KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『ジャズ大名』│千葉雄大 インタビュー

映画やドラマで活躍する千葉雄大が主演を務める舞台KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『ジャズ大名』が、2023年12月から翌年1月にかけて、神奈川、兵庫、大阪、愛知にて上演される。筒井康隆の同名傑作小説を原作に、福原充則が上演台本と演出を手掛ける。江戸末期、アメリカから漂着した黒人奴隷が持ち込んだ音楽に、ある小藩の藩主が虜になってしまうというこの物語。原作の九州の小藩から、実在した神奈川・小田原藩の支藩、荻野山中藩に置き換え、史実を織り込んだKAATならではのアレンジを加えて上演されるという。本作に臨む、千葉雄大に話を聞いた。

――まずはご出演が決まった時、どんなお気持ちになりましたか?

感覚的に、面白そうって思ったんですよね。最初に聴いたのが、後半20分は踊り続けます、って言われて。割と、そこしか情報は入ってこなかったです(笑)。そんなにダンスとかできる方じゃないけど、大丈夫かな?とかは思いました。

――けっこうガッツリとダンスする感じの作品になりそうですが、いかがでしょうか?

そんなにガッツリ踊る感じだったら、ちょっとヤバいですね…。でも「ノリで」って言われたんで!ノリはいい方だと思うし、テンションだけは持っているので大丈夫なはず!倒れるまで踊るらしいので…そこからのセリフなんですよね。

――ジャズについてはいかがですか?

ジャズはこれまで通ってきていないんですよね。ちょっと暗がりで聴くようなイメージです。少し敷居が高いような印象はあるんですけど、今回はそれが覆されるんだろうなという予感もしています。

――原作小説や映画はご覧になりましたか?

今のところはあえて見ていません。まずは脚本を読んで、稽古してみて、迷ったりしたときに参考になるのであれば見てみようと思っています。やるのは、今回の脚本なので。でも、もしガッツリ再現していくような作り方なら、ガッツリ見ようと思っています。もしかしたら、言われなくても観とけよ!ってなるかもしれないですけど(笑)。今のところの話の印象としては、あんまり時代劇してる感じじゃなくて、もっとポップな感じですね。掛け合いとかが大変そうな気もしています。ト書きも多くて、後半は自分がどこにいるんだろう?って言うくらいト書きがたくさんなんですよ。

――それは気合いがはいりますね。公演発表のコメントでは藤井隆さんとの共演も楽しみにしていらっしゃるとお話されていましたね

そうなんです!藤井さんがご出演されていたバラエティ番組のグッズとかは今でも持っています。お芝居も観ていて楽しそうなんですよね。すごく素敵で、憧れの人です。

――結構、お笑いやコントなどがお好きなんですよね

すごく詳しいわけではないですし、お笑い全般が好きっていう訳でもないんですけど、コントは好きですね。「ココリコミラクルタイプ」も見ていましたし、あとは友近さんとかも好きです。

――ある番組でヒャダインさんとの即興コントもされていますが、毎回素晴らしいですよね

正直、あんまり見てほしくないんですけど(笑)。舞台やドラマの印象よりも、あのコントのことをお話してくださる方がすごく多いんですよ。でも、ああいう訳の分からない掛け合いが好きです。あと、なんかこう、なり切る感じとかも、好きなんだと思います。

――今回は音楽も重要な要素となっています。楽器や語学は頑張りたい、と以前はおっしゃっていましたが…?

それは、僕自身がダンスとかアクションとか、体育会系がすごく苦手で…やるんだったら1年くらいください、って感じなんですけど、だからこそ文化系のことくらいは頑張りたいって言うニュアンスなんですよ。できないことも頑張るけど、できることや好きなことは、突き詰めて頑張りたい。ただ、今楽器がすごくできるとかではないんですよね。大学生の時にバンドを組んでて、そのギターの練習は楽しくなかった(笑)。でも仕事だと、そんなことは思わなくなるんですよね。

――今回は、クラリネットに挑戦されるとか?

こういう機会がないと、クラリネットに触れることもなかったと思うんですよね。だから嬉しいです。以前、ミュージカルをやらせていただいたときも思ったんですけど、役を通して得た経験が、自分自身に残るものもあるじゃないですか。そういうプラスアルファがあることが、すごく大変ではあるんですけど、好きですね。もしかしたら、めちゃくちゃハマるものに出合えるかも知れませんし。ボイトレもたまに行くようになりましたから。今後やるかどうかはわからないですけど、将棋とか水球とかも、目に留まるんですよね。

――今回のクラリネットやジャズがそういうものになるかもしれないですね。稽古はこれからですが、楽しみにしていらっしゃることは?

