“デキる”のみをものさしに、今後の舞台界を担っていくであろう、注目株の若手俳優をピックアップ。彼らが「デキメン(=デキる男優)」である理由、そして、隠れた本音をロング・インタビューで探る!
【第8回】平野良 RYO HIRANO
実は人見知りで不器用な、マニュアル人間です
Writer’s view
平野さんを初めて見たのは舞台ではなく、「戦国鍋TV」。今の若手男優シーンを語るに欠かせないこの伝説的バラエティ番組における彼は、私にはやや異質に映りました。歌も芝居も、周りの俳優たちとのやり取りもどこか手慣れた感じ。キュート系のルックスとその持ち味とのアンバランスがまた、「気になる!」に拍車をかけました。それから何度か取材もしたけれど、やはりどこかつかみどころがない。ならばということで、平野良の内面を丸裸にする(?)ロングインタビューを敢行です!
取材・文/武田吏都
――平野さんは中学生のときに芸能活動を開始。途中4年間ほどブランクがあって、成人したのち再び芸能界に、という経歴だとか。まず最初に芸能界入りしたきっかけは?
平野 物心ついたときから世に出るようなことを何かやりたくて、「歌手になる!」とか「お笑い芸人になる!」とかずっと言ってたんです。それにテレビっ子だったんですけど、僕が子供のときって学園モノのドラマがめっちゃ多かったんですよ。それこそ今出ている舞台「SONG WRITERS」を演出している(岸谷)五朗さん主演の「みにくいアヒルの子」とか、「それが答えだ!」とか「聖者の行進」とか。「年の近い人がこんな仕事していいなぁ」っていうのがきっかけで、新聞の広告を見て、自分で劇団東俳に応募しました。「3年B組金八先生」(第5シリーズ)に出たとき、その劇団の広告に自分の写真が載ったことがものすごくうれしかったですね。
――一時期お休みしていたのはどういう理由から?
平野 高2から4年間ぐらいやってなかったんですよね。武田鉄矢さんとか西田敏行さんとかベテランの方と仕事させていただいてお話を聞くと、皆さん何か免許を持っていたり社会経験があったりして、それを活かしてこの仕事をしていらっしゃる。僕は昔からやんちゃだし、世間を知らなくていきなり芸能界に入って。「金八」は始めて1年ちょいくらいで決まって、オーディションにもほぼ落ちたことなかったんですよ。だから「まあ、こんなもんか」みたいなちょっとナメた子供で、「このまま行ったらオレ潰れるな」と思ったんですよね。共演者とかスタッフさんに「どうしましょうかねえ?」って聞きまくったら、「この仕事を続けるなら人脈作りが大切だから大学に行け」という意見も多くて。なので予備校に通ったりもしたんですけど、人脈作るためだけに親に大金払わせていいのかとも思ったし、そのためだけだったら1回社会に出ようと思って。バイトから始めて、いろんな会社に就職しました。いろんな仕事をやればやるほど、自分の技術や知識にもなるし。世の中がどういうお金の流れになっているか、みたいなことも知っておきたかったから。
――でも、いつかは芸能界に戻るつもりだったんですよね?
