『伝統芸能 華の舞』市川右團次インタビュー

「華」と「実」を兼ね備えた歌舞伎俳優たちが各地の劇場を巡り、よりすぐりの歌舞伎舞踊を披露する『伝統芸能 華の舞』が2020年3月、東京含めた全国10カ所17公演が行われる。

主演の市川右團次は古典歌舞伎から新作歌舞伎まで幅広く演じ分け、ドラマ『陸王』等の映像作品でも活躍。ドラマ『ノーサイド・ゲーム』に出演した長男・市川右近とはラグビー・ワールドカップの開幕式で舞踊『連獅子』の一部を披露。今回はこの舞踊を通しで上演する。

この他、市川海老蔵一門の市川九團次と大谷友右衛門の次男・大谷廣松が、椀屋久兵衛と恋人である遊女・松山の幻想の中での逢瀬を描く舞踊『二人椀久』を、市川右團次一門の市川右若、市川右左次、市川右田六が、吉原を訪れた放生会の雀売りの楽しい踊り『吉原雀』を舞う。性質の異なる三演目を通して、歌舞伎舞踊の幅広さ・奥深さを体感することが出来そうだ。

 

■市川右團次インタビュー

“日曜劇場親子”の奮闘をぜひ応援しに来てください

――右團次さん・右近さんと言えば世間的にはやはりTBSドラマでの印象が強いかと思います。

「『陸王』に出た時は、“シューフィッター”とよく声をかけられました(笑)。息子も同じ福澤克雄監督の『ノーサイド・ゲーム』でお世話になりましたが、或るシーンで、台本に書いていないのに、ぽろっと涙をこぼしたんです。聞けば、父親役の大泉洋さんの演技に感動したって。そういうふうにパンとスイッチが入ることは、歌舞伎俳優にとっても大切なこと。いい勉強をさせていただいたなと思っています」

 

――そんなお二人が今回初めてご一緒に、日本各地を巡業されます。

「息子にとってもいい修業になるんじゃないかな。僕はブログをやっているのですが、“近くに来てくれるので、やっと生の舞台を観られます”というコメントを幾つかいただいています。チケット代も比較的リーズナブルなので、ぜひ“日曜劇場親子”を応援しに来て下さい(笑)」――共演するのは、ラグビーのワールドカップ開幕式で初披露した『連獅子』です。

「開幕式のお話をいただいた時、息子は9歳。体力的にも大変な仔獅子をこなせるのか、実際歌舞伎界でそんなに小さくして踊った例もなかったので、無理なんじゃないかと思いましたが、ワールドカップ2019の公式マスコットがレンジ―という紅白の獅子で、雄雌のカップルの獅子だと思っている方が多くて、ぜひ親子だと知ってほしいというお話で、かくなる上はということで挑戦しました。息子は頑張ってくれましたね。親馬鹿ですが(笑)、芝居のことになると好きだから頑張る子なんですよ」


――今回は抜粋したものではなく通し上演ですね。

「通しですが、お客様が分かりやすいように少し抜いている部分もあるので、退屈するところはないと思います。前半は狂言師として、獅子が我が子を千尋の谷に突き落として子供が這い上がってくる様を踊りで物語ります。親は子を思い、子は小川に映る親の姿に力をもらって登る。僕自身、かつて仔獅子を演じた時は、しんどくても浄化されるものを感じましたね。歓喜の舞でもあるし、文珠菩薩を護る獅子なので、おめでたい舞でもあります。そして後半は獅子の姿で、親子が戯れながら皆さんご存じの毛振りをします。なかなか“生”で見ていただく機会はないと思いますので、それも含めて楽しんでいただけたら」――今年はオリンピック・イヤーで世界の目が日本に向くかと思いますが、歌舞伎のどんな面をアピールしたいですか?

「歌舞伎は世界にも類をみない文化で、絢爛豪華なものもあれば、民衆の暮らしを描いたものもあるし、最近はアニメも歌舞伎化しています。歌舞伎にはもともと魑魅魍魎や人にあらざるものが登場していて、この多様性がいろいろな表現を可能にしているのです。古典とはいえ、時代を超えて普遍的なテーマを含んでいるのが歌舞伎。同時代の方たちと何かを共感できるよう、今の時代にアンテナを立てながら演じていきたいです」