『SHINE SHOW! シャイン・ショウ!』小越勇輝インタビュー

8月18日からシアタークリエで上演される『SHINE SHOW!』。 舞台はとある複合オフィスビルで行われる、会社員たちが歌唱力を競う夏のカラオケ大会。それぞれの思いを抱える出場者と関わりながら、トラブルを乗り越えて無事最後まで大会を遂行しようとする運営担当の若手会社員・加瀬貴久を演じる小越勇輝さんに話を聞きました。

 

――最初に『SHINE SHOW!』のお話を聞いたときの気持ちは?

純粋にうれしかったです。東宝さんの舞台は憧れで、ずっと出たいと思っていたので、ひとつ夢がかなったなと。なかでもシアタークリエにはたびたびお芝居を見に行っていたんですよ。自分がこれまで客席でいろんなものを受け取ってきた、その場所に立って演じられることがとにかくうれしくて。

 

――シアタークリエへの思い入れもあるんですね。 

シアタークリエのあたりって、たくさん劇場があって、すごくすてきな雰囲気じゃないですか。中学生の頃、『仮面ライダーキバ』で共演した新納慎也さんの舞台を見に行ったりして、「こんなところに立ってみたいなあ」とずっと感じていたんです。そこにとうとう自分も出る側として通えるのは、やっぱり心躍ります。

 

――今回の台本を読んでの感想は?

若手の会社員役は少しずつ増えてきましたけど、僕が今回演じる加瀬はピンチのときもつねにあっけらかんとしている人物で。ちょっと最近の子っぽい感じもあって、面白い役柄だなと思っています。お話は、とにかくドタバタしていますよね(笑)。登場人物が個性豊かで、それぞれにカラオケ大会に対する思いや挑戦する理由があって。その人たちと関わっていくことで生まれるものがあると思います。笑いもふんだんにある作品だと思うので、自分もチームの一員として、その作品世界のなかでどう生きられるか、遊んでいけるかがとても楽しみです。

 

――小越さんはほんとうにたくさんの人と関わる役柄ですもんね。

そうですね。すごくたくさんしゃべっているので「(セリフを)とばせないな」というプレッシャーはあります(笑)。

 

――本当にバラエティに富んだキャストの皆さんが揃っていますが、小越さんは全員と初共演ですよね。

そうなんです。いまやっているお芝居(『HUNTER✕HUNTER』)は若い世代が多くて、自分より年下もたくさんいるんです。でもこの作品はほとんどみなさんが先輩なので、これまでやってきた舞台とはまたぜんぜん違った雰囲気だろうなと思います。きっと役に対するアプローチもさまざまで、たくさんの発見や勉強がありそうです。みなさんの歌を近くで聞けるのも本当に楽しみで。

 

――作品にちなんで、カラオケ大会やオーディションの思い出は何かありますか?

僕、元々歌もダンスも苦手で、好きじゃなかったんです。昔から歌とダンスのレッスンからは逃げてきたし、「なんで歌えないし踊れないのに人前でやらなきゃいけないんだ!」と思い続けてきた。友達とカラオケに行っても、自分では歌わなかったくらいで。

 

――そんなに。

でも、初めてのミュージカル(『テニスの王子様』)のオーディションで、当然歌とダンスがあったんですね。ダンスはその日に振り付けをしてもらって、それを踊るというもの。もちろん振りなんて簡単には覚えられなくて、横の人たちを見ながら必死にやっていたんです。それが1週間後の二次オーディション、2週間後の三次オーディションと進んでいくにつれ、前に覚えた振りをなぞったり、新たに付け足された振りを踊るのが「なんか面白いかも」と思えてきたんです。いざ出演が決まって、歌とダンスにしっかり触れたことでその魅力をさらに知りました。いまは、得意とは言わないけれど、楽しいですね。カラオケに行ったら歌うようにもなりました(笑)。

 

――苦手だったものがオーディションを通じて好きになっていったんですね。ちなみに、カラオケでは何を?

ああ、なんだろう? RADWIMPSさんですかね。中学時代に聞いていたような曲を。

 

――では、この作品の中に登場する、ふだんはサラリーマンとして働きながら、年1回のカラオケ大会に出るような人たちのことは理解できそうですね。

あ、でも……。僕はいま人前に出るお仕事をさせていただいているから歌にもダンスにも面白みを見出すことができましたけど、この仕事をしていなかったら、作中の人のように「年に1回人前に出て歌う!」みたいなことはできなかったかもしれません。いま、SNSも発達していて表に出る仕事をしていない方も自分から発信されているじゃないですか。それはすごいなと思いますけど、僕はたぶん、いまの職業についていなければしないと思うんですよ。

 

――あまり自分を主張したり、表現したりはしないタイプですか?

そうですね。僕自身はすごくつまらない人間でなんですよ。ユーモアも、笑いのセンスも本当にない。

 

――そんな……。

でも、お芝居って脚本と演出があるので、それに助けてもらって、役を通じてどれだけ面白くできるかを頑張りたいと常々思っています。僕、すごくネガティブで、いつも「ダメだダメだ」と思っているんですよ。

 

――「今日はできた!」というときはないですか?

うーん、ないかもしれない。「生きづらくない?」とか言われますけど(笑)、ずっとこうなので、自分では慣れていて。むしろ「ダメだ」と思わなくなったら危険かもしれない、と思っています。毎回そう思っているから頑張れるんじゃないかな。「今のままじゃダメだから、もっとやらなきゃ」という気持ちでこれまでやってきたので。自分のネガティブさは弱さでもあるけど、強さにもなっているのかもしれません。

 

――なるほど。ネガティブだからこそ頑張れるわけですね。小越さん、ここ数年は映像のお仕事が多くなっていましたが、今年は久しぶりに立て続けに舞台出演されることになりますね。

そうですね。去年出演した舞台はセリフのないダンス演劇やリーディングアクトだったので、本当に久しぶりで。でもやっぱり『テニミュ』で歌やダンスの魅力とともに舞台そのものの楽しさを知ったので、舞台はずっと続けていきたいと思っています。

 

――舞台の魅力はどんなところにありますか?

キャストの皆さん、スタッフの皆さんとチームでつくっていくところ。そして本番、舞台に立ったとき、その空間と、来てくださったお客さんとによって完成するところ。その一体感、空気感はとても魅力的ですよね。

 

――たしかに。『SHINE SHOW!』での小越さんを楽しみにしています。

ありがとうございます。僕も楽しみです。

 

取材・文:釣木文恵