楽しみというか…平和であれ、です。ちょっと長い稽古なので、より親密になると思うんですよ。僕よりも経験がある方もたくさんいらっしゃるので、いろいろ言ってもらえたらと思いますし、あんまり言われても…とも思うんですけど(笑)。気楽に言い合えるくらいの平和な感じの稽古場になればと思います。

――新しい現場に入られる時の、心構えやマインドの作り方などはありますか?

顔合わせが一番緊張するんですよね。結構、猫被っちゃいがちなんです。周りから言われるのは、ドラマで10話あったら、心が開いてくるのは8話くらい。

――結構後半ですね(笑)

(笑)。でも舞台とかだと、映像よりは早く心を開ける気がします。やりとりする時間も映像よりは長くなったりしますからね。僕、2020年くらいから舞台を1年に1本くらいやらせていただいているんですけど、ずっとコロナ禍だったので、あんまりみんなで楽しんだ!みたいなことが無かったんですよ。コロナ禍の前はもちろんあったんですけど…。

――少し落ち着いては来ているので、KAATですしみなさんで中華街とかに行けるといいですね

それ、最高です!できるといいなぁ。でも、もし行けなくても稽古中になるべく心を開けるように頑張ります。

――KAATでの公演は久しぶりになるかと思いますが、劇場の印象や街の印象などはありますか?

東京の劇場とは違う空気感がありますよね。舞台を観た後の余韻みたいなものがすごくある。そこがすごく素敵な劇場だと思います。劇場を出てからも、ずっと余韻に浸れるような街並みなんですよね。

――今回の舞台はダンスも激しくて体力勝負になりそうですが、何か体力づくりで実践されていることはありますか?

朝晩の犬の散歩くらいですね。結構時間かけて3万歩くらい歩く日もあるんですよ。夏場は犬もバテちゃうんで控えめですけど、普通に散歩して、大きめの公園でバーッと遊んでまた歩いて帰る、みたいな感じです。

――3万歩はかなりの運動量ですね!今回の「ジャズ大名」で年末年始を過ごされることになります。まだ少し早いですが、2023年はどんな年になりそうでしょうか?

結構、挑戦がすごく多い年になっていると思います。1月のドラマで手話をさせていただきましたし、その後も世の中的にはあんまり出ていないんですけど、新しい挑戦をさせていただいています。「ジャズ大名」の前にも劇場+生配信の作品をやらせていただきますし、それを終えて、今年の最後は踊り狂って締めくくりたいと思います!もともとお祭り好きで、そういう雰囲気は大好きなんですよ。「ジャズ大名」を観に来てくださった方も、今年いろいろあったけど、なんか最後が良ければオッケー!みたいな感じになってくれたらいいな。

――今年を締めくくる、お祭りのような作品になりそうですね

そうですね。僕、本当にお祭り大好きなんですよ。宮城出身なので七夕まつりがルーツだとは思うんですけど、音楽も好きだから、ロックフェスティバルも好きだし。夏場のこの季節は、いろいろなところでお祭りやってますよね。全然自分にゆかりのない場所の地元のお祭りに何回か行ってみたりしました。こっちも陽気になってるんで「千葉さんですか?」って話しかけてくれた人に「イェーイ!楽しもうね~」みたいなテンションで返したら、同行してた友達から「やめなよ、そういうの」って言われちゃいました(笑)。でも、みんながぐちゃぐちゃで一緒くたになっちゃう感じが楽しいんですよね。

――いろいろなことを気にせず、とにかくみんなで楽しめる場が大好きなんですね。今回の舞台もそういう場になったら楽しいと思います!最後に、公演を楽しみにしている人にメッセージをお願いします

舞台はやっぱり、テレビのチャンネルをつけて観るのとは違って、見に行こうと思ってくださって、足を運んでくださるわけじゃないですか。だからこそ、何かお土産を持ち帰っていただきたい。お土産にもいろいろあると思うんですけど、その中でこの「ジャズ大名」をどのように思ってくださるか…合っているかわからないけどギャル魂みたいな“テンションぶち上げハチャメチャフェスティバル”な舞台だと思うので、そういう気持ちをお土産にできたら。時代は違っても、好きなことにひたむきになったりするところは、現代にも通じると思います。ぜひ、来ていただけたらと思います!

取材・文/宮崎新之
写真/大野隆介
ヘアメイク/堤紗也香
スタイリスト/寒河江健