2025年1月11日(土)・12日(日)に京都・南座にて開催される「PSYCHO-PASS サイコパス 京都南座歌舞伎ノ舘×こえかぶ 朗読で楽しむ歌舞伎」は、人気アニメシリーズ「PSYCHO-PASS サイコパス」の登場キャラクターが、日本の伝統文化である歌舞伎の上演に挑むパラレルワールドの物語を題材とした朗読劇。演目は、絶海の孤島へ流刑に処された3人の男に赦免の知らせが届くものの、俊寛僧都ただ1人だけ赦免を許されず…という絶望的な状況の中、人間の諦念と執着が描かれた近松門左衛門の名作『平家女護島』「俊寛」(へいけにょごのしま しゅんかん)と、放蕩の末に勘当されてしまった大店(おおだな)の若旦那と最上位の傾城の艶やかな恋模様を描いた『廓文章』「吉田屋」(くるわぶんしょう よしだや)の2本。京都南座という会場にちなみ、上方を代表する2演目を題材にしている。中屋敷法仁が脚本と演出を手掛け、狡噛慎也役の関智一、常守朱役の花澤香菜、宜野座伸元役の野島健児、須郷徹平役の東地宏樹がキャストとして名を連ねている。また、1月18日(土)~2月2日(日)には、企画展「PSYCHO-PASS サイコパス 京都南座歌舞伎ノ舘」も同劇場にて行われるという。
異色のコラボとなった本作に挑む野島健児に、作品の印象など話を聞いた。
――今回は「PSYCHO-PASS サイコパス」と歌舞伎のコラボ企画ですが、最初に企画を聞いたときはどのような印象でしたか?
最初は、聞き間違いかな?と…(笑)。現在から100年後の「PSYCHO-PASS サイコパス」の設定と、400年前に発祥したという歌舞伎がどのようにコラボするのだろうか、まったく想像がつかなかったですね。500年という歴史を飛び越えてどんなものが出来上がるのか、興味深いという思いが強かったです。演じる当事者であることを忘れて「見てみたいな」という好奇心が勝りました。
――本作は「PSYCHO-PASS サイコパス」のキャラクターとして歌舞伎の演目を演じていくという、二重構造のような形の朗読劇となっていますが、その点についてはどうお考えでしょうか
いわゆる劇中劇と言いますか、宜野座伸元が歌舞伎にチャレンジするような構図。しかも、朗読というコンテンツを挟むことによって野島健児が表現していく形なので、三重構造くらいの感じなんです。そのあたりをどうまとめ上げていくかは、まだ演じる側として楽しむところまでは至ってないんですが。お客様にとってはどんなものになるのか興味が尽きないと思います。
――客観的に見ると面白そう!って思えるけど、演じる側になるとちょっと背筋が伸びるような感じになるんですね
まさにそう、「背筋を伸ばしてやらないと」と思います。今日は稽古初日なのでどこに足を置いたらいいのか、台本のどこに目をやればいいのかまだ戸惑っています。自分の中にこの物語や役どころなどを取り込むといった、楽しんで演じられるように準備が必要です。”取り込んだ自分”を早く見たい。そんな期待感でいっぱいです。
――今日、初めて台本に触れてみて「PSYCHO-PASS サイコパス」と歌舞伎の親和性や取り合わせの面白さみたいなところは感じられましたか?