平野 そのための肥やしにしようと思って1回辞めたんですけど、もしかしたら本当に自分に合う仕事があるかもしれないとも思ってました。ちっちゃい頃から周りの人とか占い師さんに「キミはお金を動かす金融関係の仕事に就きなさい」って言われて育ったっていうのもあったし(笑)。ウチは商売をしているんですけど、親父もたぶん僕が継ぐもんだと思っていたし。だけど、どの仕事も楽しくないことはないけどそれなりで、なんか充たされないというか。「芸能やってるときはもうちょっと面白かったなぁ」みたいなのがありつつ21歳ぐらいまでとりあえず続けていたんですけど、IT系の仕事をしていたとき、販売員の指導をしに電気店に行ったんですね。テレビ売り場にテレビがぶわーっと並んでるじゃないですか。そこでたまたま、僕が出てた「金八」の再放送が流れたんですよ。お客のおばちゃんに、「あれ? アンタ?」って言われて、「あ、ああ~」ってなったとき、「あ、ダメだ。芸能界に戻ろう」って思いました。そこで、「そうなんですよ、昔やってたんですよ~」みたいに吹っ切って自慢げに話せていたらたぶんそのまま社会人の方が向いてたんでしょうけど、なんかちょっと恥ずかしかったというか、「今ここで何やってるんだろ」って思っちゃったから。
――そのとき、自分の姿がテレビで流れたということに運命を感じますねえ。さっきのお話にもありましたが、最初に芸能界入りしたときから、わりとトントン拍子だったんですね。
平野 マセてたのかもしれないですね。当時、渡部篤郎さんとか窪塚洋介さんとかクセのある芝居をする人が好きで、オーディションでも他の子みたいに「ナニナニから来ましたナニナニです! 趣味はナニナニ! お願いします!」みたいなことができなくて、「平野良です、よろしくお願いします……(ボソボソ)」みたいな。「キミ、渡部篤郎好きでしょ?」ってしょっちゅう言われてました(笑)。なんかちょっと変わった子だったのかもしれないですね。
――なるほど。平野さんを最初に見たときから感じていたのは、あまり表現が良くないかもしれませんが、でもむしろ褒めているつもりなのですが(笑)「こなれているな」と。子供のときから活動していると後から知って、キャリアの長さによるものなのかと思っていたんですけど、元々そういうタイプだったんですね。
平野 最初っからでした。「こなれてる」もめちゃめちゃ言われたし、「フレッシュさがない」っていうのは復帰してから一番言われましたね。「20代前半でフレッシュな演技ができないのは痛い」って言われて、ほんとに広辞苑とかパソコンで「フレッシュ」って言葉を調べましたもん。何がどうしたらフレッシュなんだろうってめっちゃ調べて、「とりあえず笑顔か」とか「ちょっと声高くしてみっか」とか(笑)。
――ご自分ではそういう持ち味はどこから来ていると思いますか?
平野 人って知識を入れれば入れるほど顔つきが変わりますよね。無知な人と学者さんだとやっぱり顔つきが全然違ったりするし。僕の場合、知識はないんですけど、昔からすごくよく夢を見るんですよ。全部覚えてるし、夢の中で10年20年過ごしていたり。そういう経験をちっちゃい頃からずーっとしているからかなぁ、なんて思うんですけど。あとは子供の頃からよく、親父の仕事仲間と遊びに行ったりしていたんで、同い年の子なんかと接するとやっぱり「子供っぽいな」と感じているような子供だったんですよね。
――初舞台は芸能界に復帰してからで、2008年の「ラフカット」。今でも毎年行われている、全キャストがオーディションで選ばれる“才能発掘”の舞台ですね。
平野 今の事務所に入ったとき、それまで映像しかやったことがなかったんで、「舞台のこと知らないし、できません」ってずっと言ってて。でも以前とは時代が変わって、舞台でしっかり実力をつけてからじゃないと何もできないと言われ、「じゃあ、受けまーす……」みたいな、最初はあまり乗り気じゃなかったんです。だけどこれが面白くて! 脚本・演出は羽原大介(映画「フラガール」、NHK朝ドラ「マッサン」などの脚本家)さんで、いきなり主演だったんです。それがプレッシャーでもありやりがいでもあったんですけど、とにかく何も知らないから、ト書きに「小声で」って書いてあったらほんとに全く聞こえないぐらいの小声でしゃべってみんなズッコケる、みたいな(笑)。「“小声“って書いてあるけど舞台ではちゃんと声を出すんだよ?」っていう段階から鍛えられました。「小声じゃなく小声を表現するって何だ?」って、最初ワケわかんなかったですね。先輩とカラオケボックスに行って、発声練習を教えてもらったりもしました。ドラマだと、良くも悪くもサクサク進んで、目の前にいない人を見ているテイでやったり、”演出“というものがいろいろある。対して舞台の、ほんとにその場で起こる感情をもっと大きくして表現するというのが初めてだったので、「面白いなぁ!」ってすごく思ったんですよね。その後すぐやったのが、ミュージカル「テニスの王子様」。舞台の演技の面白さを「ラフカット」で、魅せることの楽しさを「テニス」で教わったみたいな感じでした。
――テニミュはこれまた、全く異なる文化圏という感じだったのでは?
