戦場に残された敵対する二人の若い兵士「敵は、ほんとうに、モンスターなのか?」
幾度も限界を迎えながら、やがて「彼」を知ることで、勇気をもって新たな未来へと踏み出す希望の物語。
9月17日(火)にスパイラルホールにてモチロンプロデュース『ボクの穴、彼の穴。W』が開幕した。
本作は松尾スズキが初めて翻訳したフランスの童話作家デビッド・カリ著・セルジュ・ブロック絵『ボクの穴、彼の穴。』(千倉書房)の絵本が原作の二人芝居。
戦場に残された敵対する二人の若い兵士。今日も向こうの穴では、敵(彼)がボクに銃を向けている。孤独に苛まれ、星空に癒され、幾度も限界を迎えながら、やがて「彼」を知ることで、勇気をもって新たな未来へと踏み出す希望の物語。舞台は戦場だが、この作品にはユーモアと人間の根源的な優しさが満ち溢れている。
今回、翻案・脚本・演出を務めるのは卓越した発想力と機知に富んだ演出で奇想天外な世界観を愛情一杯に描き、数々の作品でその才能を発揮しているノゾエ征爾。出演には井之脇海・上川周作ペアの<ボクチーム>、窪塚愛流・篠原悠伸ペアの<彼チーム>。2チームWキャストで上演する。
2チーム交互に上演することで、それぞれの俳優の魅力がより鮮明になる。それぞれ違う魅力を放つ本作品に乞うご期待!
コメント
ノゾエ征爾(翻案・脚本・演出)
もう一カ月以上稽古しているのに、鮮度バリバリな彼らに、メモすることも忘れて見入ってしまう自分がいます。
観る者を引き込ませる彼らを、引き込み俳優と呼ぶことにしました。
引き込み俳優は、時に品よく、時に粗挽きに人を引き込みます。そのセンスに驚きます。
この引き込まれる快感を私1人で味わうのはあまりに勿体ない。是非是非です!
<ボクチーム>
井之脇海/ボクA役
1ヶ月半の稽古期間、丁寧に話し合いを重ねて、あらゆる芝居の可能性を試して、新しい発見とたくさん出会うことができました。
すでにボクと彼の穴の中には、ギュウギュウに僕らの想いやメッセージが詰まっています。皆さんに、それが溢れて届くよう、毎公演、全身全霊で演じるのみです。
戦争の話ですが、決して他人事ではなく受け取っていただける作品になっていますので、ぜひ観ていただきたいです。
劇場でお待ちしています!
上川周作/ボクB役
稽古期間中は台詞一つひとつに実感を持てるように色んなことを想像したり、自分の経験から近い感覚を探してみたりして、繰り返し稽古を重ねていきました。
これから稽古場で体感したことを大切にしながら、劇場では毎回新しい気持ちで役に身を委ねて行きたいと思います。
井之脇くんと僕の役の背景を想像していただきながら、2人がどう交わっていくのか、注目してご覧いただけると嬉しいです。
<彼チーム>
窪塚愛流/ボクA役
いよいよ幕が開きます。
初舞台です。
舞台とはどういうものなのか、それすらわからなくて、ただただ不安だった僕に手を差し伸べてくださったノゾエさんをはじめとするスタッフのみなさん。
1日1日お稽古を重ねて、今日という日を迎えます。
舞台は特別な空間です。
悠伸くんと僕の熱量を間近で体感してください。
そして、ノゾエさんと僕たちが作りあげた世界をみんなで楽しみましょう。
この舞台はハタチ最後の挑戦です。
ぜひ、劇場へお越しください。
篠原悠伸/ボクB役
孤独と空腹と愛とクセと殺意と希望を、
約1ヶ月間、試行錯誤して辿り着いた独自のブレンドでご提供させていただきます。
そして窪塚愛流の最初で最後の”初”舞台、是非その輝きを観に来てください。
ps.ボクチームと彼チームの違いも楽しんでいただけたら幸いです。
舞台写真
<ボクチーム>
<彼チーム>
撮影:田中亜紀
あらすじ
戦場にいる敵対する二人の若い兵士“ボク”と“彼”。二人は同じく穴の中で息をひそめて相手の出方を探っている。ボクが頼るものは戦場に向かう時に渡された1丁の銃と“戦争マニュアル”。そのマニュアルには、『彼は血も涙もない、本当のモンスターだ』と書かれている。二人は空腹に耐え、星空に癒され、家族を想いながら、もう随分長く独りぼっちだ。やがて限界が訪れ、ボクは相手の穴に向かう。「敵を殺さなければならない。でないと敵に殺されるからだ」。彼の穴に到着したボク。そこに彼の姿は無く、見つけたものは自分が持っているものと全く同じ“戦争マニュアル”。そこには“ボクがモンスターだ”と書かれている。衝撃を受けるボク。「ボクは人間だ!モンスターじゃない!ウソばかり書いてある!」そしてもう一つ見つけたものは、彼の家族写真。楽しい温かい家族写真だ。
ボクは彼を想像する。こんな家族が待っている人間が、女や子供を殺す?ボクと彼は、同じウソをつかれているということだろうか・・・