間もなく開幕!ピンク・リバティ『点滅する女』座談会│「どこか曖昧な、いろんな感情がある作品」

写真左から)水石亜飛夢、岡本夏美、森田想、山西竜矢

山西竜矢が脚本・演出をつとめる演劇ユニット「ピンク・リバティ」の新作公演『点滅する女』が6月14日(水)に東京芸術劇場 シアターイーストにて開幕する。

ピンク・リバティにとって1年半ぶりの新作公演で、東京芸術劇場が若手劇団とタッグを組む上演企画「芸劇eyes」の一作品でもある本作は、5年前に長女を亡くした家族に訪れたある夏の一幕をブラック・ユーモアを交えて軽妙に描き出す作品。作・演出は山西。森田想と岡本夏美がW主演を務め、水石亜飛夢、日比美思、斎藤友香莉、稲川悟史、若林元太、富川一人、大石将弘、金子清文、千葉雅子が出演する。

稽古場にて、山西、森田、岡本、水石に話を聞いた。

演劇では、役者に対して作品をつくりたい

――稽古が進んでいかがですか?

水石 改めて「お芝居って楽しいな」ということを感じさせてもらっています。僕にとってすごくタイプな作品で、作風も演出も、構成も空間のつくり方もすごくツボで。こんなに毎日笑っているのも久しぶりな感じがします。楽しくお芝居に向き合えています。

森田 私はこれが初舞台で、毎日「同じ作品の中で起きること」の練習をするというのが初めての経験です。自分に(演劇が)合っているのかどうかわからない、というところから始まったのですが、今はおもしろいと思っています。

――どういうところがおもしろいですか?

森田 映像はその瞬間に出すものが世に出る仕事ですが、私は家に帰ってやり直してみることも多かったので。演劇は、稽古でいくらでもやり直せるし、本番中でもより良くできるのだとすれば、それはおもしろいなと感じています。

岡本 私の役はここ数日でいろいろなことが変わったのですが、これまで重ねてきたものを引き継いで新しい段階に差し掛かっている感じがすごくします。こういう変化があることがおもしろいです。

――作・演出である山西さんはどう感じていますか?

山西 役者さんは最初からおもしろいです。自分が「好きやな、この人の芝居」と思う方に出てもらう、というのは毎回心がけていることでもあります。そのみなさんのお芝居が脚本や演出と組み合わさって一個の大きな塊になる、ということに関してはここからが大事やなって。ちょうど昨日、みんなで話していました。

岡本 そうですね。

山西 特にこの姉妹(森田・岡本)は今すごく演技の演出の方向性が変わっているところで。今回、メインの二人は、作品全体がある程度のところまでいかないと、どういう芝居が正解になるのかあまり掴めないような役どころだから。今は大変やと思います。

岡本 そうですね、まずはまわりを固めるというようなところから稽古が始まっていったので。本当にやっと始まったなという感じはしています。

森田 うん、たしかにね。

山西 これは僕の場合ですが、映像を撮るときにはあまり起きないことで。映像は自分がやりたい物語を先行させることが多いので、ストーリーを背負う主役を軸に撮影していく。だけど演劇だと役者さんに対して作品につくることが多い。そういう手順の違いがあって、物語を背負う二人のことが、最終段階でようやく自分の中で整理できています。

――「役者さんに対して作品をつくる」っていうのは?

山西 自分の演劇企画の場合は、事前にざっくりとしたあらすじはつくるけど、脚本はキャストが決まってから書きたいというのがあって。森田ちゃんがやるからこうしたい、岡本ちゃんならこういう台詞があったほうがいい、亜飛夢くんやったら、ふふっ、こうしたらおもろいかなとか。

水石 笑ってる(と言いながら、机を指でなぞる)。

岡本 今なにしたの?

