舞台『Shakespeare’s R&J』~ R&J / シェイクスピアのロミオとジュリエット~│木戸大聖&中田圭祐インタビュー

左から)中田圭祐、木戸大聖

Netflixドラマ『First Love 初恋』で注目を集めた木戸大聖が、シェイクスピアに挑戦する。といっても、シェイクスピアの戯曲そのものではない。アメリカの劇作家ジョー・カラルコが『ロミオとジュリエット』を脚色した舞台『Shakespeare’s R&J』に出演するのだ。演出するのは、第30回読売演劇大賞優秀作品賞を受賞した『ライカムで待っとく』の田中麻衣子。ジャニーズJr.内グループ・少年忍者の北川拓実と青木滉平、そしてモデル・俳優の中田圭祐が共演し、厳格なカソリックの全寮制男子校で暮らす学生4人が禁じられている『ロミオとジュリエット』を演じる姿を描く。駆け出しの頃から共に切磋琢磨してきた事務所の仲間である木戸大聖と中田圭祐に、本作に向けた想いを聞いた。

――5年前の公演には、お二人の事務所の先輩である矢崎広さんが学生1役で出演されていましたね。演出は今回と同じく田中麻衣子さんが手掛けられ、柳下大さん、小川ゲンさん、佐野岳さんがそれぞれ学生2、3、4を演じていらっしゃいました

木戸 前回の公演は実際に劇場で拝見しました。僕はその時点で『ロミオとジュリエット』を知らないまっさらな状態だったのもあって、難しいなというのが率直な感想でしたね。

中田 僕も観させていただきましたが、当時はこの作品を演じるなんて思ってもいなくて、ただただ『すごいなぁ』と。終わった後に楽屋にご挨拶に行ったとき、まだ汗をかいている先輩方の姿がとてもかっこよかったことが印象に残ってます。

――それをご自分が演じることになり、改めて台本を読まれたかと思いますが、いかがでしたか?

中田 僕が演じるのは学生4という、佐野さんが演られていた役。ティボルト(ジュリエットの従兄)と、ジュリエットの乳母、そして終盤ではロミオの従者であるバルサザー役も担当します。今でも覚えているんですが、佐野さんの乳母役がすごく面白くて、会場のみんなが笑っちゃうくらいだったんですよ。しかも作品内のコメディ要素は他にあまりないので、重い話の中でスパイスになる役だなと思ってます。

――そしてティボルトは、ロミオと敵対しているキャピュレット家の青年です

中田 ティボルトは乳母とは正反対で、危険で猛々しい感じがかっこいい役。大聖とも話したんですが、学生たちが演じるお芝居にはかなり幅があるんですよね。それはプレッシャーでもありますが、やり切った後には役者としての幅が広がっているんじゃないかと思います。

木戸 僕は学生2で、主にジュリエットを演じる役どころです。『ロミジュリ』はこれまで何度も舞台化や映像化されていますが、男の子4人が『ロミジュリ』を演じ切るというのが、この『R&J』という作品の面白さ。男性だからこそ見せられるジュリエットというのは、他の『ロミジュリ』にはない部分なのかなと思ってます。

――“男の子がジュリエットを演じている”という設定ですから、オールメイル(全配役を男性のみで演じる)作品ともまた異なるんですよね?

木戸 はい、なので女性役ということはあまり意識せずに演じられたらなと。性別よりも、恋に落ちていくということを大事にしたいんです。家柄とかそういうものではなく、相手を信じるところから真実の恋が生まれていく。そう考えると、女性だから・男性だからというのはあまり意識せずに“その人を信じる”というところを重要視して演じたいです。これまで演らせてもらってきた役柄は自分に近い部分が多くて寄せやすかったのですが、今回は今までで一番と言ってもいいくらい、自分から遠い役柄かもしれません。きっと僕自身の実生活や人間性だけでは補いきれない部分があると思うので、頑張らなきゃなという思いです。

――ところでお二人はこれまで面識はありましたか?

木戸 圭祐くんとは事務所のレッスンで一緒にやってきた仲なんですよ。

中田 他にも何人かいるんですが、5、6年くらい前から一緒にレッスンを受けてきた友達なので、大聖とこの作品を一緒に演れるのは嬉しいです。大聖がジュリエット役で僕が乳母役ということで、結構二人の掛け合いがあると思うんです。しかもお互い女性役での掛け合いになるので、なんだか感慨深いね、面白いねって。それにレッスンでは長い付き合いですが、同じ作品に入るのは初めてなので、そこの化学変化がすごく楽しみです。

――北川拓実さん、青木滉平さんとお会いになるのは?

