劇団☆新感線の最新作『天號星』は、古田新太と早乙女太一が“入れ替わる!”奇想天外チャンバラ時代劇
徹底したエンターテインメント精神で王道を突っ走る劇団☆新感線、2023年秋に披露する最新作は“いのうえ歌舞伎”『天號星』。元禄時代、大江戸八百八町を舞台に繰り広げるのは、一風変わった“入れ替わり”本格バトル時代劇だ。いよいよ稽古がスタートするタイミングの7月下旬、都内某所にて製作発表会見が行われた。登壇者の顔ぶれは座付き作家の中島かずき、主宰・演出のいのうえひでのり、出演者からは古田新太、早乙女太一、早乙女友貴、久保史緒里、高田聖子、粟根まこと、山本千尋、池田成志。ちょうど前日が顔合わせ、本読みだったこともあり、既に和気藹々の空気感のなか、会見は始まった。それぞれの主なコメントを、ここでご紹介する。
<作・中島かずき>
これまでに何度も『必殺』シリーズのパロディをやるたび、新感線では結果的に“ネタもの”になってしまっていましたが、今回はそれとも違った形で、闇の殺し屋組織の派閥抗争みたいな話を池波正太郎先生風の世界観の中で、入れ替わりの話をやろうみたいなことですね。もちろん新感線ですから、いつもの感じで思い切り楽しめる芝居にできたらなと思っております。そういう意味では、古田くんと太一くんが入れ替わるところが今回の芝居の一番の見せ場ですね。さらに若い客演の方たち、友貴くんと千尋ちゃんの立ち回り、そして久保さんの歌も魅力があると思いますので、そこもぜひ楽しみにしていてください。
<演出・いのうえひでのり>
久しぶりに早乙女兄弟が新感線の舞台に揃い、去年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』のトウ役・山本千尋さんも出るとなれば、これはもう間違いなく本格的なチャンバラが見せられる芝居になるだろうなと思います。さまざまな趣向を凝らしたチャンバラを披露しますのでご期待ください。物語としては“入れ替わり”という映画やドラマでは手垢のついているシチュエーションですが、ここではいわゆる裏稼業の元締めである古田と、その命を狙う殺し屋の早乙女太一くんが入れ替わることになりますので、それによって起きるドタバタやオモシロ、またちょっとスリリングなところなどが見せ場となるかな、と。加えて久保史緒里ちゃんには乃木坂46では歌わないような、新感線ならではのゴリゴリなテイストの曲も歌っていただきたいと考えています。出演者が客席にもガンガン出て行くような、お客さんも物語世界に取り込むような、新しい芝居にしたいと思っています。
<表向きは口入れ屋、裏では引導屋の主人である藤壺屋半兵衛役・古田新太>
みなさん、楽しそうに今回はチャンバラだチャンバラだと言っていますけど、オイラは一向に戦う気になりません。だって友貴なんて、俺の娘より年下なんですから! そんな相手となんで戦わなきゃいけないの? それに太一と入れ替わるなんて不自然だろう? オイラが太一になって戦うってどういうことだ? と、文句はいっぱいあるんですけど(笑)、しーちゃん(久保)とちーちゃん(山本)とは初めてお芝居をやるのでそこに関しては大変楽しみです。
<冷酷無比な殺し屋、宵闇銀次役・早乙女太一>
4年ぶりに新感線に出演させていただきます。僕自身、新感線は子供の頃からの憧れの対象でもあり、それこそ古田さんの殺陣を映像で見ては参考にしたりしていたので、勝手に師匠のように思っていました。あれから10何年かが経ち、そろそろ古田さんの仕留め時かな、と思っています(笑)。前回ご一緒した時(『けむりの軍団』2019年)はちょっと仕留め損ねたところがあったので、愛をもって今回こそは仕留めたいなと思っております。
<銀次の宿敵で荒くれ者、人斬り朝吉役・早乙女友貴>
僕は昨年の『薔薇とサムライ2』にも出させてもらっていて、ここ5年間毎年一作品のペースで新感線に出ているので、こんなに出させてもらっていいのかなとも思っているんですが。今回は念願の古田さんと早乙女兄弟とでやらせてもらえるということで本当に楽しみです。前回は僕、古田さんとは戦えなかったので、今回ようやく刀を交えることができます。だけど昨日本読みだったんですが、古田さんと戦う場面のト書きに「2、3手」と書いてあったので、なんとか増やしてもらってもうちょっと戦いたいなという気持ちです。頑張ります。