平野 そうなんですよ。性格があんなだったから、それまでずっと“個性派俳優”って言われてたのが、「テニス」出演が決まった瞬間、“イケメン俳優”になるんですよね。ジャンル変え(笑)。僕の地元では「あの平野がイケメン俳優になったらしいぞ!」って相当なお祭りになりました(笑)。
――言われ始めると、やっぱり見た目とか意識するものですか?
平野 めちゃめちゃしましたね! 写真の写り方なんて気にしたことなかったですけど、ブロマイドを撮って売ってそれがずっと残るってことだと、やっぱり意識して。写真の撮られ方とか、家でずーっと練習してました。
「テニス」は僕の第二シーズンの始まりの代表作というか、芸能生活再開ののろしを上げた作品だったので、大切にしたいなと思っています。でも全部が代表作……やっぱりこれまで自分が生み出した作品のキャラクターっていうのは子供みたいなもんで、全員優劣つけがたくてかわいいし、その子が評判悪いと悲しくなりますし。だからその分、ちゃんと愛情を注いであげなきゃとは思っています。
ミュージカル「テニスの王子様」(2008~10年) 一氏ユウジ役
©許斐 剛/集英社・NAS・テニスの王子様プロジェクト
©許斐 剛/集英社・マーベラスエンターテイメント・ネルケプランニング
――初舞台からまだ7年しか経っていませんが、それで言うと、たくさんの子供たちを生み出してきました。作品数がとても多いですが、これまでずっと走り続けてきて、肉体や精神の疲労を感じたりは?
平野 いや、僕は忙しい方がいいんで。読書や映画を見ることぐらいで趣味もそんなにないですし、仕事をしているときが一番楽しい。忙しいって、あんまり感じたことがないですね。
――もう少し、内面の謎解きをさせてください。平野さんといえば、なかなかのSキャラという印象があるのですが(笑)。
平野 どっちかと言ったらSに見えるでしょうし、僕もたぶんそう見せてます。でもぶっちゃけ、普通です(笑)。子供のときからずっとお笑いを見ていて、ほんとはボケるのも大好きなんですけど、僕らの世代ではツッコめる俳優って実は少ないので、そういうポジションを狙っていこうっていうのはありますね。僕、家でテレビ見ながらずっとしゃべってるんですよ。噛んだら「あ、噛んだ。噛んじゃったねえ?」とか。そういうときってだいたい2、3回噛み倒すから「今日はどうしちゃったんでしょうかねー」とか、朝からずっと(笑)。だから普段からやっている自分流のツッコミを実践している感じですかね。
――自由なキャラというイメージもありますよね。特に「ハンサム落語」(2013~2015年)みたいな演目では顕著になりますが。
平野 逆に“自由”って決めないと、僕、めっちゃマニュアル人間なんで。それは社会人のときの名残もあるんですけど。言葉遣いとか礼儀にすごく厳しい会社にいたことがあって、そこで矯正されたから、芸能を再開したとき逆に、直すのにすごく時間がかかりました。「お忙しいところ恐れ入ります。タレントとして所属しております平野良ですが……」なんて事務所に電話掛けて、「何、キミ!?」ってなったり(笑)。
――染まりやすいんですね。
平野 だから、マニュアル人間なんです。それって決められたらそれしかできない。そして理屈がわからないと動けない。それこそ運転免許をマニュアルで取ったんですけど、クラッチのシステムがわからなすぎてオタオタして、「おい、半クラ!」って教官にめちゃくちゃ怒られて。でもなぜここで半クラするのかがわからないから、どうしようもない。だから悔しくて、家に帰って車の部品とかシステムを全部勉強して頭に入れました。理屈がわかれば、できるんですけど。芝居もそうで、どう表現すれば伝わるかとか、それぞれの演出家が求めるものに対していろいろできるようにと思って、大きな書店に並んでいる演技法の本をたくさん読みました。その分、自分の引き出しに全くないものを急に言われるとめっちゃテンパって、「持ち帰らせてください!」ってタイプです。で、家でパソコンぶわーっ(=検索)みたいな(笑)。
――意外です。実際はわりと逆なのに、人並み以上に自由に見えている不思議……。
平野 作品の芯というものがあるとしたら、その周りにその作品をかたどっているものがあると思うんですよね。で、さらにその周りに薄くオーラがあって、そのオーラをギリはみ出すぐらいまでは自由が許されると思うんです。その全体像をわかっていなくて完全な自由に行っちゃうと作品が崩れちゃうかなというのは自分で考えて、「ここまでは出ていい。でももっと行こうとしちゃう人がいたら止めて戻さなきゃいけない」っていうのは感じます。そういうのを踏まえた上の限られた範囲内でしかやらないから、僕の中では意外と冒険してなかったりするんですよね。この流れで不協和音になることがわかっていながらやるっていうのは、僕はやっぱりちょっと勇気が出ない。村井(良大)くんに「平野くんのお芝居はなんか、数学っぽいですね」と言われたんですけど、確かに理数系だし、たぶんそうなんですよね。
「ハンサム落語 第六幕」(2015年)
――いま話に出た村井さんとは、6月の「殺意の衝動」で共演。同じ事務所に所属する人気者同士の初共演で話題を集めましたが、いかがでした?
