
尾上右近自主公演 第九回「研の會」が7月11日(金)に大阪・文楽劇場にて開幕。「研の會」は、歌舞伎俳優の尾上右近が2025年に始めた自らプロデュースする公演で、今年で9回目の開催となる。「とにかく自分がやりたいことをその都度全力でやる」をテーマに、歌舞伎に対する熱い気持ちを詰め込んでいるのがこの自主公演。
今回は俳優仲間で同級生でもある中村種之助を迎え、『盲目の弟』と、舞踊『弥生の花浅草祭』に挑んでいる。
『盲目の弟』は、昭和 5(1930)年に、右近の曾祖父・六代目尾上菊五郎によって初演された作品だ。松本白鷗と中村吉右衛門の兄弟により上演された 40 年前の記録を見つけ、歌舞伎座の資料部屋で映像を観て、「いつかやろう」と約束をした。それから約十年が経ち、満を持しての共演となった。
兄弟は幼い頃、ふとした弾みで兄(尾上右近)が弟(中村種之助)の目を怪我させてしまう。弟は視力を失い、兄はその罪悪感を抱えて生きている。それから十年、ほんの通りすがりのインバネスを着た男(中村亀鶴)がほんの出来事で漏らした一言で、兄弟の関係性に悲劇を生む。女中・お琴役に春本由香、幼少期の兄弟の声の出演に尾上眞秀、坂東亀三郎を迎える。
『弥生の花浅草祭』は、山車人形が動き出す様子を表現する舞踊。通称「四段返し」と呼ばれるこの作品は、一時間強の演目でありながら二人で計八役を踊り尽くす。常磐津、清元、長唄と三つのジャンルの音楽で踊り分けを展開していくところにも注目していただきたい。右近と種之助の「踊りたくて仕方がない」という気概、そしてエンターテインメントとして歌舞伎を届けたいという気持ちが伝わってくる一作だ。
東京公演は 7 月 15 日(火)・16 日(水)に浅草公会堂にて上演。また東京公演では、イヤホンガイドの貸出しサービスを予定。16 日には観劇サポート席を設け、バリアフリー字幕タブレットを貸出しする。右近は「どんな方にも楽しんでいただける歌舞伎公演になれば。そしてそれが、また観に来ていただくきっかけに繋がれば」と思いを込める。

(写真:田口真佐美)
尾上右近コメント
第九回「研の會」。お陰様で無事に大阪にて初日を迎えました。自分のやりたいもの、お客様に観ていただきたいもの、自主公演だからこそ挑戦できるもの。主催をする醍醐味とその難しさを噛み締めながら過ごすこの時間が、自分にとってはかけがいのないものです。
