『徳光和夫の名曲にっぽん』徳光和夫合同取材会

徳光和夫の名曲にっぽん

BSテレ東の人気音楽番組『徳光和夫の名曲にっぽん』が番組放送10周年を迎えたことを記念し、創業150周年を迎えた明治座とのコラボコンサートを開催。MCの徳光和夫がゲスト歌手とトークを行い、昭和歌謡の名曲を紹介していくという番組コンセプトをそっくりそのまま明治座で行う。里見浩太朗、中尾ミエ、堺正章、五木ひろし、小林幸子、由紀さおり、天童よしみ、すぎもとまさと、原田悠里、坂本冬美、市川由紀乃、ベイビーブー、北山たけし、丘みどり、福田こうへい、はやぶさ、中澤卓也、辰巳ゆうと、新浜レオン、シークレットゲストが日替わりで出演し、ステージを盛り上げる。公演を前にMCの徳光和夫に10周年を迎えた番組の思い出やコンサートへの思いを伺った。

ーー『徳光和夫の名曲にっぽん』番組放送10周年おめでとうございます

ありがとうございます。この番組は歌番組の司会としては、通りすがりみたいな番組でして……。軽い気持ちでお引き受けしたっていうのが偽らざるところの出発点でございました。

ーー軽い気持ちだったんですね

半年で終わる予定だったというのをあとから聞きましたからね。それがなぜこんなに長く続いたかと言いますと、まだBSのなかに歌番組があまりなく、NHKの『BSにっぽんのうた』はあったんでありますけど、それ以外はほとんどなかったもんでありますから、視聴率が良かったようで、テレビ東京さんが「じゃあもうちょっと続けてみましょうか」ということで少しづつ認知されていったのがこの10年間じゃないかと思います。

ーー10周年を祝う公演が明治座創業150周年記念として上演されます

こんなことが実現するとは思っておりませんでしたよね。明治座さんといえば、お芝居と歌の殿堂であるわけで、多くのタレントさんが明治座に出ることによって一流というレッテルを貼られる場所なわけです。しかも150周年という記念すべき年に、いち歌番組のコンサートができるというのは光栄です。

ーー長いキャリアを誇る徳光さんにとっても特別なんですね

日本テレビに入社して1年目から歌番組をやってきた私の人生の喜びとしてはふたつめですね。ひとつめは『年忘れにっぽんの歌』の司会を玉置宏さんから引き継いだときです。あのときも歌番組をやってきて良かったと思いましたけど、今回はまた違った形で、まさか自分が司会をさせて貰っている番組が明治座さんの舞台で再現できるなんてね。どういう風にお伝えしていいのかわからないほど、気分的にはしてやったりという感じがいたします。と同時に緊張感もあります。そんな記念すべき年に我がジャイアンツの体たらくというと……この話はまたの機会に……(笑)。

ーー番組をやられているなかで心に残るエピソードといえば?

たくさんありますね。丘みどりちゃんなんかはよ~く覚えていますね。司会の仕事で関西に行ったとき、深夜番組で『越冬つばめ』を歌っているみどりちゃんを見たんです。歌が上手くて、声の伸びが素晴らしくてね。しかもミニスカートであのときは歌われていました。何曲か聴いているうちに「是非、我々の番組に来て歌って貰えないだろうか?」と思ってお願いに至ったわけであります。

ーー徳光さんがスカウトされたような?

スカウトしたわけじゃないけど、いち歌謡曲ファンとしまして、こんなに歌心のある歌手はそれほどいるわけじゃないなと思いましてね。

ーー印象的だったんですね

そうなりますね。彼女もインタビューなどできっかけになったと言ってくれているので印象に残っていますね。

ーー番組は徳光さんの想いが込められている気がします

私の勝手なんですがムード歌謡を絶やしたくないという思いはありました。和田弘とマヒナスターズ、ロス・インディオス、鶴岡雅義と東京ロマンチカ。やっぱりムード歌謡の世界って歌謡曲にとってはつきものじゃないかと。つまり、私はスナックがなくならない限り、ムード歌謡は永遠だろうという風に思ってるわけですよね。『銀座の恋の物語』や『別れても好きな人』は令和の時代でも日本中のどこかしらのスナックで歌われているわけです。それがこの先、全く消えちゃうのはちょっとアレだと思いまして、ムード歌謡を今の若い人たちに歌っていただきたいと番組のスタッフにはお願いしました。