平野 お芝居で絡むのは初めてでした。付き合いは8年9年になるし、定期的に事務所で会ったりするけども、どこか一線を引いている感じがお互いにあったんです。僕からすると、「村井くんはたぶんこういうタイプだろうな。だから俺の本心は言わないでおこう」みたいな。村井くんもたぶん同じだったと思うんですけど、それがもう、一切覆されましたね。初めて同じ稽古をしてお互いコミュニケーションをして、2人でメシ行って腹を割って話して……こんなに仲良くなるとは夢にも思わなかったってぐらい仲良くなりました。お互いに別の人物像を重ねていたところがあって、「こんな感じだと思わなかったわ」みたいな。ある意味、考え方とか根本はめちゃめちゃ似ていました。芝居法が違うんで、演技のアプローチの仕方なんかはやっぱり違うんですけど、普段生きているスタンスみたいなものもすごく近しくて。だからこれまでは仕事の流れ以外では1回も一緒にメシ行ったことがなかったんですけど、今はプライベートでも行くし。一緒にいて、めちゃめちゃ楽ですね。
amipro「殺意の衝動」(2015年)
――「殺意の衝動」は緊迫感ある密室劇で、後半では村井さんと一対一のシーンもありましたね。
平野 面白かったです。村井くんはアドリブしたりその場で芝居を変えるタイプじゃなく、しっかり掘り下げてくる人なんですけど、かといってそれがマンネリにならない。しっかりと毎回感じた上で同じ芝居を持ってこれるというのは、役者としてものすごい精神力がないとできないことなんで。芝居に対してストイックなんですよね。対面しているときのワクワク感というか、やっててすごいゾクゾクします。いつか、二人芝居をやりたいねって話はしているんですけど。
――そして現在、ミュージカル「SONG WRITERS」に出演中。この作品の2年前の初演が初の本格ミュージカル出演だったそうですが、そのときも軽妙なお芝居とともに、歌やダンスを軽やかにこなしている印象がありました。が、今回のインタビューの話の流れでいくと……。
平野 軽やかになんて、全然できません!(笑) 初演の顔合わせで震え上がったこと、今でも覚えています。だって、ミュージカル経験豊富なバケモノみたいな人がいっぱいじゃないですか! 五朗さんによく食事に連れて行ってもらっていろんなお話を聞いて、「やっぱり努力しないとダメだよ」という言葉もいただいて。そこからですね、ミュージカルもできるようになりたいなと思ったのは。歌には元々コンプレックスがあったんですけど歌唱指導を受けて、あの後から、歌う舞台にいろいろ出させてもらうようになって。だから今回の再演はすごく楽しみでもあり、自分の中で勝手にプレッシャーでもありました。初演のときは周りに着いていくのに必死で、とにかくがむしゃらにやっていたんです。ほんと、ガチガチでした。僕らギャング3人組、コング(桑田)さんと(植原)卓也と僕で歌って踊るシーンがあって、片足で立つという振りがあるんですけど、初演は緊張で足が震えちゃって、半分くらいバランス崩しちゃってました。1回、舞台から落ちそうになったぐらい(笑)。という状況だったので、今回は他のキャストの方みたいに何かを伝えられるように頑張んなきゃっていうのが、自分にとってのプチテーマでもあって。
「SONG WRITERS」(2015年) 写真提供/東宝演劇部
――再演では、平野さん演じるオカマのギャング、アントニオが初演よりも活躍している印象を受けました。
