「有澤樟太郎の悪役が見たいと思った」少年社中『トゥーランドット~廃墟に眠る少年の夢~』有澤樟太郎×毛利亘宏インタビュー

20周年という特別な1年を駆け抜けてきた少年社中。そのファイナルを飾る舞台が、来年1月より東京・大阪・福岡の3都市で上演される。タイトルは、『トゥーランドット~廃墟に眠る少年の夢~』。舞台は、遠い未来。世界を統治するトゥーランドット姫と、厳格な管理社会を打ち壊そうとするレジスタンスの少年との出会いと恋、そして反逆の物語を「演劇で世界を変える。世界は変わる。」というテーマのもと、描いていく。

生駒里奈、松田凌ら多彩な出演者を迎える中、注目は人気急上昇中の俳優・有澤樟太郎だ。主宰の毛利亘宏とは、舞台「七つの大罪 The STAGE」で初顔合わせ。本作では、レジスタンスによる反乱を弾圧しようとする悪役を演じる。「お客さんが見たことのない有澤くんを見せたい」と意気込む毛利。初参加となる少年社中で、どんな有澤樟太郎を目撃できるのだろうか。

 

毛利さんには、稽古場でいきなり脱がされました(笑)

――毛利さんと有澤さんと言えば、この夏に上演された舞台「七つの大罪 The STAGE」が記憶に新しいですが、当時の想い出を振り返りつつお話を聞いていきたいと思います。

有澤「毛利さんとの思い出と言えば、「七つの大罪」の稽古場で、いきなり脱がされたのがインパクトが強くて……(笑)」

毛利「文字にしたら誤解を生みやすいね、それ(笑)」

有澤「でも、あれで度胸がつきました(笑)」

毛利「有澤くん演じるバンという役が最初のシーンからいきなり上裸だったんですよ。で、どうせ脱ぐなら、じゃあ脱いでみようかと(笑)」

有澤「『まだ仕上げている最中で未完成なんですけど……』って言いながら脱ぎました(笑)」

 

――冒頭から見出しに使いやすい話をありがとうございます(笑)。毛利さんから見て、有澤樟太郎さんの俳優としての魅力はどんなところですか?

毛利「『センスあるな』というのが第一印象です。バンのキャラクターを最初からすっと掴んでいて、感じも良く。噂に違わぬっていう感じでしたね」

有澤「ありがとうございます(照)」

毛利「あとは、すごく色っぽいんですよね。にじみ出る艶があるというか。それでいて謙虚だし、稽古にも真面目で、浮ついたところがない。一緒にやってみて評判の良さを実感しました」

――今回の役も、やはり有澤さんをイメージして?

毛利「そうですね。バンは軽いところもありつつ、根は義理に厚い正義の味方。なら次は真逆に振って、悪役を演じる有澤くんが見たいな、と。お客さんも見たことのない有澤くんを見せたいな、というのが今の気持ち。はっきり主人公たちと対立する役どころになると思うで、どこまでアクセルを踏もうかなと考えています」

有澤「悪役というお話をいただいて思ったのが、僕、人と殴り合いの喧嘩をしたことが人生において一度もないんですよ。喧嘩をしたことがある相手と言ったら、弟ぐらいで……(汗)」

毛利「いいやつだもんな(笑)」

有澤「やっぱり本当の自分からにじみ出るものってあるじゃないですか。バンをやるときも同じことを思って。人を殴ったことがない人が殴るお芝居をしても、ちゃんとうまくやらないと『アイツ、絶対人を殴ったことないな』ってバレちゃう。だからそこのリアリティは絶対大事にしたいと思ったんです。今回も薄っぺらい悪役にはしたくない。ちゃんと悪役としての怖さを出せるようにしたいな、と。一言で悪役と言っても、いろんなアプローチがあると思うので、自分に合ったやり方を探したいです」

毛利「そこで言うと、単にダークなだけじゃなく、体制側の人間らしい真面目で厳格な悪役になると思います。僕は有澤くんの持っている品の良さがすごく好きで。そこをしっかりと活かせるキャラクターにするつもりです」

有澤「ありがとうございます。台本をいただくのが楽しみです!」

 

――有澤さんから見た少年社中の魅力を教えてください。

有澤「演劇って幕が上がって最初の5分がすごく大事だと思っていて。少年社中さんのお芝居は上演開始5分であっという間に物語の世界に引きこまれてしまうんです。照明も綺麗で、見た目も華やか。エンターテイメントに特化した舞台が、社中さんの魅力だと思います。しかもお話の中に必ず仕掛けがあって、それが物語が進むにつれ徐々に明らかになっていくので、後半まで楽しさが尽きない。僕は『パラノイア★サーカス』を見たときに、こんなにワクワクする舞台があるんだって感動しました」

毛利「僕にとっての劇団は、今自分が持っている技術や面白いと思っていることのすべてを注ぎ込んでエンターテイメントをつくれる場所。あとは外現場より“みんなでつくっている感”が強いのも特色です。その人にしかできない役を僕が書いて、それを役者さんたちが僕の想像を超えたかたちで投げ返してくれる。そのキャッチボールを繰り返した末に生まれる表現というのが少年社中にはあって、それは間違いなく劇場でしか見られないものになっている。そうした役者さんとのセッションが、少年社中でのこだわりのひとつですね」

