歌舞伎『刀剣乱舞 東鑑雪魔縁』公開舞台稽古レポート&舞台写真到着!

尾上松也が主演、演出を務める歌舞伎「刀剣乱舞 東鑑雪魔縁(あずまかがみゆきのみだれ)」が7月5日(土)から7月27日(日)まで、東京・新橋演舞場にて上演される。初日の開幕を前に公開稽古が行われ、メディアに公開された。

本作の基となった人気ゲーム「刀剣乱舞 ONLINE」は、歴史に名を残す名刀が”刀剣男士”となり、歴史改変を企む時間遡行軍と戦いを繰り広げていく物語。2023年に「刀剣乱舞 月刀剣縁桐(つきのつるぎえにしのきりのは)」として初めて新作歌舞伎として上演され、大きな反響を得ている。

第二弾となる今回の舞台は鎌倉時代。三代将軍・源実朝の暗殺事件を軸に、歌舞伎ならではの立ち回りや演出を取り入れて上演され、三日月宗近(尾上松也)、同田貫正国(中村鷹之資)、髭切(中村莟玉)、加州清光(尾上左近)、膝丸(上村吉太朗)、小烏丸(河合雪之丞)、陸奥守吉行(中村歌昇)、鬼丸国綱(中村獅童)の八振りの刀剣男士が登場する。

開演前、下がっている幕には、「刀剣乱舞」の由来が勢いのある筆さばきでしたためられていた。刀剣男士が付喪神であること、審神者(さにわ)が歴史を守るために刀剣男士を過去に送り込む者であることなどが解説されており、開始前から作品世界へと誘っていた。

戦乱の世で、苦しみながら命を落としていった人々。彼らのうめき声、叫びがこだまするように響くと、その怨念に呼ばれるように、羅刹微塵(尾上松也・二役)が顕現する。

一方、歌舞伎本丸ではさまざまな思惑が渦巻く鎌倉時代で歴史改変の動きを察知し、三日月宗近ら刀剣男士は過去へと向かった。しなやかでクールな加州清光は、やや荒っぽい陸奥守吉行がやや苦手な様子。髭切と膝丸は、自らの主であった源氏の子孫・実朝(中村歌昇・二役)に関わるとあって、やや落ち着かない様子。そして、鬼丸国綱はどっしりと構え、忙しい宗近に代わり刀剣男士らを牽引する場面もあった。

そんな中、北条政子(河合雪之丞・二役)のもとを公暁(中村鷹之資)らが訪れているときに敵襲があるが、刀剣男士の活躍により退けられる。政子は、刀剣男士らに実朝のことをくれぐれも頼むと告げた。だが、実朝がやがて暗殺されるのは変えてはならない歴史の流れ。

当の実朝は、まつりごとからは距離を取っており和歌などに興じていた。しかし、実朝が詠む和歌を深く読み取り、本意は他にあると察した膝丸。主であった源氏の最期を、その本意を知ったうえで見届けたいと、髭切の言葉を振り切って膝丸は実朝に会いに行った。そこで実朝の真意に触れるが、実朝の妻・倩子姫(尾上左近・二役)は悪い予感がすると膝丸に告げ、膝丸らは未来から来たのではないか、実朝の行く末を知っているのではないかと指摘してーー。

刀剣男士らはそれぞれ個性的で、やりとりの中で見えてくるキャラクターに原作ファンはニヤリとしてしまうのではないだろうか。今回は特に、源氏に関わるストーリーのため髭切と膝丸の関係性が色濃く描かれており、刀剣男士としての使命と一振りの刀としての想いとが丁寧に描かれ、その切ない思いに胸を打たれた場面もあった。

そして、刀剣乱舞ならばと期待してしまう殺陣は、歌舞伎らしい美しい型を魅せるような展開で、ツケ打ちの音が響くたびに何度も魅了されてしまった。花道や客席を巻き込んだ場面や名乗りなど、歌舞伎ならではの表現に溢れており、今の世の新しい物語と、伝統を積み重ね、削ぎ落されて磨かれた歌舞伎の技術との出合いに、胸の高鳴りを覚える。特にクライマックス新作ならではの新鮮な感動と、歌舞伎本来の面白さを同時に味わえるはずだ。