木戸 今回が初めましてです。

中田 お二人とも、僕と大聖より年下ですよね。4人の中では僕が最年長になりますが、今回が初舞台の僕よりみんな経験豊富だと思うので、いろいろと勉強させてもらいたいと思ってます。

木戸 シェイクスピアは僕も初めてなので、年齢や経験値はあまり関係なく、4人フラットにやりたいなと。前回の舞台でも、4人が夜中の時間を楽しんでいる姿が印象的だったので、今回もそれを生み出すためにいろいろ話せる関係性を作れたらと思います。

――お二人はお互いにどんな印象をお持ちですか?

木戸 圭祐くんは面白い人。感性や人柄が本当に素敵だし、僕が欲しくても絶対に真似できない、人を笑顔にする力を持っている人です。レッスンでも、先生やみんなが「おい、圭祐!」なんてつっこんだりするんですが、本当にみんなが楽しそうで。僕のほうが1歳下ですが、みんなに愛されてかわいがられる力があって、そこは本当にうらやましくなります。

中田 僕から見た大聖は、素直で、真面目で、ピュアな人。それこそ大聖が演っていたドラマ『First Love 初恋』の役そのまんまって感じで、あれを観たときはもう「大聖だ!」って思いました(笑)。ああいう、優しくてまっすぐな男というイメージがありますね。

――本作は男子高校生4人が『ロミジュリ』を演じることに熱中していく物語です。お二人は高校時代に仲間たちと熱中したことはありますか?

木戸 僕は部活に明け暮れていた学生生活でした。結構厳しいバスケ部に入っていたんですが、部員が少なかったので「みんなで乗り切ろう!」という仲間たちの輪の力が強くて、部活以外の時間も集まってましたね。何をするわけでも、どこに行くわけでもないんだけど、散歩したりするだけでも一緒にいる時間がすごく楽しくて。部活がきつかったからこそ、オフのときの楽しさをよく覚えてます。

中田 僕の高校は大学との一貫校で受験がなかったので、3年生のときはほぼ楽園状態だったんです(笑)。部活動もどんどん引退して時間もできるので、本当に友達と仲良くなって、いつも男子7、8人くらいのグループで遊んでましたね。毎晩誰かの家にみんなで泊まって、朝になったらみんなで学校に行き、終わったら他の誰かの家に行き……という感じで(笑)。四六時中、友達と一緒にいたので、この4人の感じはちょっとわかる気がします。

――昼も夜も一緒にいるという意味では、寄宿学校で暮らす彼らと同じですね

中田 そうなんですよ。だから本作でもあの学生時代の感じを出したいなと思います。いい意味で無責任で、未来があって、すべてが新鮮で、勢いがあって。そういう男子学生の日常らしさと『ロミジュリ』という偉大な作品が、化学変化を起こしたら面白いなと。そのためにも4人のチームワークを作って、お互いに助け合って、いろいろ考えながらも最終的には頭を空っぽにして、役としてその場にいられたらいいなと思ってます。

木戸 シェイクスピアと聞くと難しいと思うでしょうし、実際に難しいとは思うんです。でも極論になってしまうかもしれませんが、言葉一つひとつの意味がわからなかったとしても、この学生たち4人が相手に伝えたい想いだけでもお客様に伝わったらいいなって。それを言葉ではないところで見せられるのが、舞台や役者の芝居の力だと思うので、僕も言葉に頼らないようにしようと思ってます。そして4人の無邪気さをベースに、その子たちが『ロミジュリ』を演っていること、そして自分自身と役との境目がわからなくなっていく彼らの様子を観てもらえたら嬉しいです。

取材・文/熊倉久枝

【プロフィール】

木戸大聖(KIDO TAISEI/キド タイセイ)
1996年生まれ。福岡県出身。テレビ、映画などで活動し、Netflix オリジナルシリーズ「First Love 初恋」(2022年)で注目を集める。主な舞台作品は音楽劇『どうぶつ会議』(2019年・田中麻衣子 演出)、『日本人のへそ』(2021年・栗山民也 演出) 。

中田圭祐(NAKATA KEISUKE/ナカタ ケイスケ)
1995年生まれ。神奈川県出身。第29回メンズノンノモデルオーディショングランプリ。2014年よりMEN’S NON-NO 専属モデル。2016年より俳優としても活動。ドラマ「僕らのミクロな終末」(2023年)にてW 主演、映画「さよならモノトーン」主演(2023年秋公開予定)。今回が初舞台となる。