『こえかぶ 朗読で楽しむ歌舞伎 ~雪の夜道篇~』合同取材会オフィシャルレポート

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著作 株式会社サンリオ

2023年10月7日(土)~9日(月・祝)に草月ホールで開催される『こえかぶ 朗読で楽しむ歌舞伎 ~雪の夜道篇~』の合同取材会が都内にて開催。全12名の出演者より10月7日(土)出演の斎賀みつき、10月9日(月・祝)出演の平田広明、吉野裕行、立花慎之介の計4名と脚本・演出をつとめる岡本貴也が登壇し、お客様への想いや公演の見どころを語った。

――まずは脚本・演出の岡本さんにご質問です。これまで数多くの朗読劇を手掛けられていますが、『こえかぶ』は歌舞伎が題材ということで、通常の朗読劇の脚本・演出とは異なる点や特別に意識されている点はありますか?

岡本 歌舞伎のストーリーをきちんとお客様に伝えたいと考えています。江戸時代におけるドラマのありかたと、現代のドラマのありかたは大きく違います。江戸時代に書かれたドラマを現代のお客様にどう伝え、どうドラマチックに感じていただけるか、その点を深く考えています。今回は1952年のラジオ番組を舞台として、歌舞伎の演目二つをその中に包みます。全編を通してさまざまな事件が起こりますので、お客様に笑っていただける楽しい舞台になればと思っています。

――もうひとつ岡本さんに質問です。今回の公演の観どころを教えていただけますでしょうか

岡本 ベテランの声優たちが一堂に会し、声の技術や声色の魅力をふんだんに使って、歌舞伎を目の前で演じる。その様子を生で観られるということが、観客の皆様にとって光り輝く宝物のような美しい体験になるのではないかなと思っています。

――ありがとうございます。では、次に出演者の皆様に何点かお伺いします。まず『こえかぶ』への出演オファーを受けたときのお気持ちと、公演に対する意気込みを教えてください

斎賀 『こえかぶ』を通して、歌舞伎を知らない初心者の方にもわかりやすく物語の魅力を知っていただけるように、作品作りのお手伝いができればいいなと思っております。

平田 歌舞伎はどうしても敷居が高いと思われがちなので、現代語の朗読劇として初心者の方に知ってもらえるのはいいですね。僕自身、歌舞伎を何度か観に行っていますが、はじめのころは幕が開く前に筋書をきっちり読まないと物語が分からなかった。でも回数を重ねていくことに、チラシの裏のあらすじだけで何となく分かるようになってきたり……と少しずつ物語を理解できるようになりました。今回、『こえかぶ』を通して歌舞伎の演目を知ってもらえることで、皆様にとって少しでも身近になってくれればいいなと思います。

吉野 『こえかぶ』は今回が第2弾と聞いて、参加させていただけることが嬉しかったです。初演の作品に出演するのはプレッシャーを感じてしまうので嫌なんですけれども、2回目ならば……(笑)。でも、僕は歌舞伎の知識がほぼゼロでして、過去に観たのも『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』を2回だけ、という初心者中の初心者。ただ、今回は歌舞伎そのものではないので、朗読劇としてこれからどのように仕上がっていくのか、楽しみにしています。

平田広明・吉野裕行

立花 僕はもともと日本舞踊をやっていたこともあり、古典芸能は好きなのですが、実は歌舞伎はあまり通っていませんでした。僕自身もわからないことが多い世界ですので、観客の皆様も僕と一緒に歌舞伎を理解してもらえたら嬉しいです。しかし、歌舞伎をライトに楽しめる朗読劇は面白そうだと思っていたのですが、あとから同じ日(10月9日)の出演者が名立たる先輩方ばかりと知って、「これはやべえぞ」と思いましたね(笑)。ご一緒できることは楽しみですが、今からドキドキしています。

――次に皆様の歌舞伎との関わりや思い出、歌舞伎に対するイメージをお伺いします

斎賀 劇場で観たことはなかったのですが、テレビの特集などを通して、歌舞伎がどのようなものかというイメージはなんとなく持っていました。とても大事な日本の芸能だと思っているので、それに
少しでも関わることができる、経験させていただけることはとても嬉しいと感じています。

斎賀みつき

平田 僕は新劇出身ですが、新劇って地味で暗くて予算がない。そういうところで育ちましたので、歌舞伎は大きい舞台で綺麗なお衣裳や豪華な装置、演出でうらやましいなと思ったのが最初の印象です。その後、僕が出演しているアニメ『ONE PIECE』が歌舞伎化されたご縁で、市川右團次さんや中村隼人さんなど多くの歌舞伎俳優の方と仲良くさせていただき、新春浅草歌舞伎なども観に行くようになりました。ここの共演者の方よりも歌舞伎の距離は少々近いのかなと思っておりますが、観れば観るほどきらびやかで華やかな世界だなと感じております。

