『ロミオ&ジュリエット』│長谷川慎&北乃きい インタビュー

©ロミオ&ジュリエット製作委員会

長谷川慎がロミオを、北乃きいがジュリエットを演じる『ロミオ&ジュリエット』が、1月28日(土)より東京・Bunkamura シアターコクーンにて開幕する。

誰もが知るウィリアム・シェイクスピアの名作を今回演出するのは、アレクサンドラ・ラター。宮崎駿監督が『もののけ姫』の舞台化(2013 年『Princess MONONOKE 〜もののけ姫〜』/ロンドンと東京で上演)を初めて認めた人物だ。

芝居とダンスを融合させた芸術性豊かなムーブメントで現代的、かつ幻想的に見せるという本作について、ロミオ役の長谷川慎(THE RAMPAGE)と、ジュリエット役の北乃きいに話を聞いた。

アレックスさんと話し、納得して台詞を発することができる(長谷川)

――世界中で上演され続ける『ロミオ&ジュリエット』に出演されるということをどう思われましたか?

長谷川 お話をいただいたときは素直にびっくりしました。まさか自分がロミオを演じる日が来るとは思っておらず、俺、すげえ!って(笑)。そして同時に、歴史が深い作品ですし、責任を持って演じないと作品を汚してしまうというようなプレッシャーも感じました。

北乃 ジュリエットは事務所の先輩方が多く演じてこられた役で、いつも事務所の壁に作品のポスターが貼ってありました。私は10代前半の頃からそのポスターを見て「すごいな」と思っていたので、そういう役を自分が演じるというのはすごく感慨深いです。

――北乃さんは本作の出演に寄せて「このタイミングであることに何か意味があると感じています」とコメントを出していましたが、そことも通じるお話しですか?

北乃 私は芸歴が18年くらいになるのですが、その中で、多くはないですがミュージカルやストレートプレイをやらせていただきました。今回、その経験を経てジュリエットという役を演じさせていただくというのは大きいなと思っています。外国人演出家の方と一緒に作品をつくらせていただいた経験もあるので、お稽古していてアレックスさん(アレクサンドラ・ラター)の伝えたいことが、以前よりわかるという実感があります。初めて外国人演出家の方とご一緒したときはわからなかったんです、ニュアンスの違いがなかなか難しかった。だからこのタイミングでジュリエットという役を演じさせていただけることは、自分にとってよかったなと思います。

――そういう意味では、長谷川さんは外国人演出家と一緒に仕事するのは初めてですが、お稽古はいかがですか?

長谷川 僕はまず舞台自体が3作目で、しかも1作目、2作目はほとんどが事務所のメンバーでしたし、演出家さんも日本の方だったんですね。そういう少ない経験の中での今作なので、まだ手探りの段階にいます。ただ今回すごくありがたいのは、イギリスの戯曲をイギリス出身のアレックスさんが演出してくださるので、その言葉に含まれる細かなニュアンスも丁寧に説明してくださるんです。だから僕も、曖昧なまま進まず、納得しながら台詞を言うことができます。そこはとてもよかったなと思っています。

――『ロミオとジュリエット』はとても有名な作品ですが、それを稽古の中で掘り下げることで発見や改めて感じることはありますか?

長谷川 実は僕、『ロミオとジュリエット』の内容を知らなかったんですよ。タイトルを聞いたことがあるくらいでした。それでまず、レオナルド・ディカプリオさんがロミオを演じた映画『ロミオ+ジュリエット』(’96年公開)を観ました。そしたら「え、そういうこと!?」みたいな。ラブストーリーだと思って観ていたので、最後にこんな悲劇が訪れるとは思ってもいなくて。マジか!みたいな(笑)。

――(笑)。そこから稽古で掘り下げてどうですか?

