『鴨川ホルモー、ワンスモア』製作発表レポート到着!

2024.02.02

京都を拠点に活動する劇団「ヨーロッパ企画」の上田誠が手掛ける最新作「鴨川ホルモー、ワンスモア」の合同取材会が東京・ニッポン放送のイマジンスタジオにて行われ、キャストの中川大輔、八木莉可子、浦井のりひろ(男性ブランコ)、平井まさあき(男性ブランコ)、脚本・演出の上田誠、原作の万城目学が登壇した。

本作はヨーロッパ企画の上田誠とニッポン放送が手掛ける舞台シリーズの第4弾で、先日直木賞を受賞した万城目学のデビュー作「鴨川ホルモー」を再構成するもの。2浪して大学生になった青年・安倍が一目惚れをきっかけに風変わりなサークルに参加し、京都に千年伝わる奇妙な競技「ホルモー」に身を投じていく青春群像劇で、上田誠は「キャストの方もたくさん集まっていただいて、大群像劇の大コメディにしたいと思っています」と構想を語った。

18年の時を経てデビュー作が舞台化されることになり、万城目は「まだ技量が足りていない時の作品。ちゃんと1人1人に役割を与えてあげられなかった悔いがあるけど、それを上田さんが役割を与え、ちゃんと仕上げてくれるような嬉しさがある」とコメントし、期待をふくらませる。

主人公を演じる中川は「こんなに素敵なタイミングで『鴨川ホルモー』を演じられることがすごく嬉しいです。いい流れに乗って、舞台も成功させたい」と意気込んだ。

取材会では質疑応答のほか、公開ラジオスポット収録も実施。キャストらは、稽古前にもかかわらず、各々のキャラクターを感じられる芝居を見せつけ、報道陣から笑いがこぼれる場面も。上田が「収録中の自覚をもって!」と会場を沸かせ、和やかに取材会を終えた。収録されたラジオスポットはニッポン放送にて放送される。

「鴨川ホルモー、ワンスモア」は、東京・サンシャイン劇場にて4月12日(金)~29日(月・祝)まで、大阪・サンケイホールブリーゼにて5月3日(金・祝)・4日(土)に上演される。

取材会での各コメントは下記の通り。

■上田誠

Q.制作の経緯は?

「原作はファンタジーとしても青春ものとしてもすごく面白くてもともと好きな作品。僕自身、京都で暮らしていて、大学生時代も京都で過ごしていたのでシンパシーもありました。それで(前作の)『たぶんこれ銀河鉄道の夜』を万城目先生が観に来てくださったときに『原作物もなさるんですね』というような話の中から、おすすめの原作はあります?って聞いてみたんですよ。そしたら万城目先生が『鴨川ホルモー』と即答されたんです。フルスピードの即答で、多分冗談だったと思うんですけど(笑)、帰った後に、これはあるな、と思って構想し始めました。僕は群像劇をずっと作っていますし、ホルモーは団体競技で10人ずつのチームが100匹の鬼を使役して戦うんですけど、それも舞台だったら表現できるかもしれないと思いまして。なので今回は、キャストの方もたくさん集まっていただいて、大群像劇の大コメディにしたいと思っています」

Q.どんなところが「ワンスモア」?

「肝心の『ワンスモア』の部分ですが…何がワンスモアなんだろうと、今考えているところです(笑)。でも、これは確かにワンスモアだな、というような作品にしていきたいと思います。原作で描かれていることとは別の物語、裏側ではこういう話があったとか、『ホルモー六景』の話を取り込んだりとかして仕上げていきたいです。例えば、僕らも学生時代に飲み会の後、土手で2次会をやったりしたことを覚えています。まぁ、そういう劇ですね」

Q.キャストの印象は?

・中川大輔

「普通の主人公って正義や信念みたいなものがあったりするんですけど、安倍という主人公は途中で変な動きをするんですよ。2浪しているので、ちょっと落ち着きがあるのかと思いきや、恋に舞い上がった挙句、この行動って正義なの?という変わったことをする。でも安倍は人気があって、滲み出る人柄や繊細さがあると思うんですけど、それが中川くんと重なったんだよね」

・八木莉可子

「早良というキャラクターも、これまた情熱家で、サークル自体を翻弄するような悪い感じもあるんです。自分の情熱と恋心に走っていくような強さがあって、主人公からすれば憎らしい想いもあるんだけど憎み切らずみたいなところがあって。あざとく見せているけど、本人はそうじゃない。ステレオタイプのあざとさじゃないんです。その芯の通ったイメージが八木さんにすごくハマっていると思いました。舞台を初めてやるということで、台本を読む時にもちょっとした緊張感がある。そのちょっとした緊張感も、ちょうど重なる部分があると思っています」

・男性ブランコ

「ニッポン放送さんとやるお芝居の時は、割と芸人さんをはじめ演劇外の方に入ってもらって賑やかにやっているんです。僕は京都出身でお笑いも大好き。男性ブランコの2人はコントをされていて好きだったので、ホルモーの世界のどこに入っていただこうかと考えていたんです。それで考えた結果、松永と三好でした。奇跡的に、僕らのメンバーで浦井さんと双子になれそうな人(角田貴志)がいたんですよね。松永も、活躍させるつもりでいますよ」

■万城目学

Q.上田さんにおすすめの原作を聞かれて、なぜ「鴨川ホルモー」?

「(上田さんは冗談のように『鴨川ホルモー』と私が言ったと話していましたが)もうちょっと知的な前段があるんですよ(笑)。『たぶんこれ銀河鉄道の夜』がすごくいい出来で、こういう古典や名作を、上田さんは全部自分の形に解体して、もう1回再構成するような、そういうロジックを確立したと思ったんですね。これだったら、シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』でも、なんでもできるんじゃないですか、と言ったんです。もはやその部分は何にも聞いてへん、って感じでしたけど(笑)」

Q.「鴨川ホルモー」は京都で書いたもの?