平野 あ、そうですか? 初演はなにせ僕の緊張がものすごかったので、ひとつキャラを決めて、それに入り込む芝居をずっとしていたんです。でも今回は、アントニオに少し深みを持たせたいと。例えば、オカマって高い声も低い声もいろんな声を持っているし、周りを見ている思慮深さがあったりする。そういう深みを出せたら、怖くもありかわいくもありコミカルでもありというキャラクターが見せられるかなと、五朗さんと相談しながら。初演はわりと一辺倒な、クセのあるオカマだったんですけど、今回は序盤中盤終盤で、ちょっとずつ変えてみてはいますね。
「SONG WRITERS」(2013年/初演)
写真提供/東宝演劇部 撮影/HIRO KIMURA
――それに伴い、と言いますか、カツラのお色直しもありますね(笑)。
平野 今回からです。初演は地毛でやっていたんですけど、今回はちょっと髪を切れなくて、カツラを作ることになって。それで2パターンのどちらかを選ぶつもりだったんですけど、五朗さんが「どっちもオモロいなぁ」って決めかねていたんですよね。衣裳を着けた通し稽古のときに一幕と二幕でカツラを変えてやってみて、それでどっちかに決めさせてくれということになったんですけど、終わったら、「ゴメン良、両方行こう」と(笑)。一幕と二幕で時間経過があるので、変化があってもいいだろうということでああなりました。
「SONG WRITERS」(2015年) 写真提供/東宝演劇部
――「SONG WRITERS」初演でミュージカルもできるようになりたいと思ったという話がありましたが、あの作品を経ての主演作、音劇「朱と煤 aka to kuro」(2015年)では、しっかりと”ミュージカル俳優していた“印象がありました。
平野 あの作品は、最初あんなに曲があるとは思わなくて。「だって僕ですよ?」っていうか(笑)、ミュージカルをほぼやったことのない自分が主演で、まさかそんなに歌わないだろうと思って音取りに行ったら、作品全体で20曲以上あり、僕がほぼ歌う。しかも岩崎廉さんというブロードウェイミュージカルでも活躍しているものすごい方の楽曲で、「歌めちゃめちゃムズいじゃん!」と(笑)。芸能生活で初めてマネージャーに「ちょっと今回ダメかもしれない。できないかもしれない」って言いました(苦笑)。でもこれを乗り越えなきゃと思って、無我夢中でしたね。そのとき、「SONG WRITERS」で共演している中川(晃教)さんの歌をめっちゃ聴いていました。あの方は、ザ・天才じゃないですか。歌う仕事をやらせてもらうときは、まず中川さんの歌を聴きます。どうやら影響していたみたいで、ファンの方に「もしかして、中川さんの曲聴いてません?」って言われたこともある(笑)。全然足元にも及ばないですけど、それぐらいずっと聴いてました。
でも、なんでも毎日の1個1個の訓練の積み重ねが結果につながっていくんだなっていうのを感じます。「SONG WRITERS」は五朗さんの意向で、稽古中も本番も、アップして発声して体動かしてというのを全員でやるんですね。初演のとき身についたこの「SONG WRITERS」の発声とストレッチはずっと続けようと思って、この2年間、別の現場でもずっとやっていたんです。そしたら、初演では出せなかった音程が出せるようになっていたり、良くないクセもなくなっていたりして。だからほんとに、毎日の積み重ねだなって感じですね。
――今回たっぷりお話伺って、思い描いていた平野さん像がたくさん覆された感じがあります。なんでもサラリと器用にこなすあの感じの裏には、感じるより「考える」、そして「コツコツ型」の性質が隠されていたんだなと。
平野 しかも人見知り。だから仕事スイッチを入れないと、できなかったりします。実はめちゃめちゃ不器用なんですよ。
Q.「イケメン」というフレーズに感じることは?
