無題シリーズvol.1 リーディング劇「女中たち」Jean GENET│堀越涼 インタビュー

異なるキャストの組み合わせで上演。
「予想外のことが起こるといいと期待しています」

フランスの劇作家ジャン・ジュネの傑作を、能楽堂という日本の伝統を感じる空間で上演するリーディング劇『女中たち』Jean GENET。日本の古典への造詣も深いあやめ十八番の堀越涼が演出を務める。

「リーディング劇の演出をしたことはほとんど無いのですが、とてもワクワクしています。海外作品を日本ならではの場所でやるというのは、異化効果を狙ったものになると思いますが、能楽堂という場所をお借りしてやるからには、普段よりも一段上げた気合いで臨みたいですね。橋掛かりなど特殊な構造の中で、しかも生演奏でお届けするので、とても豪華な公演になるはず」

『女中たち』は、女中として働く姉妹が奥様の留守中に、奥様役と女中役に扮してごっこ遊びに興じていくという物語だ。

「2人がごっこ遊びをしているうちに、その境目がぐちゃぐちゃになっていくようなお話です。自分で脚本を書く場合も、過去と現代とか、夢とうつつとか、境目がうねうねと曖昧になっていくようなものを書いてきているので、物語としてとても面白いと思っています。ただリーディングなので、私が得意な空間演出的ではないところで、戯曲の持つ面白さを引き出さなければならない。音楽が生演奏である意味も見出さなければならないし、能楽堂なら和風でしょ、という想像の範疇だけでは面白くないとも感じています。そういう意味で、本当にいろいろとチャレンジングなことばかりですね」

物語からは、女性たちを取り巻く貧富、労働、愛情といった問題が浮き彫りにされていく。そこには現代にも通じる課題が見え隠れしているようにも思えるが…。

「個人的な考えとしては、社会に対しての意義とか、社会を切り取ったような演出をあまりしないようにしています。結果的に、時代の芯を食ったような作品になることはあるのですが、社会や現代を切り取ってしまうと、10年後20年後に再会したときに遺るものが無い気がするんです。私の好みとしては、普遍的なものとして描きたいんです」

演出家として、数多くの作品を手掛けてきた堀越。稽古場づくりでは、笑顔でいることを何よりも大切にしていると話す。

「実家のお団子屋さんで働いていたんですけど、観光地にあるのでとても忙しくて、仏頂面になってしまって…。そしたら妻に『笑った方がいい』と言われました。それで、ニコニコ笑顔で接客していたら、自分も気分がいいし、お客さんも気持ちがいい。だから、稽古場でもニコニコしています。実際、怒っている人がいると、怒られた人だけではなく周りのパフォーマンスも下がるという研究結果もあるそうなんですよ。稽古場でも笑顔でいること。それは実家の商売から学びました」

今回は異なるキャストの組み合わせで上演される。意外な組み合わせによる化学反応にも期待したい。
「面白いもので、同じ台本でも演じる俳優が変われば印象が全く変わってくるんですよ。やはりその俳優の方の培ってきたものがあって、その影響はどうしても受けざるを得ない。そして、相手が変わればリアクションも変わってきます。今回はいろいろな組み合わせで上演されますので、お互いに影響し合って予想外のことが起こるといいなと期待しています」

インタビュー&文/宮崎新之
撮影/村上宗一郎

※構成/月刊ローチケ編集部 7月15日号より転載
※写真は誌面と異なります

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【プロフィール】

堀越涼
■ホリコシ リョウ
あやめ十八番主宰。作家、演出家、俳優として幅広く活躍。