水石 「笑」って書いてた。

一同 (爆笑)

山西 やっぱ亜飛夢くんがこういう不思議な人だってことも込みで書きたいので(笑)。

写真左から)水石亜飛夢、岡本夏美、 森田想、山西竜矢

役を演じてみて思うこと、こういう役になった理由

――そうやって書かれた役柄は、演じていてどうですか?

水石 よく「ある目的に対して障害が強ければ強いほど、その芝居が強くなったり輝いたりする」と言われるんですけど、僕の場合は、(役として)なにかとなにかに挟まれているときが一番がんばれるというか……空回りが似合うというか……。

岡本 うん、そういうお芝居が魅力的。

水石 そうなんだなっていうのは周りの評価からもわかってきました。でもピンク・リバティさんの作品に参加するのは初めてなのに、僕が演じる洋介はまさにそんな感じで書かれていて。こんなにしょっぱなから見抜かれちゃう僕は大丈夫なのかなと思いつつ(笑)。

岡本 私は随分前に亜飛夢くんと同じ現場だったことがあって、そのときは好青年のイメージだったんです。だから今回印象が変わって、山西さんに「ご存知だったんですか?」って聞きました。

――実は私も過去に取材させてもらったとき、好青年のイメージでした

山西 亜飛夢くんと最初に会ったのはワークショップで、そこで「ドガとかモネとかそういう短い名前のやつ」という台詞を言ってもらうことがあったんです。その時、(水石が)一人だけ「ドガ~とか~モネ~とか~」ってすごく不思議な台詞の言い方をしてて。

森田 言いそう(笑)。

山西 それもわざとやってる感じでは全然なかった。それでフィードバックのときに「変わってるね」って言ったんです。そしたらもう全然意味がわからない、みたいな顔してた(笑)。それでおもしろい人やなっていう印象があって。

――その水石さんにはどんな期待をして、洋介という人物を書かれたのですか?

山西 みんなが期待する姿からちょっとズレた感覚がある人が虐げられている状況っておもしろいなと思って(笑)。亜飛夢くんに似合うんじゃないかなとも思ったし。

水石 演じていて楽しいです。僕は遊びがあるほうが好きなので。

――森田さんは、鈴子という役をどう感じていますか?

森田 のみ込みやすいです。自分以外の台詞も入ってきやすいし、全体としてすごく掴みやすい印象があります。あと、自分を消すのではなく、混じらせて役をつくることが楽しくできるというか。

――混じらせるというのは?

森田 自分の癖を消す必要がある役と、そうしなくていい役というのがあるなと思っていて。それで言うと鈴子は自分を消しきらずにいける役です。もちろん、まんまでできるような役でもないので、台詞だったり家族との関わり方の中で出し引きするという感じなのですが。

山西 ほんとそうだね。まんまでは難しいっていうのはやっぱり鈴子は物語を背負ってるからで。他のキャラクター以上に余白が少ないからっていうのがあると思う。森田ちゃんは頭がいい方で、

森田 よっしゃきた。

――(笑)

山西 普段はちょっと違うんですけど。

岡本 小生意気ギャル担当なんだよね。

森田 小生意気じゃなくて生意気ギャルです。

一同 (笑)。

山西 初めて森田ちゃんとお会いしたときに、別に本当はそうじゃないんだろうけど、機嫌が悪そうっていう印象があったんですよね。それがおもしろいなと思って。

森田 (笑)。

――その印象はどこか鈴子とも重なりますね。岡本さんが演じる千鶴はどうですか?

岡本 ちょうど今、千鶴のキャラクター性みたいなものを試しているところですが、私だから「明るくしていてもこう見える」のような、そういった部分でもキャラクターがついていくおもしろさを感じています。役づくりに関しても普段は、衣装が決まって、メイクが決まって、役が決まっていく、というような順番が多いですが、今回はまず役として立ってみてからなんです。オリジナル作品の楽しさとありがたさを感じます。

――個人的には、岡本さんの声が役と合ってるなと感じました

岡本 そうですね。私は声に特徴があると言われることが多いですが、ありのままの声で演じられることもすごく少ないんです。

山西 それ言ってたね。

岡本 かわいらしい役だと高い声でお芝居をしますしね。今回はそういうことを考えずに演じられるというのはあります。

山西 声が合ってるという話とも近いんですが、みなさんの最初にお会いしたときの印象みたいなものと役柄が合いそうかはすごく考えます。キャスティングのときは特にそれを思い返しますし。

――芝居というよりも佇まいみたいな?

