ゲネプロレポート
『なめ猫 on STAGE』、ステージ『エロイカより愛をこめて』、LIVEミュージカル演劇『チャージマン研』など、昭和の名作をモチーフにした舞台をプロデュースし、多くのファンを魅了しているLol.が手掛ける作品『トレンディは突然に』。本作のテーマとなっている“トレンディドラマ”とは80年代当時の若者を中心に視聴者を虜にし一大ムーブメントを起こしたドラマの総称である。トレンディドラマのあるあるを絶妙に取り入れつつも新鮮ですがすがしい現代×昭和(トレンディ)のニュートロ青春群像劇だ。
脚本は岸本鮎佳(艶∞ポリス)が務め、演出をキムラ真(ナイスコンプレックス)が担う。
7月13日から18日まで東京・シアターサンモールにて公演がスタート。初日の13日にゲネプロが実施された。
時代は現代。令和の普通の大学生・桜庭虹斗(阿部快征)と亀井祐也(宇野結也)は、ふとしたことからなぜかトレンディが通常運転の香月ケンジ(杉江大志)や金井ハル(瀬戸祐介)と出逢う。人と衝突することを避けてきた虹斗とは反対に、ケンジ達は将来のことで本気で言い合い、突然殴りあってしまうほどの友情こそが当たり前だった。さらに、虹斗と偶然ぶつかって出逢った、純粋系の白崎ミユキ(青木志穏)とその友達のちょっと気の強い水島カナ(松島志歩)も、ポップでキュートなトレンディ女子たち。しかしお互いの第一印象はサイアクで・・・。
虹斗と亀井はリアルにトレンディな彼らの言動に戸惑いながらも、いつしか仲間として、毎日馴染の場所に集まり、事あるごとに乾杯するようになる。一緒に過ごす内にケンジとミユキはお互いを意識し始め、虹斗もまたミユキに淡い想いをよせるのだった。
そんなある日、アメリカからケンジの元カノの夏目エリカ(護あさな)が帰ってきたことで、男女7人の恋の行方はますますわからなくなり・・・
令和の現代にとっては違和感があるほどのドラマティックな展開や、熱すぎるほどの友情がなぜか笑いと涙を誘う。独特なセリフ回しや間の取り方が、いつの間にかクセになっているから不思議だ。キャスト陣のインタビューでも何度も聞かれた「トレンディとは何か?」という問いの答えを、演出のキムラ氏と共に見事に掘り当てていた。
一瞬バカバカしく思えてしまうほどのオーバーな演技も、気が付けば夢中になって引き込まれる。しかも、コミカルなだけではなくどこか胸躍り高揚感を覚える自分自身に驚かされる。これは現代の舞台にはない中毒性がある。
トレンディドラマを知らないZ世代もど真ん中の40~50代も、驚くほどすんなり世界観を受け入れることができ、間違いなく楽しむことができるだろう。なつかしさと新しさを再発見し、新時代のエンターテイメントをぜひ劇場で体感してほしい。
公演時間は途中休憩なしの約2時間。日替わりゲストとのアドリブシーンも見どころのひとつだ。また、終演後のカーテンコール時に撮影OKシーンがあり、心から観客に楽しんでほしいという想いが伝わってくる。思わず声を出して笑い、素直なリアクションと大きな拍手で彼らの想いに応えたくなる。正直なことを言うと“もう一度観たい”と思った作品だった。
出演者のコメント
【杉江大志さん】
いや~、なんとか出来上がったな~!という感じがすごくしておりまして、トレンディ世代の方たちもトレンディというものを通って来てると思うんですけど、じゃあ「トレンディなことしてください」って言われたら「何すればいいの?」ってなるじゃないですか(笑)。それを僕たちは稽古の中で1ヶ月間模索して精一杯この作品に組込んできたつもりです。「トレンディってなつかしいけど実際なにかなぁ?」って思われた方はぜひ劇場に遊びに来ていただいて、トレンディをあびて帰ってほしいなと思いますし、あの時代のよかったこと素敵だった部分みたいなものをもう一度思い出してもらって、今の時代にもちょっと必要なことなんじゃないかなと思うこともありますので、思いっきり笑って最後にはちょっとだけ感動して帰っていただけたらなと思います。我々最後まで精一杯作品をお届けできるように頑張りますので応援よろしくお願いいたします。
【阿部快征さん】
僕の役柄は、観に来てくださるお客さまと一緒の状態で「トレンディっていうのは何か?」というのを今横にいる先輩たちに見せてもらって、お客さまと同じ目線で“トレンディ”を楽しんでいきたいなと思いますので、ぜひ身構えずに純粋に見たものをそのまま楽しんでいただければなと思っています。ぜひとも一緒にトレンディとは何かを知っていただければと思います。
【宇野結也さん】
楽しくて愉快な作品が出来上がりました!今皆さんに足りていないのはきっと“トレンディ”です(笑)。毎日楽しいけどなんかものたりないな、なんか毎日ちょっとやるせないなっていう皆さん、劇場に来てください。答えがここにあります!(笑)
【瀬戸祐介さん】
僕自身、トレンディというのは日本の文化が作り出した宝だと思っていますので(笑)、その宝をこのメンバーでまたもう一度磨き上げて現代に活かせるということをすごく楽しみにしていますし、皆さんにも楽しんでいただけたらなと思っています!
【青木志穏さん】
今の時代はSNSが発達したりとか、ご時世的に人と会うのをためらっちゃったりとかっていうのがあると思うんですけど、それで忘れてたことをこのトレンディで、“会う”ことでぶつかり合ったりとか会うことで生まれるコミュニケーションをもう一度取り戻したいし、これを見てくれたお客さまにもあったかい気持ちを思い出していただけたら嬉しいなと思います。
【松島志歩さん】
今緊張しているんですけれども、本当に素晴らしいカンパニーの皆さんと日々試行錯誤して“トレンディとは”について今日まで考えて来たので、頼もしい仲間たちと一緒に素敵な作品が皆さまの心に届けばいいなと思っております。
【護あさなさん】
「トレンディって何?」って思うかと思うんですけれども、今の時代にたぶんトレンディを見て元気を出していただける方もすごく多いと思いますので、ぜひ楽しんでご覧ください。
写真:鏡田伸幸 文:トクモトショウコ