長谷川 映画を観ていたときは、台詞にそこまで意味を感じていなかったんです。「かっこいいことを言っているな」とは思うけど、深く知ろうとしていなかった。でも稽古でアレックスさんが「この言葉はこういう意味だよ」とひとつひとつクリアにしていってくださって、「この台詞はこういうことを言っていたんだ」「これが伝えたかったんだ」ということがわかるようになってきました。すごく深いので、今改めて映画も観たいなと思っています。

北乃 シェイクスピアの台詞はもしかすると、まず発している人にダイレクトに伝わってくる台詞なんじゃないかと感じています。台詞として発したときに、観ているだけでは感じ取れない気持ちのようなものを感じる。だから、自分がまず感じて、そこから人に伝わっていく、というような順番になっている気がするんです。それは他の脚本ではあまり感じたことがない感覚です。そういう発見はこれからお稽古中に何回もあるだろうなと思っています。

見たことのないような『ロミオ&ジュリエット』になると思う(北乃)

――本作は、芝居とダンスを融合させた芸術性豊かなムーブメントでみせる、と紹介されています。実際、どんな作品になりそうですか?

長谷川 ムーブメントがすごくかっこいいです。おしゃれでもあると思う。「この言葉に対してこういう動きがつくんだ」という驚きがありますし、アーティスト目線としても面白く感じます。

北乃 今までに見たことのないような『ロミオ&ジュリエット』になると思います。今回、舞台設定は現代的なんですけど、言葉は現代にアレンジされていないんです。だからもしかすると若い方には言葉が難しく感じるかもしれない。でも、それがムーブメントで補えている感じがするんです。昨日も、実際は台詞を言いながらやる動きを台詞なしでやってみたんですけど、ロミオとジュリエットが出会って、ビビッときて、恋に落ちて、ずっと触れていたい、というような気持ちがムーブメントを通して、理解できるようになっていて。例え日本語がわからなくても、どういうシーンなのかわかると思う。私はこういう作品は観たことがないです。

――抽象的な動きなんですか?

北乃 そうですね。抱き合うシーンだからといって抱き合うわけじゃないし、手が口を表したりとかもするし。でもちゃんと伝わると思うんです。

――ということはチームワークが大事だと思いますが、カンパニーはどんな雰囲気ですか?

長谷川 スタッフさん含め、すっごく居心地がいいです。

北乃 そうなんだ!

長谷川 え?(笑)

北乃 そういう話、したことなかったから(笑)。

長谷川 そうなんです、居心地がよくて(笑)。まずアレックスさんがフランクで和ませてくださる方でもあるんですけど、さらにみなさんの「みんなでがんばってつくろう」というすごく穏やかな空気があって。だから僕もすごくリラックスして稽古できています。安心します。

北乃 アレックスさんが本当に毎日ニコニコですよね。ひとつひとつの役に愛を持って接してくださるので、とてもいい雰囲気です。まだ私は全員とはお稽古していないんですけど、錚々たる先輩方から勉強させていただいています。アレックスさんはじめ、みなさん気さくな方ばかりで、お話ししやすくてよかったなと思います。

――最後に、お互いの印象もうかがいたいです

長谷川 ご一緒するシーンが多いからか、一気に……。いや、北乃さんがどう思ってるかわかんないですけど……。これ一方的だったら恥ずかしいですけど……(笑)。

北乃 ええ?(笑)

長谷川 稽古が始まって一気に心の距離が近くなった感じがしました。話しやすいです。

北乃 (笑)。私は最初、割と年齢差もあるので、なにを話したらいいんだろうと思っていたんです。でもいつも長谷川さんから話しかけてくださるので、甘えちゃってますね。

長谷川 いえいえ。

北乃 若い人となにを話していいのかわからない、みたいなところがあって。

――北乃さんがそんなことを言う日が来るとは、と思ってしまいます(笑)

北乃 ほんとですよね。13歳からこの世界にいて。今までは私がそんなふうに言われていたんですけど、この気持ちか!みたいな。でも長谷川さんは真面目で一生懸命でストイック。ひとつ決めたら極めたい、というような真っ直ぐさを感じます。人の見てないところで努力されている方だと思います。ロミオとジュリエットって、あっという間に恋に落ちて一気にクライマックスにいくので、私たちの間に距離があると難しいと思うんですね。でも現場でのプロとしての姿を見て、年齢差もあまり感じなくなりました。

長谷川 おお~。

北乃 あと、長谷川さんの動きがかわいくて、みんなに「パピー(子犬)」って言われてました(笑)。

長谷川 そんなこと言われてたんだ!(笑)

インタビュー・文/中川實穗