また今回は物語を終えた後に、刀剣男士らが舞い踊る大喜利所作事「舞競花刀剣男士(まいきそうはなのつわもの)」も繰り広げられる。装いも変えて、春夏秋冬を華やかに美しく魅せていく。三日月宗近と小烏丸が優美に舞う那須与一の物語のたおやかさや、鬼丸国綱らによる連獅子のド迫力など、こちらも見どころが満載となっている。

公開稽古後には、囲み取材も行われ、刀剣男士を演じる8人が登壇した。三日月宗近と羅刹微塵の二役を演じ、演出も務めた尾上松也は「第2弾なので、よりエンタテインメント性を強くしたく、大喜利所作事を別立てで上演させていただくことにしました。歌舞伎本丸でしかできないことをお見せしたい」と自信をのぞかせる。そして「羅刹微塵はオリジナルキャラクターの悪役。皆様がどのように受け止めてくださるのか楽しみにしています」と、新たな試みを楽しんでもらえるようにと願った。

鬼丸国綱役の中村獅童は「若い方々に混ざって、楽しくやらせていただいています。52歳、まだまだ走り回れますよ!」と現役アピール。大階段での立ち回りなどもあるが「眼帯で視界が狭く、怖いシーンもありますが、皆様が応援していただければ恐怖も吹き飛ぶ」と話し、観客からの応援を求めた。また、獅童の子どもが前作を観ており「(子どもが)松也ファンになったんです。負けてたまるか、と(笑)。カッコいいところを見せるから観に来て、と話しています」と、会場を笑わせていた。

中村歌昇(陸奥守吉行、源実朝)は、「昨年、松也さんに出演したいとお伝えして、『言ったな? じゃあもう出てもらうから』と(笑)。冗談かと思ったんですが、念願だった歌舞伎『刀剣乱舞』に出させていただくことになり、本当に嬉しいです」と出演の喜びをコメント。そして「吉行は太陽のようで、自分に向いている役ではないかと感じています。また、実朝という重要な人物をやらせていただいて、いろんな先輩方に教えていただきました。もっといい実朝を演じられるように頑張ります」と、役への想いを語った。

前作にも出演した中村鷹之資(同田貫正国、公暁)は、「刀剣乱舞の世界に戻ってくることができて嬉しいです。前回と違う表現で、鎌倉幕府の入り乱れた愛の形をみせることができたらと思います。ただ、(刀剣男士としては)後方支援に回るので、新たな刀剣男士と絡む機会が少なくて寂しいです」と、一抹の寂しさを覚えながらも『舞競花刀剣男士』では熊本の民謡を踊ることになりました。新しいことにも挑戦していますので、楽しみにしていてください」と、見どころをアピール。

中村莟玉(髭切)は、「源氏に縁のある髭切と膝丸に焦点が当たっていて、膝丸と兄弟の会話をする場面もあるので、原作ファンにも喜んでもらえるはず。個人的には仙人団子を舞台上で食べるシーンがあって、舞台で何かを食べるのは初めてなので、注目してもらえたら」と話し、上村吉太朗(膝丸)も「今回のように感情をあらわにするような役は初めて。膝丸がカギを握るような役どころですし、身体を張った場面もあるので、存在感を出せるように頑張ります」と意気込んだ。

尾上左近(加州清光、実朝御台倩子姫)は「ネイルやピアス、ヒールなど、加州清光としての衣装や小道具にこだわっています。どのように歌舞伎と融合しているのかを見ていただきたい。(倩子姫との)ギャップも見どころなのではないかな」と、キャラクターならではのビジュアルと、二役のギャップを見てほしいと話した。

八振りの中で最年長だという河合雪之丞(小烏丸、北条政子)が見どころをコメントしようとすると、松也や獅童から「かわいいところ」とボソッと横やりを入れられ、苦笑しながら「…かわいいところだそうです」と返しており、刀剣男士を演じる出演者らの仲の良さがうかがえた。そして「北条政子は早替えがありますので、大変ですが頑張ります。演じ分けるところを楽しんでいただければと思います」とコメントし、早替えなど大変なことはありながらも、役を全うしたいと述べた。

歌舞伎「刀剣乱舞 東鑑雪魔縁(あずまかがみゆきのみだれ)」は、東京・新橋演舞場にて上演後、福岡・博多座、京都・南座でも上演される。

舞台写真

取材・文/宮崎新之