2023/2024シーズン、ミュージカル『東京ローズ』の全てのキャストが決定した!本作は、毎シーズンに一本、全キャストをオーディションで選考、上演する企画の第6弾。演出に藤田俊太郎を迎え、昨年11月25日より公募を開始、936通の応募があった。12月の書類・歌(映像)選考を経て、2023年1月に課題曲(映像)選考と一次選考、2月上旬に二次選考を行い、ついにすべての出演者決定した!
決定キャスト(五十音順)
飯野めぐみ
シルビア・グラブ
鈴木瑛美子
原田真絢
森加織
山本咲希
また、演出家・藤田俊太郎と演劇芸術監督・小川絵梨子のコメントも到着した。
演出家・藤田俊太郎コメント
新国立劇場フルオーディション第6弾ミュージカル『東京ローズ』にご応募いただき誠にありがとうございました。日本での上演のないミュージカルで、戯曲も譜面もまだ出版されていないこの作品に挑戦してくださったことを、深く感謝しております。
936名もの方々にご応募いただき、歌唱映像を全て観させていただきました。全く違う価値観を持った、お一人お一人の誇らしい生き様を観て、声を聴き、向き合わせていただきました。強い意志と覚悟を感じました。全員と今回の仕事でご一緒することはできませんでしたが、映像を通して出会えたことを心から幸せに思っています。未来でまたお会いできると信じています。素晴らしい舞台表現の創作を通して再会できるよう日々、演出家として努力し続け進んでいきたいと新たに決意しています。
最初の歌唱映像、そして課題曲映像の選考を経て、お会いした方とは作品との親和を考えながら、対面の一次選考、二次選考の場を共にしました。貴重な機会ですから、稽古初日だと考えて稽古場に入り、取り組みました。世代、キャリア、様々な演技スタイルがある中、ワークショップ形式でお一人お一人が日本初演作品に想像力、言葉と歌の魂を宿してくださった時間はとても美しかったです。
キャリアを始めたばかりの漲る勢い、またはキャリアを重ねても自分を疑い挑戦する気持ちで臨んでくださった勇姿を忘れません。僭越ながら、これからの演劇、ミュージカル、時代を共に創っていきたいと心から思いました。
2023年12月の上演ではカンパニー皆でアイバ・戸栗・郁子の人生を生きたいと思います。アイバはラジオ放送のアナウンサー「東京ローズ」と呼ばれ、戦争と人種差別の犠牲となりました。第二次世界大戦の、戦前、戦中、そして戦後を、最後まで後悔はない、人を恨まない、とアメリカ人として信念を貫きました。一市民の女性が国籍を奪われ、時代や運命に翻弄された物語、言葉を客席に責任を持って届けたいと思います。そして、自分の意志を持ち、同時に他者を受け入れながら進んだアイバの生き方を、936名分の想いを胸に、舞台上で鮮やかに表現したいと思います。
最後になりましたが、この作品を創り、私たちに日本初演の機会を与えてくれた BURNT LEMON THEATRE に心からの感謝と敬意を込めて。
大切なお客様を劇場でお待ちしております。新しいミュージカルの誕生を是非お楽しみください。
演劇芸術監督・小川絵梨子コメント
フルオーディション第6弾『東京ローズ』のオーディションにご参加くださった方々、ご興味を持ってくださった方々に心より御礼申し上げます。
本企画では初めてのミュージカル作品となるため、どのぐらいの方々がご興味を持ってくださるかの予測が付かず劇場として少し不安もあったのですが、実際には大変にたくさんの方々がご参加下さいました。ご出演頂く方々とも、また今回はご出演頂くことが叶わなかった方々とも、この度の機会にこうして出会わせて頂けたことは劇場として大変に大きな財産であります。オーディションに参加することには、心も体も時間も必要とされることだと思っております。こうして作品に興味を持ってくださり、そしてお力を貸して下さいましたことに重ねて深く御礼申し上げます。
オーディションとは判定の場ではなく、あくまで作品のための出会いの場だと考えています。今回ご一緒させて頂くことができなかった方とも、どうかこの先に再びお会いさせて頂けますよう切に願っております。
『東京ローズ』は、イギリスで初演されたばかりの大変に新しい作品です。先日、イギリスにて本作を作ったチームの方々にお目にかかったのですが、みなさん 20代30代の若く優れた作り手であり、新しい作品を作り出していくことに熱意と強い思いを持っていました。新国立劇場での本作の上演をとても喜び、様々な面で協力して下さっています。
ミュージカルの新作という、劇場として初めての試みになりますが、たくさんの方々のお力を頂いた上で、きっと素晴らしい作品になると思います。今年の冬の公演を楽しみにして頂けましたら幸いです。
【ものがたり】
「Who is Tokyo Rose?」
アイバ・戸栗・郁子は 1916年にアメリカで生まれアメリカで育った日系二世。日本語の教育を受けることなく1920~30年代のアメリカで青春を過ごした。叔母の見舞いのために 25 歳で来日し、すぐに帰国するはずが、時代は第二次世界大戦へと突入、アメリカへの帰国も不可能となってしまう。そこでアイバは、母語の英語を生かし、タイピストと短波放送傍受の仕事に就く。戦争によって起こる分断や、離散、別れ。多くの人々を襲った不幸がアイバ自身とその家族の身にも降りかかる。
やがてラジオ・トウキョウ放送「ゼロ・アワー」の女性アナウンサーとして原稿を読むことになったアイバ。その女性たちをアメリカ兵たちは「東京ローズ」と呼んだ。終戦後、アイバが行っていたことは、日本軍がおこなった連合国側向けプロパガンダ放送であったとされ、本国アメリカに強制送還され、国家反逆罪で起訴されてしまう。
本国アメリカから、戦中日本の悪名高きラジオアナウンサー「東京ローズ」であった罪を問われることとなったアイバ。彼女は本当に悪人だったのか……?