PARCO Production『ドゥ・ユ・ワナ・ダンス?』初日前記者会見&公開舞台稽古レポート

2018.09.24

9月24日に初日を迎えた、ももいろクローバーZ初のミュージカル『ドゥ・ユ・ワナ・ダンス?』(千葉・舞浜アンフィシアター)。それに先立って、23日に初日前記者会見と公開舞台稽古が行なわれた。

会見にはももクロのメンバー、演出を手掛ける本広克行、共演者のシルビア・グラブ、妃海風が出席。ミュージカル演出は初挑戦となる本広が「ミュージカルがこんなに楽しいとは思っていませんでした」と語ると、メンバーから「現場でいつもニヤニヤしているもんね」とツッコミが入るなど、会見は終始、なごやかなムードで進行。本広とももクロは映画『幕が上がる』で初タッグを組み、その後、同作の舞台化でも本広が演出を担当しているので気心は知れた仲だが、がっつり組んでの仕事は実に3年ぶりとなる。

ミュージカル経験が豊富なシルビア・グラブは「これは新ジャンルのミュージカルだと思います。まさか、ももクロの楽曲を(本人たちの)まんまの振り付けで踊るとは思っていなかったので、稽古初日には『殺す気か!』と(笑)」と語れば、元・宝塚歌劇団星組トップ娘役の妃海風は「もともとアイドルは好きなので、ももクロの楽曲を踊れて『アイドルみたい!』って嬉しかったです。でも、ミュージカルで歌って踊るよりも100倍、汗をかきましたね」。

今作はももクロの楽曲で構成されるジュークボックス・ミュージカル。劇中では4人で歌い、踊るのはもちろんのこと、『HEAVEN』というアイドルグループに扮して、かつてのももクロのように9人編成、6人編成で結成当初の楽曲を披露する、というこのステージでしか見られない演出も。ある意味、ももクロ10年間の歴史をたっぷりと体感できる構成になっている。またシルビア・グラブと妃海風の2人だけでももクロのナンバーを歌唱するシーンもあるので、まさに新ジャンルのミュージカルと言うべき「アイドルとミュージカルの融合」を存分に楽しむことができる。

記者会見で玉井詩織は「10年間もやっているのに、歌は得意じゃないんですけど……」と自虐的に語りつつも「いつものライブでは歌詞の世界観に入っていくけど、今回はストーリーに曲を近づけていくので、新しい発見がありました」。それを受けて高城れにも「ひとつひとつの歌詞の意味が身に染みてわかるんですよ。ももクロの歌詞には普段、使わないような難しいワードもあるんですけど、今回、違う角度から見ることができました」。佐々木彩夏は「見ていただいたみなさんの次の日からの生活が充実するようになったらいいな、と思っています」と観客への熱いメッセージを送った。

そして百田夏菜子からは、劇中で初披露される新曲『天国のでたらめ』(作詞・作曲 志磨遼平、編曲 ケンモチヒデフミ)が10月12日から配信されることが発表された。これは8月にスタートした「5カ月連続新曲先行配信」の一環で、2019年5月17日にリリースされるアルバム『MOMOIRO CLOVER Z』にも収録される。

この発表を百田夏菜子が担当したことには意味がある。この日の公開舞台稽古で初披露されたのだが、劇中で『天国のでたらめ』を歌唱するシーンで、華麗なフライングでステージ上を舞ってみせるのだ。シルビア・グラブも「ミュージカルにはいくつも出演してきましたが、最近、ここまで大きな会場で舞台装置をたくさん使うことはなかなかないので、非常に貴重な機会です」と語っているように、円形のステージにはさまざまな仕掛けが施されており、観客は会場に足を踏み入れた瞬間から、その独特な空気感に飲みこまれることになる。

ももクロが演じるカナコ、シオリ、レニ、アヤカの4人がいきなり交通事故に遭い、そこから目まぐるしく展開される転生、天界、パラレルワールドといったファンタジーあふれる世界観を、舞台ならではの演出で表現する本広克行流の壮大なエンターテインメント。重たくなりがちなテーマでもあるのだが、それをパッと明るくさせるのは、常に笑顔で舞台上を跳ねるように動いている百田夏菜子の演技。3年前に『幕が上がる』でももクロ初の舞台公演を演出している本広も「3年前と比べると格段に成長した。みんな女優さんの顔になってきた」と評したが、歌と踊りだけでなく「演技」という部分でも、ももクロの魅力が全開になった『ドゥ・ユ・ワナ・ダンス?』は10月8日まで、舞浜アンフィシアターにて全19公演が行なわれる。

 

取材・文/小島和宏
撮影/阿部章仁