日本産オリジナルミュージカル Japanese Musical『戯伝写楽 2018』ついに開幕!
1月12日東京芸術劇場 プレイハウスにて、Japanese Musical『戯伝写楽 2018』が開幕した。初日に先駆け、11日、初日直前会見が行なわれ、最終リハーサルが公開された。
物語の時代は、江戸・寛政。
本業の能役者として風采の上がらない斎藤十郎兵衛(橋本さとし)は、与七(東山義久・栗山航 Wキャスト)とつるんで賭場に出入りするなど、くさくさとした日を過ごしていた。絵で身を立てようと思いつき、版元の蔦屋重三郎(村井國夫)に売り込みに行くが、当然、その絵を認めては貰えない。
ある日、江戸の町で喧嘩に巻き込まれるが、その様子を食い入るように見つめていたおせい(中川翔子)と出会う。
おせいは、一心不乱に乱闘の様子、十郎兵衛の顔を絵に描いていた。
その非凡な才能を目にした十郎兵衛は、この娘を利用し一儲けしようと目論む。
十郎兵衛は、蔦屋重三郎に、凝りもせず再び自分の絵を売り込みに行った。
程なくして、十郎兵衛は の持ち込む絵は、東洲斎写楽の雅号で、次々と世に送り出される事となる。
写楽の絵は、瞬く間に江戸の町で、大ブームを巻き起こしていった。
江戸の町には、既に喜多川歌麿(小西遼生)ら有名絵師達が才を競っていたが、写楽の絵は、他の絵師たちとは全く違い、上辺の美しさよりも、時にその醜さを晒す程の、その人物の中身をあぶり出すような、不思議な魅力があり、人を虜にするものだった。
江戸一番の花魁・浮雲は、「写楽に自分の絵を書いて欲しい」と、斎藤十郎兵衛
に頼むが、本当に十郎兵衛が写楽なのか疑念を持つ。
疑う人々は、十郎兵衛を、ある酒宴に誘い込む。そこには歌麿、大田南畝、鉄蔵(山崎樹範)、版元の鶴屋喜右衛門(池下重大)といった歴々が集っていたが、その酒宴は、十郎兵衛に皆の前で絵を書かせるための罠だったーーー。
十郎兵衛はどうなるのか、そして”写楽の正体”を人々が知る事になるのか…。
橋本さとしは、着流しの和服を粋に着こなし、人生の屈折を味わいながらもどこか楽天的な部分や暖かみのある、チャーミングな十郎兵衛を創りだしていた。
橋本の包容力のある存在感が、勢いと華やかさを与え、作品全体を牽引している。
中川翔子のおせいは、一途に絵を描く事を求める娘で、絵が得意な中川自身と重なり、おせいのファンタジックな存在感を見事に成立させている。また伸びのある歌声が美しい。
小西遼生の歌麿は、美しく色っぽく、憂いがあり、美人画で名を馳せた歌麿の、美学を持った雰囲気を申し分無く纏っている。
花魁・浮き雲の壮一帆は、ただただ美しく、ため息が出る。2幕では花魁が物語の大きなキーになっていくが、ドラマの展開を担ってゆくであろう、その存在感が光った。
与七(公開ゲネプロ時は栗山航)は、一見、何故ここまで十郎兵衛とおせいに尽くすのか、謎の人物だが、栗山の与七は、心にいちもつ持ちながら、健気に二人を支える姿が爽快だ。
鉄蔵の山崎樹範は、今回が初ミュージカルだが、確固たる演技力と、のちに葛飾北斎となる人物の若き日々を、エネルギッシュに演じ目が離せない。
おせいの過去を知る人物として、鉄蔵もまた、キーマンとなってゆく。
村井國夫、吉野圭吾はじめ、キャストの層が厚く、歌声も重層的で迫力がある。
今回、河原雅彦が新演出を担い、2010年版とは全く異なる、人間ドラマとして見応えがある作品となった。
立川智也による音楽も、前作から改変され、メロディアスさが耳に残る。
和物ミュージカルだが、音楽はボサノバやロックの要素もあったりと、無国籍的な雰囲気が入り不思議な時空間を生み出している。
さらに、森雪之丞による歌詞はその言葉の数々が見事に心に響き、観る者を作品世界に引込んでゆく。
そして何より、劇団☆新感線座付き作家でもある中島かずきの、彼だからこそ生み出せるドキドキハラハラしながらも胸が熱くなる世界観は、唯一無比のものだ。
新春から、感動と華やかさを感じに劇場に是非足を運んでほしい。
会見でキャストは、下記の様なメッセージを語った。
橋本さとし(斉藤十郎兵衛役)
