伝統と革新の融合!
「もののけ姫」がスーパー歌舞伎で蘇る
日本映画史に残るスタジオジブリの名作アニメーション「もののけ姫」が、スーパー歌舞伎で上演されることが決定した。呪いを受けた少年アシタカを演じるのは、市川團子だ。
「子どものころは、ただ面白いだけで観ていましたが、見返してみると本当に発見の多い作品です。一番の気付きは、アシタカ、サン、エボシ御前には三者三様の正義があるということ。それぞれが信じている正しさを誠実に追い求め、すれ違っているからこそ、ただの勧善懲悪ではない複雑さがあります。そこが説明的ではなく、情緒的に織り込まれている。そこが、この物語の凄さだと感じました」
本作では、山犬に育てられた少女サンを中村壱太郎、タタラ場を統率するエボシ御前を中村時蔵、猪神の長老・乙事主を市川中車が演じる。
「壱太郎さんは、後輩の私にもいつも分け隔てなくディスカッションの場を設けてくださいます。スーパー歌舞伎『ヤマトタケル』でも共演させていただき、本当にたくさん助けていただきました。時蔵さんはご一緒した機会は少ないのですが、いつもご自身を厳しく律していらっしゃって、非常にストイックなイメージがあります。そして、父(市川中車)は、役者として1回1回の作りこみがすごい人です。それは歌舞伎でも変わらないところだと思います」

原作には多くのファンがいる作品だからこそ、尊敬の念を忘れずにスーパー歌舞伎らしく創りあげていきたいと、團子は話す。
「歌舞伎はデフォルメ、様式美の演劇ですから、『もののけ姫』の美しく壮大な世界観と相性がいいと思っています。祖父(二世市川猿翁)が“初めての人にも歌舞伎の魅力を分かりやすく伝えたい”と創り上げたスーパー歌舞伎という器で、原作へのリスペクトを大切にしながら、新しい感動をお届けできるよう努めます。アシタカは呪われし身という宿命を背負った、非常に孤独な存在です。絶望的な運命の中で、常に“曇りなき眼”で物事を見定めようとします。そのアシタカの誠実な行動は一種のバタフライエフェクトのように、人々の心に響き、増幅して、未来において絶大な影響を与えたのではないかと感じています。今回、アシタカの化粧は、スーパー歌舞伎『ヤマトタケル』の化粧と同じく、スーパー歌舞伎を象徴する化粧で臨みます。衣裳については、少しだけお願いをしました。スーパー歌舞伎の主役はこれまで、白を基調にした衣裳が多かったのですが、今回はデザイナーさんにご相談をして、原作の印象を優先した青の衣裳にしていただきました。原作を愛していらっしゃる皆様が持つイメージを大切に、歌舞伎の様式美をうまく折衷させた姿をお見せしたいと思います」
何度も上演されてきた歌舞伎の演目とは違い、今回は役をすべて自分で組み立てていかなければならない。團子は覚悟を胸に、物語に臨む。
「新作ですから、歌舞伎においてのアシタカという役について先人の教えやお手本はありません。すべてを自分で創っていくことに、正直これまでにない怖さや不安はありますが、覚悟を決めるタイミングにもなりました。役の手本はなくても、家伝の教えはあります。高祖父(初世市川猿翁)は祖父によく『本物を見なさい』と言っていたそうで、それは本物を見て感動した記憶があれば、舞台に実物がなくても同じ目や心持ちになれる、という教えです。私も実際に『もののけ姫』の舞台となった屋久島に行きましたので、そこで感じた空気や感動を舞台上でのリアリティに繋げたいです。今の自分にしかできないアシタカを、しっかりと創り上げたいです。スーパー歌舞伎はほとんど現代語劇ですし、事前予習なども一切必要ありません。歌舞伎をいつも観ていただいている皆様にも、歌舞伎への一歩を迷われている皆様にも、原作ファンの皆様にも、全世代の方にぜひ劇場に足を運んでいただきたいです」

インタビュー・文/宮崎新之
Photo/平岩享
※構成/月刊ローチケ編集部 6月15日号より転載
※写真は誌面と異なります

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【プロフィール】
市川 團子
■イチカワ ダンコ
8歳のときにスーパー歌舞伎『ヤマトタケル』ワカタケル役で五代目市川團子を名乗り初舞台。古典からスーパー歌舞伎、大河ドラマまで幅広く活躍する。
