、「おかしな二人」どころか「おかしな八人」という感じで(笑)。70年代の話ですが、ある意味、女子会的な中でそれぞれが自立していく姿が描かれるので、ご覧になる方がそれぞれに自分を置き換えてみたり、そんなふうにも楽しんでいただける作品だったんじゃないかなと思います」

花總「有名な歴史ある作品ですし、カンパニーとしても良いチームワークで、大地さん率いる“おかしな”メンバーで一丸となってつくっていったので、お客様にも楽しんでいただけたかと思っています。今回、再演ということでメンバーもまた変わるので、2023年版『おかしな二人』をみんなでまた新たにつくって、また新たなおもしろさを届けていけたら。台詞がたくさんあるので、もう一回気合を入れて(笑)、緊張感と集中力を持って」

大地「時間が経ってますのでね(笑)」

花總「はい。またがんばっていきたいと思います」

 

――約2年半ぶりの再演となります。

大地「え、もうそんなに経った!?っていう感じです。前回はコロナ禍に入ってまだ間もない時期だったので、お稽古でも「向き合っちゃだめ」とか「ソーシャルディスタンスを」とか、いろんな枷がある中でいかに二人のやりとりをおもしろくするかというようなところがあったのですが、結果それも良かったのかなと思える仕上がりになったんじゃないかと思っています。ただお客様には、大きな声を出さないとか、笑う声もおささえてとか、そういうことがあってとても申し訳なく感じていました。もっとリラックスして自由にこの作品の世界に溶け込んでいただきたかったので。その辺りは当時とは状況も違いますので、今回はリラックスして、より楽しんでいただきたいと思っています。こちらも万全の態勢でお迎えしますので」

花總「前回は「観に行きたくても観に行けません」という方が大勢いらっしゃったので。今回はぜひ皆さんに観ていただきたいと思います。この3年の間で、最初はだいぶ押さえつけられていた演劇界も、負けないぞという空気で走り出しているので、その勢いもこの『おかしな二人』に乗せていきたいです」

 

――演じるという部分ではいかがですか?

花總「再演は難しいこともたくさんあるのがわかっているので。逆にあまり意識せず、新鮮に取り組めたらいいなと思っています。幸いにメンバーも変わっていますし、3年前とはまた関係も変わってきているので、あまり振り返らず、今回は今回というので取り組んでいくといいかなとちょっと思っています」

大地さんの大きな愛を毎日感じていた

――先ほど大地さんから「ニール・サイモンの戯曲が非常に面白い」という言葉もありましたが、その面白さとはどんなものでしょうか。

大地「やはり台詞の応酬というか掛け合いが、とてもおもしろいんですね。ですからそれを素直にやればおもしろいと思うんですけれども、それを生かすも殺すも私たちのテンポとか間(ま)とか、そういうもので。チームワークがとても良かった。今回は青木さやかさんが初めて入られますけど、絶対におもしろくなると思っています」

花總「おっしゃった通りで、生かすも殺すも私たちのテンポ感だと思います。あとは、お客様とつくっていく、劇場ならではの良さというものも絶対にあるので。一日一日、お客様の雰囲気も変わっていくと思いますので、一緒にさらに一段アップした作品の良さというものを、その時その時でつくっていけたらと思っています」

 

――大地さんが演じるオリーブ、花總さんが演じるフローレンスの印象をお聞かせください。

大地「オリーブはキャリアウーマンで、一応敏腕プロデューサーなんですけれども、仕事以外のところはどうでもいい、というようなところがあって、ぐっちゃぐちゃの家に平気で住んでいる(笑)。おおらかというか大雑把というか、こだわりがあるところないところの差がある人です。ただ、その中でも友達とゲームをしたりすることが一番のリラックスタイムで。みんなも、そんな汚い部屋なのにオリーブのところに集まってきて、なんか落ち着くというような、そういう変な魅力のある人じゃないかなと思います」

花總「フローレンスは、悪気はないんですけど人からかなりうざく思われる……(笑)。ちょっとマメなタイプです。憎めない、ちゃっかりしているところがあって、“うざさ”と“愛らしさ”をうまく同居させてフローレンスが成り立っているので、そこは大切にしていきたいです」

 

――前回、初めて共演されてのお互いの印象をお聞かせください。

大地「(二人が所属していた宝塚歌劇団では)学年がすごく離れていて、年齢もすごく離れているんですけど、最初からふっと「相性がいいな」みたいな感じがあって。コメディが初めてだとおっしゃるわりに思いきりやられるので、すっごくかわいいなぁと思っていました。全然初めてじゃないでしょう?という感じでしたし、一生懸命さというか、体当たりでやっていらっしゃるので」

花總「いえ、もう、私をすべて受け止めてくださるので。本当に大きな愛がありました、大地さんには。はい。もう、愛がそこに」

大地 (笑)

花總「たしかにありました。毎日感じていました」

 

――大地さんは今年、初舞台から50周年を迎えられます。

大地「周りに言われて、自分も振り返ってみて、「あ、50年だ」っていう、正直そんな感じです。私は運が良かったんだなと思いますし、今まで携わってくださった方々のおかげだと改めて思います。50年経ったからなんなんだ、という感じではあるんですけれども、まぁ……おめでたいのかな(笑)。でもこれからもあまり変わらずいくかなという感じです」

 

――大地さんにとって舞台とはどんなものですか?

大地「なんでしょうね。宝塚歌劇団で、舞台から始まっているので、私たちは。映像もすごくおもしろいのですが、やっぱり私の基本は舞台かなと思います。猫と一緒で切り離せないのかな、みたいな(笑)。でも自然がいいのかなとも思っていますけどね。ただ、その一つひとつに真摯に向き合ってきたという自負はあります。それがたまたま繋がっていった。いつも、自分のライバルは自分のひとつ前の作品みたいな、そういう意識で、「これが一番おもしろい」と言われたい、という思いでやってきました。好きでやってきたんですけどね。一つひとつ大事にやってきただけです。びっくりです、50年って」

 

――花總さんにとっての舞台はどんなものですか?

花總「……なんだろう(笑)。もちろん楽しいこともあるけど、つらいことはその何倍も」

大地「身を削ってるよね」

花總「そうですね。自分で「なんでこんなつらいことやってるんだろう」って思うこともたくさん、正直言うとありますし。でもなんでやめないでやってるんだろうっていう。ただ、まだまだ私なんて、大地さんに比べたら全然経験も浅いので、もしかしたら10年後、20年後、30年後になったら、「自分にとっての舞台ってこういうものだったのかな」って言える、やっとその時になにか言葉が見つかるのかなと思います。そういう経験を積んでいけたらいいのかなと思いますね。まだまだ中途半端で」

大地「ええ?」

花總「「こうなのかな」と思うときもあれば、「こうなのかな」と思うときもあるような……定まらないというか。自分にとってなにかを定められない。まだ途中という感じです」

取材・文/中川實穗
撮影/篠塚ようこ