この作品は、登場人物がしっかり書き込まれていて、舞台セットもとても素敵で、江戸の町の活気が伝わるような、皆さんが江戸の町に浸って頂ける舞台になると思います。しょこたんは、とても正直でまっすぐな本能で芝居をする方で、こちらから投げかければしっかり応えてくれます。おせいは難しい役ですが、本当にはまり役というか、日本の中でも、この子しかできないのではないかと思うほどです。僕は初演を8年前にやっていますが、今回の僕の十郎兵衛は、しょこたんのおせいから生まれてきたものです。意識して何かを変えようとしたものではないですが、しょこたんから色々と得て、お互い引っ張りあって、引き出しあって、できたと思います。2018年の演劇の見初めは、是非、『戯伝写楽 2018』で楽しんで頂きたいと思います。年頭に観る作品として決して裏切ることはないという自信があります。お客様と“戯伝写楽”の作品を皆様と共有できるために、僕ら一歩一歩心を込めて、毎回ベストでこの作品を送り届けたいと思います。是非いらしてください。
中川翔子(おせい役)
そうそうたる舞台のスターの皆様が集う中で、おせいを演じさせて頂くことが人生最大の挑戦です。難易度が高く、この試練を乗り越えた時に、もの凄い経験値があるに違いないとワクワクしています。中島かずきさんの作品に出演することも夢でした。森雪之丞さんの歌を歌うことも夢でした。これからの人生の大きなターニングポイントになる挑戦だと思います。私も(おせいのように)子供のころ一番最初に好きになったのは絵を描くことです。浮世絵という娯楽に対しての江戸時代の人たちの興奮、そして数百年の時を超えて日本人であれば誰もが知っている、世界中の人が知っている写楽、その絵に込められた情念や、どんな人が書いていたのか、歴史に詳しい方には歴史の有名人が沢山でてくるので楽しめますし、歴史に詳しくない方も、きらびやかな世界観、絵の中に秘められた情念を妄想して頂ける作品です。1月からとても縁起のいい作品だと思います。是非、沢山の皆様に見て頂きたいです。
小西遼生(喜多川歌麿役)
この作品は、日本人であれば知っているような、名前のある人物が多くが出てきます。けれど僕が思う一番の見どころは、やはり、おせいと浮雲という二人の女性の生き方とか、葛藤とか、何と向き合っているのかなどではないかと。男社会を描いていながら、そういう女性の描き方が面白いと思います。今回は、衣装がキラキラと華やかで、僕が演ずる喜多川歌麿は物語の中で、一番の成功者として出てきますが、その雰囲気も着物を着てようやく完成した感じです。自分だけでは出せない雰囲気をすごく出してもらえます。少し演歌を歌いそうな感じですが(笑)、すごく気に入っています。しょこたんとは2度目の共演ですが、今回は、皆でご飯に行く機会に、しょこたんも積極的に参加してくれて、普段男どもとしか飲んでいないメンバーが、しょこたんが加わるとちょっとドキドキする様子が面白かったです。(笑)
壮一帆(浮雲役)
今回、花魁を演じさせて頂きます。宝塚を退団して3年、そして“女優”となって2年になりますが、今さらながらに女心って難しいな、と思っている今日この頃です。
特に花魁というのは、女の業というものが、凄く背景にあり、表現する上で難しい部分もありましたが、周りのキャストの方々に力強いご助言も頂き、臆することなく舞台で表現をしていきたいと思います。舞台上の登場人物たちは、同時期に凄い人たちが集まっていますが、その史実に負けず劣らず、キャストも色んなジャンルの表現者が集まっていて、そういう混とんとした色が混ざっていることが、江戸の華やかな勢いある文化、雰囲気に凄くシンクロするなと思います。その辺がお客様にも楽しんで頂きたいです。さとしさんとは3度目の共演で、前回は人生初のキスシーンをご一緒して、今回は濡れ場がありますが(笑)、また一つ女優として階段を上ったなと思うので、おせいとは違う十郎兵衛との関係もしっかり表現できたらと思います。
公演は、東京芸術劇場 プレイハウスを皮切りに、久留米、名古屋、兵庫で公演する。
撮影:桜井隆幸