今回、『平家女護島』「俊寛」『廓文章』「吉田屋」の2つを上演するのですが、「吉田屋」のほうで宜野座さんは夕霧という女形を演じるんです。宜野座さん自身が美しさや色気を持ったキャラクターですが、夕霧の色気や美しさが宜野座さんが演じたときにどのような魅力が生まれるだろうと思っています。自分自身ではなかなか見つけにくいところなんですけど、宜野座さんならきっと出せると信じていますね。きっと、宜野座さんにしか表すことができない夕霧になっていくんじゃないかと期待しています。
――宜野座さんを通して夕霧を捉えるからこそ、見えてくる夕霧像がありそうですね
僕自身は声優として、なぜか女性の役がすごく多いので、その経験値もありますし、そこに宜野座さんの美しさを借りて、どんな夕霧が生まれてくるのか…楽しみなところになりそうです。
――『平家女護島』「俊寛」では、丹波少将成経(たんばのしょうしょうなりつね)を演じられますね。こちらの役の印象はいかがでしょうか
成経は若いイケメンの貴族の青年です。物語としては悲劇ですが、宜野座さんが演じる成経の物語は「俊寛」という物語の希望を担っているんですよね。悲劇的な部分を抱えながらも、成経の妻を伴っての帰京が実現するというハッピーエンドを迎えられるように演じていきたいですね。宜野座さんって、もともと恋愛に長けていなく、どちらかというと少し悲しいところがあったので…この歌舞伎の作品を通して、宜野座さんが添い遂げられなかった思いが消化されていくというシーンは、僕にとって見どころであると考えています。宜野座さんでないと表すことができない、感動があるんじゃないかという気がしていますね。
――今回、歌舞伎の物語に触れてみてどのような印象を持たれましたか?
2作とも歌舞伎では代表的な演目とお聞きしていますが、不勉強なもので、今回初めて知りました。今回のコラボを機に、歌舞伎の名作を知ることができたのは本当にありがたいですし、まだまだ知らない表現の世界があるんだということを知りました。ぜひみなさんにも知っていただきたいです。歌舞伎の物語は、現代とは文化がまったく違っていたりするんですね。今では考えられないようなしがらみ、抜け出せない辛さがたくさんあって…だからこそ、歌舞伎の物語を知ることで、普遍的な人間の在り様も見えてくるのではないでしょうか。
――1月18日~2月2日には、企画展「PSYCHO-PASS サイコパス 京都南座歌舞伎ノ舘」も行われる予定です。こちらの見どころも教えてください
朗読劇での衣裳や小道具の展示はもちろん、キービジュアルにある歌舞伎の衣裳を着たキャラクターの描き下ろしパネル展示などが行われると聞いています。僕は今日、朗読劇の衣裳合わせをしたのですが、それぞれのキャラクターのテーマカラーが取り込まれているお衣裳で、お正月らしく袴も着用した正装という印象でした。企画展で展示される歌舞伎の衣裳は刺繍なども凝っていてとても美しいので、企画展で間近に見ることができるのは素敵な機会ですよね。衣裳の美しさも物語の大切な要素、朗読劇と企画展と両方で物語を思い出していただけると嬉しいです。
――企画展では、来場者も花道に上がったり、パネル展示と記念撮影などもできたりするそうですよ
花道に上がれるんですか?普段では絶対に味わえないような景色があるでしょうね。物語の一員になったつもりでぜひ南座の美しい空間も楽しんで頂きたいです。みなさんが撮った写真も楽しみにしているので、ぜひSNSなどにたくさんアップしてくださいね。
――公演や企画展が行われる京都・南座は日本最古の劇場と言われるほど歴史ある場所です。南座の印象やご縁などはありますか?
以前、祇園四条を歩いているときにキレイな建物があるな、といっぱい写真を撮っていたんです。実はそこが劇場だとも気付いていなくて…よもやそこに立たせていただけることになるとは夢にも思いませんでした。古き良き伝統のある建物だということが一目でわかる風情があるんですよ。3年かけて改修が行われたと聞いているので、内観も含めどのようになっているのか楽しみにしています。
――古き良き劇場での朗読劇と企画展、楽しみにしています。最後に、期待しているファンのみなさんにメッセージをお願いします
スタッフ一同、役者一同、みなさまにこの「PSYCHO-PASS サイコパス」という作品を通して歴史ある歌舞伎の世界を楽しんでもらうべく、一丸となって稽古を進めています。みなさまには劇場に足を運んでいただき、生でそれを体感してほしいですね。心からそれを願っていますので、朗読劇も、その後の企画展も、ぜひ存分に楽しんでください!
取材・文/宮崎新之