ーー番組の特徴でもありますね

山内惠介さんをはじめ、新浜レオンくんとか真田ナオキくん、辰巳ゆうとくんに歌って貰ったところ視聴者のみなさんに喜んで貰えたっていうのは司会をやっております側からするとちょっと感じるところですね。といいますのも、今の新しい演歌の担い手にとりましてもムード歌謡というのは、はじめてなわけです。彼らが歌うことで、彼らのファンが聴いて「あの歌、とってもよかったです」と。それはやっぱり司会者として、過去の隠れた名曲を新しい世代に繋げるのが私の役割じゃないかなって思います。

ーー“名曲”を繋げていかれているのは間違いありません

あと、もうひとつ歌謡浪曲を取り上げたのは我々の番組が最初だったのではないかと思います。三波春夫さんという巨匠が作り上げたものを三山ひろしくんなんかは本当に見事に歌ってくれます。辰巳ゆうとくんや女性の歌手も本当にいい形で継承してらっしゃると思います。ここに関してはちょっとだけ、私とスタッフのなかで小さな「やった!」感はあると思います。

ーーこれほどまで長く音楽番組の司会をされているからこその知識の豊富さ、語りの重みがあるんですよね

歌とは常に一緒に歩いてきた感じはします。マラソンの伴走者のようなね。それこそ小学校時代に美空ひばりさんの『越後獅子の唄』を4番まで歌えるようになったときや、神楽坂はん子姉さんの『ゲイシャ・ワルツ』を聴いて、そこからムード歌謡で大人の世界にちょっと触れたりしてね。そういうことを歌の世界を知ることで世界が広がったなと思います。歌謡曲と共に生きてきた伴走者になれたことが自分としましては充足感に繋がっています。

ーー目の前で歴史を見てきたともいえます

僕は野球中継をやりたくてアナウンサーになったもんでありますから、歌番組を担当することになったときは、正直言って残念だったわけであります。ですが、まさに本物の歌手の方の歌を聴いたときに、「歌は凄いな」「凄い人たちがいる」と目の当たりにしたわけです。具体的には、美空ひばりさんの歌を聴いたとき、北島三郎さんの歌の表現力とかですよね。

今回の明治座公演ではお客さんも生の歌声を聴けるわけですよね

本当にそうですね。私はMCでありますけど、舞台袖でみなさんの歌声を聴けるっていうのは……しかも私は無料で聴けるわけですけども(笑)。素晴らしい体験、体感になると思います。そしてやっぱり明治座の舞台で歌うというのは、歌い手のみなさんの心構えが違ってくると思うんです。目の前にお客さまがいらっしゃっるわけですから、明治座の舞台はまさに取り組まなければいけない場所なわけです。

ーー番組でもあり、舞台コンサートでもあるところが今回の面白いところだと思います

そういったなかでMCができるのは司会冥利に尽きるし、私の役割は何かと考えるとひとつは、やっぱりずっとテレビの歌番組をやってきたことは語れるかなと思うんです。歌の変換でありますとかね。あと僕はアナウンサーという役職でもありましたんで、1980年代末の東西冷戦が雪解けになりましたマルタ会談を現場で経験したり、ジャイアント馬場さんの試合を中継したり、デストロイヤーに四の字固めをかけられたという屈辱的な歴史もありますけども(笑)、そういったテレビの内側の話もちょっとできるかなと思っています。その部分はこれまでの明治座さんの歌謡ショーとは違う味付けができればなって風に思います。

ーーそこには里見浩太朗さんや五木ひろしさん、由紀さおりさんや堺正章さんや中尾ミエさんもいらっしゃるわけですよね

そう。これだけの皆さんが顔を揃えてくださるとは蓋をあけて私もびっくりしました。里見浩太朗さんは明治座の舞台は慣れていらっしゃるでしょうけど、私のゴルフ仲間ということでお声をかけさせていただいて、リクエストをしましたら「それだったらいけるな」っていい声で言ってくださいまして。(公演のあいだは)毎日違う1週間になると思いますね。

ーー徳光さんが公演で楽しみにされていることは?

皆さんの歌を舞台袖で生で聴けるということですね。それに私からこういう歌を歌って貰いたいというリクエストも出していますので、ムード歌謡なんかのところはそれをどういうふうに歌ってくれるのかって楽しみがあります。あとはもう来てくださる皆さんが、これまでの明治座さんの歌謡ショーとはまた違うものを見たって思ってくださると嬉しいなと思いますね。それがいちばんの楽しみです。

ーーありがとうございました

インタビュー・文/高畠正人