有澤「僕は劇団さんの公演に出させていただくのは今回が初めてなんです。特に今回は20周年記念のファイナル。みなさん気合いが入っていると思うので、たくさんの方からいろんなものを吸収したいですし、お客さんを楽しませるためにも、まず稽古では演出席にいる毛利さんを楽しませないとなって考えています」

毛利「うちは毎回、出演してもらった方々にはどっぷり少年社中のカラーに浸かってもらっていて。期間中は劇団員と同じ地平に立って、劇団員と同じように公演に取り組んでもらっているんです。楽屋では炊き出しもするので、ぜひ同じ釜の飯を食って、有澤くんとも長年の友みたいに一緒に芝居をつくっていければ」

少年社中はずっとエンタメをつくり続けるぞという覚悟の表われのようなお芝居になる

――有澤さんがおっしゃったように、少年社中と言えばエンタメ性溢れる演出が魅力のひとつですが、今回はどんなところが期待できそうですか?

毛利「今回はアクションに栗田政明さん、振付に森川次郎さん、KOHMENさん、本山新之助さんの3人をお迎えしています。皆さん、僕が演劇をつくる上で絶対に欠かせない人たち。特に振付の3人は揃えば、すごいエンターテイメントになることは間違いない。そもそも振付師が3人もいる舞台自体、なかなかない。僕にとっては挑戦ですし、それぞれの個性が活きる舞台になると思います」

有澤「栗田さんとKOHMENさんとは「七つの大罪」でもご一緒させていただいて。おふたりのアクションやダンスがつくたびに、やっている僕らが真っ先に「これは勝ったな」と思えた、すごい方たちです。特に僕が興奮したのは、メリオダスが魔神化するところ。あれを見た瞬間、すごいなって圧倒されました」

毛利「あれは僕も「勝ったな」って思った(笑)」

有澤「他にも喧嘩祭のシーンとか、やっている側もテンションが上がるし、早くお客さんに見せたいなと思えるアクションやダンスをつけてくださる方たちなので、今回もどんなものが生まれるのかすごく楽しみです」

 

――ちなみに有澤さんは事務所の先輩である松田凌さんと、初舞台である舞台「K」第二章 -AROUSAL OF KING-以来、久々の共演です。

有澤「この作品が決まったとき、凌さんから『今度社中さんの舞台で一緒にやるやんな。樟太郎と初舞台ぶりに共演できるのがめっちゃ嬉しくて電話してん』って連絡が来て。そんなふうに喜んでもらえたことに、僕も嬉しくなりました」

毛利「いい話だなあ。ちなみに僕は『仮面ライダー鎧武/ガイム』の出演が決まったとき、松田凌に『おめでとう』って送ったんですけど結局返ってきませんでした(笑)」

有澤「(笑)。今回、そんな凌さんと対決する役というのも楽しみです。板の上に立ったら先輩後輩の壁を越えて、肩を並べて正々堂々お芝居していきたいです」

 

――では、楽しみにしている読者のみなさんへメッセージをお願いします。

毛利「20周年記念ファイナルと謳っていますが、僕としては次のための一歩。1年かけてこの20周年企画をやってきましたが、いろんな意味で覚悟が決まったというか。ずっと少年社中を続けていくぞという宣戦布告のような、少年社中はエンタメをつくり続けるぞという覚悟の表われのようなお芝居にするつもりです。思い切り楽しめて、かついろんな感情を持って帰っていただける作品になると思いますので、ぜひ劇場へお越しください」

有澤「僕にとっては念願の少年社中さんの舞台に出演ということで、すごく気合いが入っています。何より劇団のみなさんにとって、特別な想いのこもった公演だと思うので、ちゃんと自分が原動力のひとつとなれるように頑張り、みなさんから謙虚にたくさんのことを学びたいです。少年社中のみなさんと作品をつくっていく作業が今から楽しみなので、このエネルギーをしっかりお客さんにも届けたいと思います」

 

インタビュー・文/横川良明
写真/ローソンチケット

 

【プロフィール】
有澤樟太郎
■アリサワ ショウタロウ 1995年生まれ。兵庫県出身。15年、舞台「K」第二章 -AROUSAL OF KING-で初舞台。ミュージカル『刀剣乱舞』〜幕末天狼傳〜の和泉守兼定 役で人気を集め、以降、舞台「クジラの子らは砂上に歌う」、「七つの大罪 The STAGE」など数多くの舞台に出演。2018年12月24日には『月刊有澤樟太郎×小林裕和』の発売を予定している。

毛利亘宏
■モウリ ノブヒロ 1975年生まれ。愛知県出身。98年、少年社中を旗揚げ。以来、全作品の作・演出を手がけている。その他の作品にミュージカル『薄桜鬼』シリーズ(脚本・演出・作詞)、「七つの大罪 The STAGE」(脚本・演出)など。また、現在放送中の『仮面ライダージオウ』や『宇宙戦隊キュウレンジャー』など特撮ドラマの脚本も多数手がけている。