山西 はい。それで言うと岡本ちゃんは、ワークショップって知らない人同士が集まるので、大体は会場がシーンとしているんですけど、その空気の中で「あ、○○じゃーん! ひさしぶりー!」みたいな。

一同 (笑)。

山西 それで「知り合いなんですよ!」って僕に言ってて。よくあの絶妙な空気の空間でこんな風にいられるなと……(笑)。

岡本 それはすごく久しぶりでうれしかったので(笑)。

山西 そのイメージが強烈にあったので。本人は空間の空気もわかっていたと思うんですけど、それを無視できる人なんですよね。そういう人じゃないと千鶴を演じるのは難しいだろうなと思いました。けっこう大変な役なので。でもこれは、みなさんそうです。お芝居が上手な方はたくさんいますが、「自分のこの作品のこの役にパチッとハマりそうな人」っていうのは割とお芝居以外のところ、雰囲気とか言動とか、けっこう関係ある気がします。

いろんな感情がある状態って一番人間的だと思う

――山西さんの演出は受けていかがですか?

水石 言葉遣いが秀逸ですごいなと思っています。山西さんがひとつ動きをつけると一気に雰囲気が変わったりもして。それはやっぱり山西さんの今までのご経験……。

森田・岡本 ふふっ。

山西 ご経験って……すごく敬ってくれるね(笑)。

水石 (笑)。でも本当に、俳優もやられて、芸人もやられて、演出家も、脚本も書いて、映像もってマルチにやってこられたことが作品づくりにつながっているんだろうなと感じました。山西さんの演出を受けたり見たり聞いたりすることで、自分にない考え方やアプローチを勉強できています。

森田 あと、一緒に動いてくれるのがありがたいなって思う。言葉で演出をつけるだけじゃなくて実際にやって見せてくれるので、そこで山西さんが思い描いている世界が見えたりするし。

岡本 私は山西さんにいただいた印象や言葉を具現化していく作業がとてもたのしいです。山西さんって考えてるときに……。

森田 白目剥くよね。

山西 (笑)。

森田 白目剥くでしょ?

一同 (笑)。

岡本 白目も剥くけど(笑)、山西さんが「これ!」ってなってるときに黒目がキューっとちっちゃくなる瞬間があるんですよ。

森田 あるね。このくらい(と、すごく小さい黒丸を指さす)。

岡本 (笑)。

森田 (山西が出演した映画)『賭ケグルイ』を観た翌日にそうなってるのを見たときは怖かった。

一同 (笑)。

岡本 伝えたいこととか改善したいものに対して200%になるときの眼力はやばい。私はそういう山西さんを信頼しているし、ありがたいなと思っています。

――最後に山西さん、開幕した頃にこの作品がどうなっていたらいいなと思っていますか?

山西 この作品は、笑えるシーンもあるし、泣けるシーンもあるし、観ていてしんどいシーンも、きれいなシーンも、間抜けなシーンもあると思っていて。いろんな感情をひとつの作品の中で感じられるはずです。単純に悲しいとか、単純に怖いとか、それはそれでおもしろいんですけど、どこか曖昧な、いろんな感情がある状態って一番人間的だと思うんですよ。『点滅する女』はそういう作品なので、いろいろな方に楽しんでいただけると思います。ぜひ幅広い層の方に観に来ていただきたいです。

写真左から)水石亜飛夢、岡本夏美、森田想、山西竜矢

取材・文/中川實穗

写真/高木陽春