<歌って踊って神のお告げを伝える巫女、神降ろしのみさき役・久保史緒里>
今回初めて参加させていただきます。これまで劇団☆新感線さんのいろいろな作品を私は客席で拝見していまして、そのたび直に浴びたエネルギーがそのあと何日間も頑張れる原動力になっていたんです。まさかその劇団に自分が参加できるとは思ったことがなかったので、出演のお話を聞いた時には驚きでいっぱいでした。昨日初めて本読みに参加させていただいたら、とても温かい空気の中でみなさんが迎え入れてくださったので、これからもっともっと頑張っていかなければと改めて気が引き締まりました。乃木坂46として活動している時とはまた違う自分をお見せできたらな、と思っています。すごく引っ込み思案で人見知りなんですけれども、とても人なつっこい性格でもありますので、ぜひみなさんと仲良くさせていただけたらなと思います。
<みさきの母親で諸国を流れ歩く渡りの占い師、弁天役・高田聖子>
いつになく今回は、すごく年齢差を感じるカンパニーだと思っています。昨日の本読みでも、そのことをすごく感じました。劇団員の村木よし子さんから帰り道で「聖子さん、声、老けたな。お母ちゃんの声になっていたよ」と言われまして。確かになあ、と思いました。久保さんと山本さんと太一くんと一緒に話すシーンが多かったから、みんなフレッシュな声ばかりで声が老けていることをより感じてしまったのかもしれません(笑)。チャンバラに関しては、今回私はまったく戦うことはなさそうですので、どうにか無事に最後まで逃げ切りたいと思っています。
<材木奉行の明神甲斐守忠則役・粟根まこと>
今回は材木奉行で、それもわかりやすく悪徳奉行ですね。池田成志さん演じる悪徳商人と悪だくみをします、というかわかりやすく悪だくみしかしていません。他の人との絡みがほとんどなく、池田さんと一緒の場面ばかりでとても寂しいですね。意外と、わかりやすい悪だくみをしているのに悪いことを実際にやるシーンがあまりありませんので、あの人は悪い人なんだなと何とか思わせるように努力しようと思っております。
<半兵衛の娘で腕の立つ引導屋、早風のいぶき役・山本千尋>
私は上京して最初に観た舞台が劇団☆新感線さんの『髑髏城の七人~Season鳥』(2017年)で、その時にとても衝撃を受け、本当に感動しまして。それ以来ずっと「いつか劇団☆新感線に出たい」と言い続けてきましたが、今回ようやく叶えさせていただくことになりました。『髑髏城~』の沙霧に憧れて女優業をしてきたようなところもあるんですが、今回演じさせていただく早風のいぶきも気が強いけれどとても心の優しい女性として中島さんが書いてくださっていますので、誠心誠意頑張りたいと思っています。
<明神甲斐守ときな臭い関係の材木問屋の主、白浜屋真砂郎役・池田成志>
先ほど「新感線最多出演を誇っている」と紹介していただきましたが、私は決して誇ってなどいませんので。念のため(笑)。今回も本当は僕、“ニセ太一”の役で出たいと言ったんですけれども一向にその希望は叶いませんでした。おまけに見せ場がチャンバラですから、私の出番はなく。果たしてどうやって稽古をしようかと思って、今探っているところです、よろしくお願いいたします。
さらに会見の後半では、この日のMC・中井美穂が代表して各自にインタビューを行った。
――まず今回、古田さんと太一さんが入れ替わるということなんですが、その話を聞いた時の正直なお気持ちを。
古田 オイラが太一の動きをするのは嫌なので、太一がオイラの代わりにガンガン戦って、この間の『薔薇サム2』の友貴の時と同じパターンになればいいのにと思うんですけどね。
中島 実は最初、それも考えたんですよ。「古田と池田くんと聖子さんが戦う時だけチェーンジ!って、太一と友貴と千尋さんに入れ替わるというのはどう?」とプロデューサーに提案したのに、ダメだと言われまして。
古田 えー、それが良かったなあ(笑)。
――入れ替わると聞いて、太一さんはどう思われましたか?
