特集「部屋とガラパコスパコスと私」|菅原永二×高橋惠子

2023.09.13

ローチケ演劇宣言!をご覧のみなさん、こんにちは。はじめまして。
「ガラパコスパコス〜進化してんのかしてないのか〜」に出演します、菅原永二です。

今回、わたしがホスト役になって「COCOON PRODUCTION 2023『ガラパコスパコス ~進化してんのかしてないのか~』」に出演するみなさんに、稽古の合間にいろいろと質問してみました。

「ガラパコスパコス」のことはもちろん、それ以外のプライベート(?)なことまで、あれやこれやと。お楽しみいただければ幸いです。

もちろん劇場でもお楽しみいただけるように、一同一丸となって稽古にいそしんでおります。劇場でお待ちしています。

3回目のゲストは、なんと高橋惠子さん。緊張しましたが、楽しいお話を聞くことができました。

僕がホストっていう、思い切った企画なんですが、よろしくお願いします。

素晴らしいじゃない。リラックスしてお話させていただきます。

惠子さんはノゾエさんのことはご存じでしたか?

作品を拝見したことはなかったんですけど、お名前とお噂は聞いていましたよ。さいたまゴールド・シアターをやってらっしゃったとかね。

本当にいろいろなことをやられていますよね。僕は劇団 猫のホテルっていうところにいたんですけど…

あら、市川しんぺーさんのところ!ご一緒したことありますよ。野田秀樹さんの「キル」でしたね。

そうだったんですね。その猫のホテルと同世代の劇団が「はえぎわ」だったんですよね。

すごいネーミングですよね、はえぎわって。じっくり聞いてみたくなる名前。

そういう訳で僕とノゾエくんは旧知の仲ではあるんです。惠子さんからご覧になって、ノゾエさんはどんな人でしょう?

周りからうかがっていたお人柄は、とても優しくて紳士的。クレバーな方ですよ、ってお聞きしていたんです。

すごく穏やかなんですよね。

そう、穏やか。ぜんぜんイライラしたりしないし、感情的になって声を荒げたりもしないし。すごいですよ。

今までご一緒されてきた演出家さんとは違う感じですか。

蜷川幸雄さんとは対極かもしれませんね(笑)。でも同じさいたまゴールド・シアターを受け継いでいらっしゃるのが、また面白いですよね。ちゃんとご自分の世界観があって、うまくみんなを導いていて。

素敵ですよね。

役者さんでもあるので、役者の気持ちもわかってくださるんですよ。怒鳴られると萎縮しますもんね。

惠子さんも怒鳴られたこと、あるんですか?

私は割と怒鳴られたことはないんですけど…でも、デビューの頃はありましたよ。

そうなんですか!?

関根恵子という名前だったので、「おい、セキネの馬鹿野郎!女優なんか辞めちまえ!!」って。それが最初の映画でしたから、そんなことではめげませんでしたけど。それ以外では、あんまりないですね。

ほかの方が怒鳴られている現場はご覧になったことがある?

それはもう。本当に、怒鳴られた人がかわいそうでね。

自分じゃなくても、怒鳴られないためにどうすればいいんだろう、って思っちゃいます。

だから1つのパフォーマンスではあると思うんですよね。周りを引き締めるための。

引き締められた方は、たまったもんじゃないですよね(笑)。今回の稽古場も数週間が経ちましたが、いかがですか。

あれよあれよという間にですね。なんだか気付いたらもう本番が目の前で。

早いですよね。

手ごたえとしては、周りの人の面白さがすごくて、すごく楽しいですよ。登場したらずっとハケないので、ずっと見てるんです。

ハケないのが大変ですよね。

ほかの人のお芝居のアイデアもすごいですし、本当にすごいなって。私自身の役をお話すると、認知症の役なんです。私の母も認知症だったんですよ。

そうだったんですね。

レビー小体認知症と言って、誰が誰だか分からなくなる感じじゃなくて、ちょっと幻覚が見えたりする感じだったんです。

今回の役とは、また違う感じなんですね。

そうですね。今回の役は、リアクションしないことが難しくて。役者って、反射的に行動することを要求されてきたじゃないですか。それが難しくて。

リアクションしない時もあれば、する時もありますもんね。

そう、まだらでね。それに一度舞台に出たら出突っ張りで。

お水やトイレも難しい。

そう、トイレね。この間、おむつを履いてみたんですよ。

そうでしたね。この間「おむつ、履いてきたの」って、稽古場に入るなりお話されてました(笑)

生まれて初めて、介護用のおむつを履いてみて。でも意外と薄くて、見た目はあまりわからない感じでした。でも、おむつを履くことはできても、そのまま用を足せるかどうかは…大きな境界線があって、さすがにできなかったです。

私も手術でおむつを履いた経験があるんですけど、言葉にできない境界線がありますよね。

大変なことでしょ。一線を超えないとできない。でも、それが普通になっちゃうくらいの状態なんだとも思いました。そのあたりの難しさは実感できました。

ノゾエさんの演出で印象に残ったことはありますか?

最後のみんなで動くところとか…音楽に合わせて動いていくさまは、ノゾエさんのイメージされているところに誘導してくださった感じがありますね。

振付の方にもノゾエさんのイメージがしっかり伝わってて。

ちゃんとこの作品のテーマとか、作品全体の世界観に合ったものになったように思います。

惠子さんは稽古場での過ごし方とかいつも持っている必需品はありますか?

