左から前野健太、松尾スズキ、岩井秀人
岩井秀人の最新作は演劇史に残る異色の音楽劇
劇作家で演出家、俳優でもある岩井秀人の待望の最新作『世界は一人』は、意外にも“音楽劇”の形となる。もともとミュージカルを観るのは好きだったという岩井だが、2017年のコドモ発射プロジェクト『なむはむだはむ』で前野健太と出会い、演劇における“歌の爆発力”を改めて感じたことがこの企画につながった模様だ。
岩井「歌、音楽には個人的なこと、一瞬よぎっただけのことでも拡大して人々に届ける力がある。そう考えると僕がいつもやっている、家族や身の回りの話でも、音楽でもっと広げられる可能性があると思ったんです」
松尾スズキを筆頭に、豪華でいてクセモノ揃いの出演陣の顔ぶれも大きな魅力。物語に登場するのは、かつて炭鉱で栄えていた海辺の町に暮らす三人の同級生。なんとも衝撃的なのが、松尾と松たか子、瑛太が同級生役に扮するということだ。
松尾「僕もびっくりしましたよ。まあ、岩井くんのお芝居は若い男優でも普通におばあちゃん役として、記号のもとに演技をしますからね。今回もそういうことなんだろうと」
さらに、どうやら物語上、8歳を演じる場面もあるらしく「なかなかのハードルだな……」と困惑顔の松尾に、岩井は「8歳児でも既にちょっとあきらめているような子もいますから。普段と変わらずに演じてください」とキッパリ。音楽に関しては早くも岩井と前野とで作業を進めているそう。
前野「初めて岩井作品を観たとき、セリフが自分の好きな歌の歌詞のように感じたんです。だから僕は、岩井さんが音楽劇をやることにはまったく違和感がないですね。この舞台でしか聴けない歌がたくさん歌われることになると思います」
松尾「ここから結構な長い旅になるはず。もちろん苦しみは必要だけど、険悪な仲からはいい歌は生まれない気がする。楽しい座組になればいいなと思っています」
「とにかく観たことのないものにはなると思います。ミュージカル好きも、一度も観たことがない方も、人間に興味があればぜひ劇場へ!」と、岩井も自ら太鼓判を押す今作。演劇史に残る刺激的な舞台になることは必至、どうぞお見逃しなく。
インタビュー・文/田中里津子
Photo/篠塚ようこ
※構成/月刊ローチケ編集部 12月15日号より転載
※写真は本誌とは異なります
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【プロフィール】
岩井秀人
■イワイ ヒデト ’74年、東京都出身。’03年、ハイバイ旗揚げ。’13年、岸田國士戯曲賞受賞。
松尾スズキ
■マツオ スズキ ’62年、福岡県出身。’88年、大人計画旗揚げ。’97年、岸田國士戯曲賞受賞。
前野健太
■マエノ ケンタ ’79年、埼玉県出身。シンガーソングライター。’16年、『変態だ』で劇映画初主演。