太一 それはマズイな、と思いましたね。古田さんになるということは、とりあえず毎日お酒を飲んで、不健康な状態で仕事をすることを心がけなきゃいけなくなるわけですから(笑)。
古田 そうじゃないと、あの味は出せないからね(笑)。いや昨日の本読みでオイラもちょっと探ってみたりもしたんですけど。そもそも半兵衛という人が表向きの態度と裏側とで二重人格みたいになっているもんで、そのどっちに合わせようかなみたいな感じはあるよね。
太一 はい、確かに。
古田 そして太一の役、銀次はすごく乱暴者なので、自分的には若干の若づくりをすればいいかなあ?ってところでしょうか。
太一 僕も、少し喋り方などはやはりどこかしら寄せていったほうがいいかなと思っていました。まあでも、稽古が始まったらいのうえさんの演出も入るでしょうし、そこからやっていけたらと思います。
――早乙女兄弟が新感線に揃って、古田新太さんと一緒に出るということは念願だったとのことですが。友貴さんは、ここ最近は何度も新感線に出られていますね。改めて、古田さんの魅力はどんなところにあると思っていますか。
友貴 いや、もう何もしなくても色気がすごいので。先ほど兄も言っていたように、僕らは古田さんを見て育っていまして、古田さんの殺陣を見て「こういうやり方があるんだ」と勉強させてもらっていましたから、その方と刀を交えられるのはすごく嬉しいです。
――では、成志さんから見た古田さんの魅力とは。
池田 まさかの質問を、急にぶっ込んできましたね……!(笑)魅力ですか……やはり“人たらし”ってことに尽きるんじゃないですか。早乙女兄弟もこうしてすっかり騙されているようですし、きっと中井さんも騙されてるでしょうし。一番騙されてるのはいのうえさんだと思いますが。そして女子と若い人に優しいのに年寄りには本当に恐ろしく厳しい人なんで、みなさんも気をつけてください。
――(笑)。久保さんと山本さんは、今回初参加ということになりますが。周りの方からこういうことに気をつけて!など、アドバイスされたりしていませんか。
久保 とにかく体力勝負だというお話は伺っています。私自身の役はそれほど殺陣が多いわけではないと思いますが、でも公演数も多いので、よく食べてよく寝てという話はいろいろな方からお聞きしています。
山本 私は幸いなことに、ここ最近のお仕事で新感線に出られた先輩方、小栗旬さんや山本耕史さん、梶原善さんといった錚々たる方たちとご一緒させていただく機会がありまして。ぜひアドバイスが欲しいのと同時に、嬉しい報告という意味で「新感線に出演が決まったんです!」とお伝えしたら「ああ~、そうか。頑張ってね……」って、みなさんなんだか暗めの反応だったんです。それだけすごく大変で、体力勝負なんだろうなと感じました。それでも「今までずっとアスリート生活をしていたので私は大丈夫でした!」と胸を張って言えるよう、頑張りたいなと思っています。
――聖子さんから、初参加のお二人に何かアドバイスをするとしたら。
高田 私がアドバイスすることなんて、何もないですよ。ただ、本当にこちらこそ仲良くしてください、という気持ちです。私、もしかしたらお二人のお母さんより年上かもしれませんよ。お母さんというか、ちょっとだいぶ年上の友達だと思っていただけたらありがたいです(笑)。
――粟根さんはいかがですか?
粟根 先ほど聖子さんもおっしゃったように、年齢差がすごく感じられるカンパニーになっているので、その若い部分をお二人で引っ張っていただければ、そして我々にラクをさせてもらえればいいなと思っていますので、どうぞ気をつけて頑張ってくださいませ。
久保・山本 よろしくお願いします!
――太一さんと山本さんはドラマ『封刃師』(2022年)で共演済みですね。山本さんから見た太一さんの魅力とは。
山本 それこそ最初に『髑髏城の七人~Season鳥』の蘭兵衛役で拝見していますので半分ファン感覚になっていたのですが、その後『封刃師』でご一緒させていただいた時は、もう殺陣が本当に速くて、そして色っぽくて。だけど普段はちょっと宇宙人みたいに変わっていると思うので(笑)、そのギャップも早乙女太一さんの魅力だなという風に思っています。
――太一さんはどうでしょう、山本さんの魅力とは。
太一 いや、とてつもないです。中国武術の棒や刀の回し方を、僕も二度ほどスタジオで教えていただいたんですが、ナマで間近で見ると迫力がとんでもなく、かつ美しかったですね。そういった面を、ぜひ今回の新感線の舞台でも存分に見せていただきたいなと思うし、僕もちょっと戦わせてもらうので今からとても楽しみです。宇宙人みたい?というのは、どういうことなのか……自分には全然わかりません(笑)。
――ちなみに劇団朱雀の公演で、太一さんと友貴さんはついこの間まで全国を回られていましたが。劇団☆新感線で早乙女兄弟として出演するにあたって、特に意識することは。
友貴 最初の頃よりは二人ともいろいろな経験をしてきましたし、個々に新感線にも出させてもらっていて。朱雀の時ともまた違った感じになるとは思いますけれども、なにしろ二人揃って新感線に出るのは9年ぶりなので実際にやってみないことにはわからないですね。