作品や役によりけりですけど、そんなにこだわりはないです。お水は、現場でご用意してくださってるし。

決めてる方はルーティンをきっちり決めてらっしゃったりしますよね。

私はもう、稽古場に入って階段で控室まで登って、着替えて…お化粧も今回は少し眉毛を整えて、軽く口紅を引くだけ。あとは何もしてないです。着替えが切り替えと言えば、切り替えかな。

ご自宅に帰ってからリラックスする方法とかはありますか?

まずは靴下を脱ぎたい!

それはきっと、みんなそうですね(笑)。じゃあ、ご自宅ではずっと素足ですか?

スリッパを履いたりする時と…裸足のままの時もありますね。スリッパもあちこちにあったりするので…そんな時は、そのままでもいいかな、と(笑)

そうなんですね(笑)。共演のみなさんの印象はいかがですか? 竜星涼さんとは一緒のことが多いですけど。

竜星さん、背が高いじゃないですか。最初にお会いしたとき、私背が高いひと苦手なの、って言っちゃって(笑)。ひどいですよね。失礼極まりない!

(笑)。それはまたなんで?

だって、首が疲れちゃうから(笑)。でも竜星くん、すごいんですよ。すごく一生懸命、ピエロの動きを頑張ってて。鏡の前で熱心に練習していました。

竜星くんは自分のすべてを肯定する、って言ってるんですよね。

そう、だから今回の役は真逆なんですって、おっしゃっていました。

惠子さんも最近は自分を肯定するようになられたとか。

そう、自分を愛せるって言うか。もともと、そんなに自分のことを嫌ってはいませんでしたけど、でも自分のことが二の次になってしまうことは多くて。子育てをしていると、子どもが優先になりますしね。

それはそうですよね。

でも、この自分とずっと付き合っていかなきゃいけないわけですから。最後まで。だから自分を好きになることって大切だな、と。

そのお話を聞いたとき、僕もそうなりたいというか…もう、毎日反省ばっかりしてるんで。

でもそこが、相手を思いやる繊細さに繋がっているんだと思いますよ。ノゾエさんもそう。ちょうど足して2で割るとちょうどいいかも(笑)。自分が大切なように、相手のこともすごく大切ですから。

そこは今回、本当に学ばせていただきたい部分です。いつごろから、ご自分のことも大切にできるようになってきたのでしょうか。

ごく最近ですよ。コロナ禍があって、いろいろなことを考えるようになってからです。生きていればいろんなトラブルもありますけど、切り替えが早くなりました。

いろんなことを受け止めて、切り替えて。

山より大きな野獣はいない。大変なことがあっても乗り越えられる、っていう例えなんでしょうけど、本当にそう思って。自分を成長させるため、気付くためのものとしてポジティブに捉えるようになりました。そう思うと、失敗はない。

失敗に対する考え方も変わる。

こうじゃないといけない、というものに対して、それができなかったら失敗ですけど。80%はできたよね、という思い方もできる。それが次のステップ、ジャンプにつながるかもしれない。だから失敗を恐れずに、最近は挑戦しているんです。

今日、お話させていただくのも、不慣れすぎてどうしよう、何日反省しないといけないんだ、という想いだったんですけど。次に繋がると信じて、前向きに考えてみます。

だって、ホストというポジションを与えてもらったこともすごいことじゃない? そういうこともちゃんと受け止めるってこと。

楽しく受け止めます!公演ももうすぐですが、最後に意気込みを聞かせてください。

まずは本当に個性豊かな俳優さんたち。本当に1人1人が素晴らしいんです。最近、十人十色という言葉がもっと好きになったんですけど、今回のキャストがまさに十人十色。

本当にみなさん、いろいろな色がありますよね。

そういう中で時間を過ごせることは本当に幸せなことなので。今年はおばあさん役が多いんですよ。来年はそんなことないんですけど、今年だけ。これって、年齢を超越しなさい、ってことだと思って。だから、いろいろやってみて挑戦したいと思います。

すごく素敵です。

それで、新しい自分に出合いたいですね。チョークで描くっていう演出も、素晴らしいんです。

稽古場に来て、黒板が真っ黒に戻っていると「最初からやるんだ…」って気づかされます(笑)

そうそう(笑)。菅原さん、すごく絵がお上手だからね。

いやいや、全然ですよ。画像を検索して、頑張って描いています。

でも、本当に今の時代に合っている作品だと思うんです。今ってコロナ禍もあって、ちょうど変化しているとき。私は、ポジティブな世界に変わってほしいと思っているの。

コロナ禍で、便利になったことも逆にコミュニケーションが難しくなったりもありましたが、ポジティブな方向に変わってほしい、と。

人がこの地球で生きてきて、美しいものとか尊いものとかを見つめなおす。そういうきっかけになってほしいかな。人類はずっと進化しているでしょうけど、本当に進化しているのかしていないのか。

青年が老婆を拾う、とだけ聞くと犯罪なんじゃないかとか思われそうですけど、本当に面白いお話なので。

ちょっとファンタジーな感じもありますよね。受け止め方はみんな違うだろうから、それぞれの受け止め方で見てほしいです。舞台上から見ている感じも…すごく面白いですから(笑)