シス・カンパニー公演「カラカラ天気と五人の紳士」|溝端淳平インタビュー

溝端淳平

芝居巧者×若き演出家・加藤拓也が別役実の不思議ワールドに挑む!

堤真一・溝端淳平・野間口徹・小手伸也・高田聖子・中谷さとみ・藤井隆。この芝居巧者7名を得て、次代を担う注目の演出家・加藤拓也が演劇界の巨匠・別役実の不条理劇の世界に挑む。舞台には柱が1本。そこに5人の紳士が現れる。懸賞のハズレくじの景品という棺桶を前に、せっかくのもらい物を役立てるため、仲間の1人が死んでこの棺桶に入らねば、と議論を始める。そこへ懸賞の一等に当たった2人組の女性が現れて…。不思議な設定、シュールなコントのような会話。稽古を控えた溝端が来阪し、思いを語った。

――『カラカラ天気と五人の紳士』へ出演のお話を聞いた時はいかがでしたか?

溝端 「加藤さんの演出は何本か拝見していて、いつかご一緒したいと思っていたので、すごく光栄です。それに共演者の皆さんがとても頼りがいがある百戦錬磨の先輩方ばかりで。先輩しかいない現場は久しぶりなので、楽しみでしょうがないです。堤さんとは映像では一度もご一緒したことがないのですが、舞台では今回が3本目で演劇のご縁がある先輩です。あと個人的ですが、いつも素晴らしいキャスティングで公演されているシス・カンパニーさん主催の舞台に、お声がけいただけて役者としてうれしく思いました」

――今回は日本の不条理劇の第一人者・別役実の作品。戯曲を読んだ感想は?

溝端 「クスッと笑えるところもたくさんあって、おもしろかったです。でも、表していることや根底で伝えて来るものは、今の時代にも刺さる、切り込んでいるなと思う節は多々ありました。しかも役が紳士1紳士2女1女2とかですけど、それを個性たっぷりの先輩たちを当てはめつつ読むと、想像するだけでめちゃくちゃおもしろいんです。いち演劇ファンとしても、この本で、このキャスティングで、加藤さんの演出でっていうだけで、ワクワクするような感じですね。読んでいるだけでおもしろい舞台なので、どうなるんだろうと思っています」

――不条理劇は『管理人』(作/ハロルド・ピンター 演出・森新太郎 2017年上演)で経験されています。お稽古前ですが、今回はどのようなアプローチで臨まれますか?

溝端 「僕の役は紳士2です。役はそれぞれありますけど、今の段階では5人は5人でひとつの人格を表しているのかなという感じもしています。僕は本来、論理的に考えてやりたい方なのですが、不条理劇ではなぜこうなるのか頭で考え出すとキリがないということを『管理人』の時に経験しました。今回は考えすぎず、舞台上で瞬発力というか、その時その時に起きるものや感じることなどを重視して作っていこうと思っています」

――演出家・加藤拓也さんにどんな印象をお持ちですか?

溝端 「すごく斬新なことをやっているけれど、それがとてもナチュラルなのに意表を突かれるような演出で、おもしろいと思います。難しいことや新しいことを自然の流れの中で物語に入れてくる。お会いしたことは何度かありますが、僕より少し年下で普通の若い子たちと変わらない雰囲気の加藤さんが、奥底でこんなことを考えてるんだという、恐怖を覚えるぐらいすごい才能。演出家と役者はかなり密な時間を過ごすので、素敵な相乗効果になればと思います。

――不条理劇は難しいという印象がありますが、楽しみ方を教えてください

溝端 「不条理劇は難しいもの、と考えすぎずに観てもいいと思います。特にこの作品はすごく観やすいし、おもしろいですもん。僕はコントが好きなんですけど、今、深いものに触れるようなお笑いを求めてる時代だと思っていて、それに近いように思います。5人の紳士がどこからきて、どんな生活をしているのかとか気にならずに物語が進んでいくので、そこも楽しんでもらえたらなと。物語への導入や巻き込み方は、特に加藤さんお上手な気がしています。別役さんと加藤さんの化学反応も楽しみですね」

――大阪公演を楽しみにしているお客様にメッセージをお願いします

溝端 「別役さんの不条理劇っていうと、ちょっとハードルが高い感じがするかと思いますけど、決してそんなことはなくて。今の時代だからこそ刺さるところもたくさんあるし、エンターテインメントとして楽しめる戯曲です。これだけ個性豊かな俳優さんを加藤さんがどうまとめて具現化していくのか、すごくおもしろい体験だと思います。胸を借りる先輩方ばかりの中で、久々の最若手です。僕、もう35歳なんですけど(笑)。思う存分暴れて自分の出したいものを出して、皆さんが楽しめるものを作れたら、と思っています。笑いどころもたくさんあり、関西の方には特にたくさん来ていただきたいので、是非!劇場でお待ちしています」

取材・文/高橋晴代
ヘアメイク/塩山千明
スタイリング/黒田領