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世界の伝説をエンターテイメントとしてドラマティックに描く『アナ伝』シリーズ。vol.4となる今回は、映像やゲーム、様々なファンタジーの原点である「北欧神話」を取り上げ、個性豊かな神々を中心とするキャラクターたちの生き様を描く。2023年9月16日(土)の開幕に先駆け、ゲネプロが行われた。
まずは作中で唯一の人間・ジークフリート(深澤大河)がストーリーテラーとして登場し、北欧神話の世界を説明してくれる。本作には神々やドワーフ、人間が暮らす9つの国がある中、アース神族・巨人族・ヴァン神族・小人族・人間のキャラクターが登場。国ごとに衣装の雰囲気も違い、一同に会した時の華やかさ、陣営ごとのチーム感が楽しい。セリフのないキャラクターも表情やセリフに対する反応でしっかり個性を出しており、舞台上のどこを見ても発見があるため、目が足りなくなってしまう。
オープニングはキャラクターが勢揃いし、重々しく勇猛な雰囲気の楽曲と名乗りを披露する。そして、北欧神話最強と謳われるトール(竹中凌平)、イタズラ好きのロキ(松村龍之介)、光の神バルドル(佐野真白)の三兄弟が、父・オーディン(稲垣成弥)から後継者選びのための勝負をするよう言われることから物語がスタートする。
竹中は、大雑把だがまっすぐなトールを愛嬌のある好青年として演じる。やんちゃな青年といった雰囲気の彼が名実ともに北欧神話最強の神に成長していく過程を丁寧に見せ、応援したくなる主人公に仕上げていた。
ロキを演じる松村は裏表があり軽やかな言動で場をかき乱す。どこまでが本音なのかわからない言葉や時折見せる表情が、彼を憎めないトリックスターに見せている。
誠実で誰からも愛されるバルドル役の佐野は、穏やかな物腰と柔らかい笑顔で和ませてくれる。血の気の多い神たちの中で、バルドルの優しさが緩衝材となっている。
そんな3人を見守るオーディン役の稲垣は、最高神としての責務と父親としての思いをしっかり見せ、人間臭く愛すべき神様として存在している。
オーディンの従者・ヘイムダル(寿里)の頼れる大人の落ち着きとお茶目さ、ヴァン神族のフレイ(樋口裕太)&フレイヤ(とまん)兄妹の明るく前向きな姿も魅力的だ。シスコンだが男気もあるフレイと、恋する乙女なフレイヤのコミカルさが物語に華を添えている。
巨人族の長・ヘル(伊崎龍次郎)は、上品で艶やかな雰囲気に惹きつけられる。オーディンとの腐れ縁とも言える関係性、大人なやり取りと時折見せる可愛らしいやり取りのギャップも魅力だ。短気で喧嘩っ早いフェンリル(小坂涼太郎)と冷静なヨルムンガンド(工藤大夢)は、それぞれスタンドプレーかと思いきや、意外と仲が良かったり優しい一面があったりと、愛嬌があって憎めない。
小人族代表のピクルス(小泉丞)は、神々とはまた違う価値観と職人としてのプライドを持ち、物語の要所で活躍する。そしてジークフリートはクセの強い神様たちにも物おじせず、人間らしい感性で客席と舞台上を繋いでくれる。
脚色されているが北欧神話をベースにストーリーが描かれており、作中では有名なエピソードをダイジェストで紹介する場面も。ユニークな逸話たちに、北欧神話に詳しくない方も「どんな話なんだろう?」と感じ、読んでみたくなるはずだ。
作中で次々に繰り広げられる殺陣も大きな見どころ。ハンマーや剣、鎌、斧といった大きな武器を持っているキャラクターが多いのに加え、衣装やヘアスタイルも華やかなため、迫力満点だ。重さをしっかり感じさせるトール、キャラクターらしい軽やかさで戦うロキ、長身を活かした大きなアクションを披露するフェンリル、武器が小さいぶんしなやかでスピード感のあるヨルムンガンドとフレイヤなど、戦い方にも各々の個性が出ている。敵味方入り乱れて戦うシーンも多く、自分も戦場にいるような臨場感を味わえる。
また、ラグナロクを描いているためシリアスなシーンも多いが、それと同じだけ笑えるシーンや家族の情、他者への憧れや愛といったグッとくるシーンも多い。人間以上に人間らしい神様たちの生き様、人間であるジークフリートの思いから、あたたかい気持ちを受け取ることができる。
第二部では、舞台を楽寓名(らぐな)町九番待に移して「ラグーナROCKフェスティバル2023」が開催される。北欧神話の世界を駆け抜けた者たちの魂が宿るとも言われる街のシンボル・アスガル広場(通称アス横)で、個性豊かな3チームによるステージが繰り広げられる。
第一部の重厚なBGMから雰囲気をがらりと変え、ノリのいい軽快なBGMの中、自称イベント運営会社ユニット「明神-AkitsuKami-」、学生ユニット「Dreamy poopoiye」、近隣県から東京にやってきた「THE 荒舞流」が登場。アドリブとユーモア満載、キャスト陣の素の一面も垣間見えるトークコーナーを挟みながら、北欧神話を彷彿とさせるようなさせないような、ユニークな楽曲を披露する。
「明神-AkitsuKami-」はセクシーなダンスとガラの悪い歌詞のギャップが楽しく、「Dreamy poopoiye」は爽やかで正統派なポップソングと真似したくなるキャッチ―な振り付けが可愛らしい。「THE 荒舞流」はクールな表情で繰り出すユニークな曲とキレのいいダンスに思わず笑ってしまう。ラストは全員で、第一部のストーリーにもリンクするような楽曲を披露。客席を巻き込み、明るく楽しい雰囲気で幕を閉じた。第二部ではうちわやペンライトの使用もOKなため、思い切り盛り上がろう。
本作は9月16日(土)より24日(日)までシアターサンモールにて上演。16日(土)、21日(土)、24日(日)の夜公演はライブ配信も行われる。
舞台写真
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取材・文/吉田沙奈