初日のカーテンコール photo:Nathalie Vu-Dinh
連日、大きな賑わいを見せ好評を博した、東京芸術劇場プレイハウスでの上演(2018年9月1日~12日)を終え、さらに進化をとげた野田秀樹の代表作、『贋作 桜の森の満開の下』が、フランス・パリで開催されているジャポニスム2018公式企画として、パリ・国立シャイヨー劇場(ジャン・ヴィラール)にて、現地時間、9月28日に開幕しました。
パリ・国立シャイヨー劇場の芸術監督ディディエ・デシャン氏が、「シャイヨー劇場でジャポニスム2018を開催するならば、ぜひ、野田秀樹の作品を正式招待したい。」と熱望。そして、その想いにこたえるべく、野田秀樹が望みうる、日本を代表する最高のキャスト・スタッフとともにパリ公演に挑んだ。
野田が信頼する翻訳家コリーヌ・アトラン氏が、野田作品特有の台詞をパリならではの要素を盛り込みフランス語に翻訳し、字幕で上演。坂口安吾の小説をベースに野田が創り上げた壮大な世界感は、みごとにパリの観客に受け入れられた。まるで網の目のように複雑に絡まりあうストーリー展開にも関わらず、成熟したパリの観客たちは、作品を深く読み込み、俳優たちの一挙手一投足に食い入るように見入り、満員御礼の劇場の客席は大きな熱気と「ブラボー!」の喝采の拍手につつまれた。
鳥居の上 耳男(妻夫木聡)、夜長姫(深津絵里)中央 オオアマ(天海祐希)photo:Nathalie Vu-Dinh
東京芸術劇場では、野田秀樹が芸術監督に就任して以降、海外への発信、海外の劇場との交流を積極的に行い、2018年はヨーロッパ・ツアー(ロンドン(英国)、シビウ国際演劇祭(ルーマニア)などにも参加。今回のパリでの公演は、野田秀樹にとっては、今年2本目の海外公演となり、海外でも評価されている。
『贋作桜の森の満開の下』パリ公演は、10月3日まで計5回の公演を行った後、パリでの確かな観客の手応えを携え、大阪・新歌舞伎座(10月13日~10月21日)、福岡・北九州芸術劇場大ホール(10月25日~29日)経て、ふたたび東京芸術劇場プレイハウス(11月3日~11月25日)にて上演されます。
中央 耳男(妻夫木)奥赤麻呂(藤井隆)ハンニャロ(秋山菜津子)夜長姫(深津絵里)photo:Nathalie Vu-Dinh
■主演:耳男<妻夫木聡>パリ公演28日初日直後のコメント
「日本でも、フランスでも演じる上では関係ないと思っていたけれど、始まった途端に、客席から感じた情熱的な匂いは、まさにフランスならではの感覚でした。
観客からは、期待感と同時に、いったいどんなものを日本人が見せてくれるんだ。という、挑発的なまなざしも感じました。
言葉のテンポも速いので、フランスの観客に、この作品に込めた野田さんの考えがうまく伝わっているだろうかと気になりましたが、1幕が終わったところで、客席から大きな拍手が沸き起こったのは、日本ではなかったことでした。やはり、野田さんの創る作品はパリでも愛されているんだな。と、確かな手応えを感じました。
この作品は、視覚的な日本らしさもさることながら、手作り感や泥臭さという日本人ならではの良さが多いに詰まっているので、本当に伝えたい日本人らしさを、パリの観客に感じてもらえたらと思います」
■作・演出・出演:ヒダの王<野田秀樹>パリ公演28日初日直後のコメント
「カーテンコールで拍手をもらっている時の顔は、きっと、こわばっていたと思います。自分自身では、きっと良かったんだとは思いながらも、観客からの大きな拍手や歓声を聞いても、まだ信じられない思いでした。
初日のパーティーで、観てくれた方の感想を聞いて、ようやく安心した。素直にうれしいと感じることができました。
アナログな見立てを取り入れた演出をすることには、勇気がいったんですが、坂口安吾は、「文学のふるさと」という言葉をつくりましたが、アナログこそ、「演劇のふるさと」だと、それが海を越えても通用するんだということを実感しました。これからも謙虚に邁進していきたいと思います」
【パリ・国立シャイヨー劇場ジャポニスム2018公式企画『贋作桜の森の満開の下』】
日程・会場:
9/28(金)~10/3(水)
フランス パリ・国立シャイヨー劇場(ジャン・ヴィラール劇場)
Theatre National de Chaillot/ Salle Jean Vilar
■フランス パリ・国立シャイヨー劇場
会場となったシャイヨー劇場は、フランス国内にある5つの国立劇場の一つ。1939年に創立され、パリ市内でもプレステージ性が高く、欧州でも権威ある代表的な舞踊劇場文化施設の一つとして知られています。シャイヨー劇場の2018年シーズンプログラムを発表した発表会に、日本から唯一野田秀樹が出席し、プログラムの発表を行いました。このシャイヨーシーズンプログラム発表の場に登壇することは、演劇界でも世界的に権威のあることです。