あ、僕これ答え出しちゃいますね(笑)。「ハンサム」「男前」「イケメン」って全部意味が違うんです。僕がずっと出ている「ハンサム落語」における概念なんですけど、「ハンサム」は、単純に顔がきれいなだけ。「男前」はどの時代でも好かれるいい男。「イケメン」はその時代に乗っかった好かれる顔、です。
Q.「デキメン」が思う「デキメン」
先輩でそう思う方はたくさんいます。唐沢寿明さんとか江口洋介さんとか、映像も舞台も両方できる人はやっぱりすごいなって。それこそ(岸谷)五朗さんも幅広くて、嫉妬するぐらいすごい先輩。そういう方と一緒にお仕事できて、いろいろ学んだり見ることができるのは幸せですね。
同世代では、ただのファンなんですけど、森山未來さん。同い年だけどもう一生超えられないだろうなって、敗北宣言してもいいぐらい好きです。敵わない、あの感じには。
やっぱり、なんでもできるようになりたいっていうのが根底にあるのかもしれないですね。エンターテインメントをやるからにはどの方向も怠りたくないし、僕も、自分ができることはあきらめないでいただいたものは全部、の方向で掘り下げていきたいです。
Q.「いい俳優」とは?
人に与えられる人、しっかり届けられる人。
例えばイケメン俳優と言われている人は“カッコいい”ということを与えているから、それだけでも尊敬に値すると思いますけど、与えられる数が多ければ多いほどいいですよね。喜び、悲しみ、情けなさ、人生の無常……。僕もいま旅の途中ですけど、より多くのことを観る方に届けられるようになりたいです。
いろんな顔を持っていて、万能だと思います。どんな役でも全力でやりきり、自分で納得できるまで追求する役者。性格は、見た目より真面目です(笑)。
未知の世界にどんどん挑戦していって、将来どんな役でもできる役者に育っていってほしいと思います。まだやっていない役をやらせてみたいですね。
(株式会社ウェーブマスター 担当マネージャー)
Profile
平野良 ひらの・りょう
1984年5月20日生まれ、神奈川県出身。B型。中学生のときに劇団東俳に所属し、1999年、「3年B組金八先生」(第5シリーズ)に出演。テレビドラマを中心に活動する。高校2年で芸能活動を休止し、4年のブランクを経て再開。ミュージカル「テニスの王子様」(一氏ユウジ役)、バラエティ番組「戦国鍋TV~なんとなく歴史が学べる映像~」などで注目を集め、舞台を中心に活躍中。メインMCを務める「平野良のおもいッきり木曜日」がニコニコ動画で放送中(毎月第1木曜22時~)
【代表作】舞台/amipro「殺意の衝動」(2015年)、ムッシュ・モウソワール「ブラック・ベルト」(2015年)、「ペルソナ4 ジ・アルティメット イン マヨナカアリーナ」(2014年)、音劇「朱と煤 aka to kuro」(2014年)、「源氏物語~夢浮橋~」(2014年)、「メサイア-紫微ノ章-」(2014年)、「最遊記歌劇伝-God child-」(2014年)、「ミニチュア!!」(2014年)、「一郎ちゃんがいく。」(2014年)、「歳末明治座る・フェア~年末だよ!みんな集合!!~」(2013年)、「SONG WRITERS」(2013年、2015年)、「ママと僕たち」(2013年、2015年)、「ハンサム落語」(2013~2015年)、「姫子と七人のマモル」(2010年)、「ふしぎ遊戯」(2010年、2011年)、「ソラオの世界」(2010年、2011年)、ミュージカル「テニスの王子様」(2008~2010年)、「ラフカット2008~愛のメモリー~」(2008年) 【TV】「Messiah メサイア-影青ノ章-」(2015年)、「戦国★男士」(2011年)、「戦国鍋TV~なんとなく歴史が学べる映像~」(2010~2012年)、「パパとムスメの7日間」(2007年)、「天国に一番近い男」(2001年)、「3年B組金八先生」第5シリーズ(1999年)
【映画】「フェアトレードボーイ2」(2015年)、「フェアトレードボーイ」(2014年)
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