COCOON PRODUCTION 2024『ふくすけ2024-歌舞伎町黙示録-』阿部サダヲ インタビュー

松尾スズキ作・演出による『ふくすけ』が東京・THEATER MILANO-Zaにて2024年7月9日(火)より開幕し、その後、ロームシアター京都メインホール、キャナルシティ劇場(福岡)にて上演される。

『ふくすけ』は、薬剤被害によって障がいをもった少年“フクスケ”を巡る毒々しい人間ドラマ。これまで1991年、1998年、2012年と、上演されるたびに大きな話題となってきた松尾スズキの代表作だ。

今作は松尾が前作までの台本に手を加え、新たな視点で描かれる物語になるという。1998年、2012年に出演し、今回で3度目の出演となる阿部サダヲに話を聞いた。

ーー『ふくすけ』が12年ぶりに上演されます

(東京公演を)歌舞伎町でやれるのは、いいなっていうのはありますよね。サブタイトルに“歌舞伎町黙示録”ってついたけど、そういえば『ふくすけ』って歌舞伎町の話なんだよなって。そこでできるのは面白いと思います。

ーー『ふくすけ』は、様々な境遇を持つ登場人物たちが入り乱れる物語です。今作は松尾スズキさんが台本に手を入れられたということですが、もう読まれましたか?

読みました。全体的に大きくは変わっていないけど、カットされているシーンがある分、ごっそり違うものが入ってきている印象もあります。フクスケが入院することになる病院の警備員・コオロギとサカエ夫婦の“エピソード0”的なものが描かれていたり。前回の公演から12年経ったんだなと感じました。

ーー阿部さんはこれまでフクスケ役でしたが、役が代わることについては?

フクスケってすっごい役なんですけど、12年前に演じたときに次がある場合はフクスケじゃないなとは思っていました。なにしろフクスケは少年ですからね。そういう意味で言うと当時から、次にやるならコオロギ役をやりたいなと思っていました。

ーーそうなんですね

いつか手を出してみたい役というか。今回、コオロギ役をやることになって嬉しい反面、プレッシャーもあります。しかもサカエ役は黒木華さんに代わるので、どうやって作っていくんだろうと。

ーー台本を読まれてコオロギのイメージは変わりましたか?

印象は変わらなかったです。ただ、コオロギって怖い人なんですよね。得体の知れなさというか、空っぽだけど空っぽじゃないみたいな。そういう人って何をモチーフにしていいかわからないというか……松尾さんとかオクイシュージさんがやっていたものをベースにするんでしょうけど、そのままのコピーにはしたくないですし。

ーーどんなコオロギになるんでしょうね

松尾さんがコオロギ役をやっていたときの年齢は20代後半だと思うんですけど、僕はもう50歳過ぎていますからね。年を取った感じのコオロギの雰囲気は出してみたいと思っています。な~んか嫌だけど、すごく気になるみたいな……うーん、まあ、コオロギって人に関してはまだわからないですね(笑)。

ーー強烈なキャラクターであることは間違いないです

コオロギは怖い人なんだけど、やっぱり僕は笑いが好きなので、笑いの部分みたいなものは出していきたいと思っています。コオロギが持っている“なんかその場に馴染んでいくパワー”というか、いろいろなものにハマっていく強さ。すぐに馴染んじゃうっていうのは面白いし、一つに留まらない役を演じられるのは、役者をやっていて楽しいことですね。

ーー今回で4回目の『ふくすけ』になるわけですが、阿部さんが参加された98年の世田谷パブリックシアター、2012年のシアターコクーンでの印象的なエピソードはありますか?

世田谷パブリックシアターのときは(片桐)はいりさんと出会った頃で、「もてなさない劇団だね」って言われた気がします(笑)。僕らは終演後も食事に誘ったりせず静かに帰っていくので「心配だわ~」って(笑)。

ーー阿部さんご自身の変化はありますか?

どうだろう?当時はフクスケ役をやったことで、“こういう役もできるようになったんだ”って役者として変われたイメージがありました。今回、コオロギ役をやることで、再び“そういう役もやるんだ”と感じてもらえればと思います。

ーー同じお芝居でも違う役で出ることが増えていってますよね

『キレイ』(松尾スズキによる舞台作品。これまで4回上演されている)とかもそうですけど、自分が(それまで宮藤官九郎や田辺誠一がやっていた)“マジシャン”役をやると思っていなかったので、松尾さんの僕に対する印象がちょっとずつ変わってきているのかもしれないなと思っています。

ーー『ふくすけ』にはじめて出演される黒木華さん、岸井ゆきのさん、松本穂香さんに関してはいかがでしょうか?

新しい感じがします。僕もはじめましての方が多いし、特に女優さんたちは松尾さんの舞台演出を受けるのもはじめての方もいらっしゃるだろうし。楽しみです。

ーーこれまで阿部さんがやられていたフクスケ役は岸井ゆきのさんが演じられます

いろんなチャレンジをしてくれそうな女優さんというイメージが僕の中で勝手にあるので楽しみです。

ーー2024年版の『ふくすけ』もやっぱり凄いものになりそうですね。時代の変化は感じられていますか?

言葉の変化はあるかも知れないけど、起きている事件だったりそういう部分は変わらない気がします。むしろ時代が逆に近づいているんじゃないかっていう気もします。何があっても不思議じゃない世の中なので。内容は全然、古くなっていないですし。

ーーはじめて見る人はびっくりするかもですけどね

舞台でこういうことをやってるんだって思う方も多いかも知れませんね。そこに黒木さんや岸井さんが出るのも含めて、演劇って面白いなって思っていただけるのではと思います。

ーーありがとうございました

取材・文/高畠正人

ローソンチケットでは6月23日(日)10:00より東京・追加公演のチケット一般発売を実施予定。詳細は公演概要下チケット情報はこちらをチェック!