「僕は全作品を東京で書いていて、『鴨川ホルモー』も無職の時だったので、ストリートビューを見ながら書きました。デビュー前なので、どうやったら世に出られるだろうかと試行錯誤しながら、本当にこれがどうなのか、結果や評価がわからないままに書いたものなので、ちゃんと世に出て、評価されたり映画や舞台になっていったりすることなんて、まったく想像していない状態でした。そこに関しては無欲と言うか、技量も足りていないんですよね。今なら京大青竜会の10人それぞれに役割を与えて書けると思うんですけど、当時は技量が無いんで、いかに楽するか、いかにごまかすか、を結構大事にしていた。双子にしたら1人減らせるとか。松永も、松永って誰や?くらいに、覚えていない(笑)。そういう意味では、1人1人に役割を与えられなかったという悔いがちょっとあるんです。その悔いを、上田さんがあの土手でみんなに役割を与えて描いてくれるというのは、すごく嬉しいというか。上田さんがちゃんと仕上げてくれるという感覚です」

Q.鬼語について

「鬼語はそもそも具体化されると思って書いていないし、書いているときは、これを自分がやるとしたら絶対に嫌だと思うことを敢えて書いていたんですよね。だからもう、(キャストのみなさんには)本当に申し訳ない(笑)。

嫌なんだけど、どんどんやっているうちに当たり前になって

自分のモノにしていくという、カルトに取り込まれる的な雰囲気の1つの道具として描いていたので、自分でも嫌な感じがしますよ」

■中川大輔

Q.作品への意気込み

「こんなに素敵なタイミングで『鴨川ホルモー』を演じられることがすごく嬉しいです。いい流れに乗って、舞台も成功させたい。そして、僕と安倍に共通しているという部分があると上田さんに言っていただいて、すごく自信になりました。『たぶんこれ銀河鉄道の夜』を観させていただいたときに、原作からのアップデート具合、飛躍具合が本当にすごかったんです。そうなると今回はどれくらい原作からワンスモアされるのか、今からワクワクしています」

Q.原作の印象は?

「鬼を使役してホルモーなる戦いで勝敗を決めるという設定を聴いて、奇想天外なお話なのかな、と思いながら読み始めたんですけど、読み終えたらすごくさわやかな気持ちになりました。世界観として妖怪とかそういうのは出てくるけど、心の動きは青春群像劇だったので、読む前とは印象がガラリと変わりましたね」

Q.主演を務めるにあたっての意気込み

「不安な部分で言うと、鬼語ですね。人間が発しないような言葉を発するんですけど、のどが持つのか、というのがまず1つの不安です。舞台のジャンルがコメディで、安倍自身ももがき苦しみながらやっていく役なので、僕自身も全力で、恥も外聞も捨ててやっていきたいと思います」

■八木莉可子

Q.作品への意気込み

「もともとヨーロッパ企画さんが大好きで、1番好きと言っちゃってるくらい好きですし、以前から観ていました。参加できると思っても居なかったですし、上田さんとお会いしたときは、推し…なんて言い方は上田さんに失礼すぎて言えないんですけど、本当にどうしようと思うくらい嬉しかったです。ヨーロッパ企画さんは面白いコメディの要素がいつも含まれているので、そのひと癖もふた癖もある面白さに必死にしがみついていけたらと思っています」

Q.原作の印象は?

「滋賀出身なので、原作を読ませていただくと知っている場所がすごく出てくるんです。大学の名前も、自分の友達がかよっているようなところがいっぱい出てきて、親近感をもって読ませていただきました」

Q.役の印象は?

「早良はちょっとあざといところがあると思っているんです。ただ自分としては、あざといのが1番苦手だと言っていて、ちょっと不安だったんですけど、芯が通っていると言ってくださったので、あざとく、強く演じられたらと思います」

■平井まさあき

Q.ヨーロッパ企画について

「滋賀の大学に通っていたんですけど、その時にヨーロッパ企画の舞台を観に行っていたんですよね。『あんなに優しかったゴーレム』という公演で、初演のプレ公演を観に行った記憶があります。もうめちゃくちゃ面白くて、生で演劇を観たの初めてだったので、”ヨーロッパ企画さんは面白い”というのがもう頭にこびりついて眠れませんでした。今回、関わることができて最高です」

Q.役への意気込み

「結構前から、ヨーロッパ企画の角田さんが浦井と似ていると言われていて、今回の話は浦井が似てるから呼ばれて、ついでに平井がついてきたという感じだと勝手に思っていたので(笑)、もともと知っていただいていたと聞いて身の引き締まる思いです。楽しそうな現場に呼んでいただいて、最高です」

■浦井のりひろ

Q.ヨーロッパ企画について

「やっぱりヨーロッパ企画は京都を代表するような劇団で、僕らは学生の頃に演劇サークルに居たので、僕らのやっていたことのものすごく遠い先、最高峰のところにヨーロッパ企画さんがおられたという感じ。関西演劇界のとてつもない存在です」

Q.役への意気込み

「賑やかしの要因として僕らを選んでいただいたというのがすごくありがたいです。妹が双子で、僕は双子の兄なんですけど、今回は角田さんと双子役ということで、ものすごく双子に運命的な縁を感じます。妹たちをもうちょっと注意深く観察して、双子らしい所作とかをやりたいですね。本当にありがたい役を頂いたと思っています」

取材・文 宮崎新之