太一 僕も最初は17歳の時に出させてもらって、そこで付けてもらった殺陣ややり方を劇団に持ち帰って友貴に伝えたり、二人でやってみたりしていましたので、兄弟二人でこうして立てることはものすごく嬉しいことでもあり。そんな僕ももう30歳を過ぎていて、この間の舞台でも30歳なりに衰えを感じたりもしていたんです。だけど、その朱雀の舞台でしっかりとウォーミングアップができたとも言えますので、万全の状態で古田さんを殺す!と言っておきます(笑)。
古田 ちょっと待て、オイラはもうすぐ60歳なんだよ! 31歳と戦って勝てるわけないよ、そんなの、どんなスポーツだよ(笑)。でも太一と友貴と戦って、まあ、今回ちーちゃんとオイラは戦わないけれども、それをすぐそばで見られるのはアクション好きとしては非常に楽しみではありますね。
――劇団員のみなさんの個性も非常に強い劇団☆新感線ですけれども、久保さんは今回、劇団員の方と絡むシーンが多いですよね。
久保 そうですね、まさに高田さんとは親子ですので一緒にお話しするシーンも多いですし。私が演じるみさきという役は、他のみなさんとちょっと毛色が違う役どころでもあるんですが。私、高田さんを舞台で観ている時、パッと華やかでやはり毛色の違う感じがすごく好きだったので、そのエッセンスみたいなものを引き継いでできたらなと思っております。
続いて、記者からの質疑応答コーナーでは、まず久保と山本の印象を聞かれた古田が「二人共チャーミングで、本番が終わった頃にはオイラのことを“おとっつぁん”と呼んでくれたら嬉しい。そのくらい、手なずけたい」と語ると、久保の「ぜひぜひ本番が終わる頃に“おとっつぁん”と呼べたら嬉しいですし、いつかお酒を飲みかわせたら嬉しいなと……」という言葉に、食い気味に「明後日!」とかぶせる古田。山本も「反発的な娘の役ではあるのですが、昨日の本読みのあと少人数で一緒にご飯を食べさせていただきまして。本当におしゃべりが面白くて初日で大好きになってしまいました。出身も一緒ですし、もっともっといろんなお話ができたらいいなと思っています」と話し、早くもすっかり打ち解けている様子。
さらに、殺陣を兄弟同士でやる時の感覚を聞かれた太一が「弟が相手の時は当たってもいいやと思っています」と明かすと、友貴も「めちゃめちゃ当ててくるんですよ。兄弟なので遠慮がないし、でも本当に当たってもいい距離感でやっているからこそあれだけのスピードが出せるんじゃないかと思います」と、彼らにしか出来ない迫力の殺陣のヒントを教えてくれた。
そして最後には、全員からお客様へ向けて一言ずつメッセージが寄せられ、会見を締めくくった。
中島 長い公演ですので、本当に怪我のないよう体調不良のないように最後まで完走できることを祈っております。面白い芝居になると思いますので、ぜひ劇場に足をお運びください。
いのうえ 久々の劇団☆新感線らしいチャンバラ芝居になると思います。どうぞご期待ください。
太一 僕自身もまた新感線で新しい役どころをいただきました。少しでも皆さんに楽しんでいただけるよう、頑張りたいと思います。
友貴 今回は本当にチャンバラが多い作品となります。いつも通り、長い期間の公演ですので、最後まで怪我なく頑張り抜きたいと思います。
久保 初めての参加ということですごく緊張もあるんですが、全力で飛び込むつもりで殻を破って頑張っていきたいと思います。
高田 想像していた以上に盛りだくさんな公演になりそうです。観に来てくださった方々がお腹いっぱいになってもらえるよう、楽しんでいただけるように頑張ります。
粟根 昨日の本読みで歌や立ち回りをとばして台本を読んだら意外と短かったんです。なのに今回も上層部はいつもと同じくらいの上演時間があると考えているようなので、大変な量の立ち回りになりそうだと実感しました。立ち回り担当の人たちはどうぞお身体に気をつけて、そしてお客様のみなさんはその立ち回りをどうぞお楽しみに!
山本 いぶきという役名を中島さんからいただくのは実は二回目です(中島かずき脚本のドラマ『封刃師』と同じ役名)。まずはその役を大切に演じていきたいという思いもありますし、早乙女ご兄弟からは昨日から「ちーちゃんの立ち回り、楽しみだなあ~!」とイヤ~なプレッシャーをかけられているので(笑)、まずはそのプレッシャーに勝てるように頑張りたいです。
池田 僕は新感線に出るたび、必ずどこか身体を壊しているので気をつけたいと思っています。客席を走ると聞きましたが、たぶん走らされるのは僕たちじゃなくて太一くんや山本さんや友貴くんだと思うんですけどね。昔、ある女優さんが怪我をした時、スタッフが裏でおんぶして走っていて腰をいわしていました。そういう面白い劇団ですから、ホントくれぐれも調子に乗らずに気をつけて頑張りましょう。応援、よろしくお願いします!
古田 今回は若い人たちもいっぱい出ていますけれども、基本的に物語としてはちょっと落ち着いたお話です。とはいえアクションや歌など、いつもの新感線のオモシロ部分もたっぷりありますし、オイラはとにかく楽しいお芝居が好きなので、稽古場でしょうもないことを思いついたらどんどんやっていこうと思っています。ぜひともご期待ください!
取材・文/田中里津子