カンテレ開局65周年記念公演 音楽劇『浅草キッド』│林遣都 インタビュー

歴史上の人物を演じる気持ちで本質を探し求めていきたい

巨匠・北野武の若き日々を描いた「浅草キッド」が音楽劇として上演される。主演を務めるのは、映画、ドラマなどで活躍中の林遣都だ。

「北野武さんの作品ということは知っていて、それが舞台になったらどうなるんだろうというワクワク感がありました。それに脚本・演出が福原充則さんです。何年も前から福原さんの作品に参加したいと思っていましたし、これは絶対に面白くなると、そのワクワクがより強くなりました」

浅草のストリップ小屋で出会った師匠・深見千三郎との日々が描かれ、これまで映画やドラマでも映像化されている本作。音楽劇ならではの魅力とはどのようなところにあるのだろうか?

「福原さんとお話をしていて、武さんも師匠もお互いに思っていることをそのまま言葉でぶつけるような人たちではない、と思っていて。そんな誰にもこぼせない本音を、音楽や歌だからこそ表現できる。それは音楽劇だからこそできることで、だからこそまだ誰も見たことのない『浅草キッド』になるんじゃないかと思っています。武さんご本人からは、そんなことねぇよ、と思われてしまうかもしれないですが(笑)」

誰もが知る北野武だが、林は共演の際の印象を「どの瞬間も笑いを追求している人」だと語る。

「番組で共演させていただいたことはあるのですが、武さんは本当にボケ続ける方ですよね。口から出るすべての言葉を笑いに変える、そんな日々を何十年も続けていらっしゃるんだろうなと思いました。今なお、どんな些細な瞬間にも笑いを追求されているような印象でした。こんな簡単な言葉にしてはいけない気もしますが、それもシャイなところから来ているような気がするんです。真面目なことを言ってもしょうがない、どこか彩りを持たせて…と、シャイであるがゆえにいろいろと考えていらっしゃるのではないかと感じました」

師匠を演じるのは、ミュージカルなどで活躍する山本耕史だ。

「山本さんからは、とにかくパワーを感じました。今回初めてお会いしたのですが、エネルギーにあふれていて、第一印象から凄くカッコいい方で。音楽劇という部分でも山本さんの存在は大きく、師匠と弟子、憧れの人という意味では迷いなく演じていける気がしました」

音楽劇という冠に違わず、歌はもちろんタップダンスにも挑戦するという。

「自分が今まで触れてきていないジャンルのことにも挑戦します。世界的なプロの先生方と稽古をしていく中で、自分が今何ができていないのかすらわからなくなる瞬間も正直あるのですが、しっかりと自分のものになるよう叩き込んでいきたいです」

さまざまな挑戦と巨匠を演じる大きなプレッシャーの中で臨む本作。その重圧に飲み込まれないように、林は静かに決意を固める。

「歴史上の人物を演じるような気持ちで挑みたいと思っています。本作では、まだ何者でもなかった武さんが描かれているので、自分と通じる部分を探し求めていきたいです。誰しも浮き沈みがあって、武さんにもこういう時期があったんだと舞台を観てくださった方に共感してもらえるような作品にしていきたいです」

インタビュー・文/宮崎新之

※構成/月刊ローチケ編集部 9月15日号より転載

掲載誌面:月刊ローチケは毎月15日発行(無料)
ローソン・ミニストップ・HMVにて配布

【プロフィール】

林遣都

■ハヤシ ケント
’07年、映画『バッテリー』の主演で俳優デビューし、多くの新人賞を受賞。以後、数多くの映画やテレビドラマに出演。