吉野 歌舞伎については本当に分からないことばかりですが、平田さんがおっしゃったように、『ONE PIECE』や『ファイナルファンタジー』などのアニメ・ゲーム作品が歌舞伎化されることで、身近に感じられるというのはありますよね。だから、分かりやすい題材で歌舞伎化してくれると本当にありがたいですし、もともと歌舞伎にはいろいろなジャンルがあるので、今の時代の歌舞伎がどんどん生まれるといいな、と。それが歌舞伎がずっと続いていくことにもつながる、そうなってほしいと思います。昔の作品でも物語さえわかれば人間の心の揺れ動きなど現在に通じる面白いところがあると思いますので、新作歌舞伎やこの『こえかぶ』を入口に、そこから「昔の時代の作品はどんなものだろう」とさらに歌舞伎を観たくなるきっかけになったらいいですね。

立花 子どものころから、時々テレビで歌舞伎を観ることはありましたが、すごくきらびやかで着物も素敵だなとは思いつつも、そもそも「何を言っているのかわからない」という印象がありました。理解しようとしても、言葉が難しくてなかなか頭に入ってこないんです。でも結婚してから、テレビで歌舞伎を観ているときに妻が「ここはこんな内容なんだよ」と教えてくれるようになりました。隈取が赤だったら正義、青だったら悪、など歌舞伎の舞台上のルールが分かってくると、少しずつ面白くなってくる。まだまだ知っていくことができる要素がたくさんあるのが、奥深いところだなと思っています。
でも、歌舞伎の物語にでてくる登場人物って「大丈夫なの、これ?」という本当にとんでもないやつばかりですよね。そこに恋物語が絡んだり、昼ドラなみのドロドロさがあったり、最後は悲劇だったり……といろいろな要素が絡まっていく。物語の面白さがあると思いますので、もっと知っていきたいと思っている段階です。

――まだ稽古初日ではありますが、『こえかぶ』の台本を読まれた際の印象をお伺いします

斎賀 今回は劇中劇になっていて、本人として舞台に立つのではなく、役として舞台に立って、そこからさらに歌舞伎の物語の役に入っていくという構造になっています。台本を読んだときはとても驚きましたが、最初に登場してくる役を確立させたあとに、さらにその人が歌舞伎の物語をどう演じるのか……というのは考えさせられることも多く、やりがいがあると感じています。稽古で理解を深めていって、最終的にどんな本番になるのか楽しみですね。

平田 こんなにコント的要素満載のお話だとは思いませんでした。でも、話の流れをよく聞いていると、さまざまなところに歌舞伎のエッセンスや知識が散りばめられています。話が全部きっちり伝わらなくても、まずは我々のわちゃわちゃしているコントを楽しんでいただいて、そのなかでひとつでも歌舞伎の理解を深めるきっかけを持ち帰っていただければいいなと思っています。そしてぜひ、今回の演目が歌舞伎で上演される際には、筋書もチラシも持たずに楽しんでもらいたいですね。

吉野 難しい台本だなと思っています(笑)。歌舞伎独特の七五調のリズムが台本の中に入ってくると、どうしてもそのリズムに引っ張られてしまう。でも、お芝居としては、本当は違うところで勝負したほうがいいな、という気がするんです。そして、やはり言葉が難しい。「分からない」というのは、お客様の観劇の没入感や集中を切らせてしまいますので、これからいかに分かりやすくできるかが鍵になってくると思っています。

立花 ラジオスタジオの設定は喜劇としての面白さがある一方で、歌舞伎の演目部分はとても真面目に進む。感情やキャラクターがジェットコースターのように変わるので、その切り替えが難しいなと感じています。また、普段聞き慣れない言葉や見慣れない漢字はやはり多いですし、アクセントも何が正解なのか分からないので、本当に未知の台本だなというのが最初の印象でした。
しかも、僕が演じるラジオディレクターは、3人の先輩方を引っ張っていかなければならないので、それも難しいですね(笑)。

――今回取り上げる『仮名手本忠臣蔵』と『雪暮夜入谷畦道』の演目や忠臣蔵と直侍という演目、および皆様が演じられるお役のイメージをお聞かせいただければと存じます。また、今後の役作りで意識されることがあれば、教えてください

斎賀 ふたつともはじめて知った物語なので、まっさらなところから素直に受け止めて、役作りしていければと思っています。今回は劇中劇なので、私が歌舞伎を読むというよりは、「風吹蘭」という人間が歌舞伎を読むという意識で役の作り方を考えていければと考えています。

平田 僕は「京本竹夫」というアナウンサーを演じます。もともとタイトルコールだけのはずが、いつの間にか役を押し付けられて……という流れで進んでいくので、歌舞伎の演目よりも竹夫というキャラクターの捉え方が一番大事になってくるのかなと思っています。お客様と歌舞伎との橋渡しをする上で、竹夫が観客の皆様の代弁として入っていくことができればいいですね。

吉野 今回は歌舞伎をそのまま朗読するのではなく、劇中劇としてぎゅっと凝縮されています。だから、ひとつひとつの役というよりも自分の役割をまっとうできるか、最終的にひとつの物語として仕上げられるかどうかが大切になってくるかなと思っています。
物語のイメージとしては、先ほど立花くんも言っていたように、歌舞伎の登場人物は本当にどうしようもない人物が多い(笑)。この演目は何が伝えたいんだろうということを、これから稽古を通して深めていくのも楽しみですね。

立花 僕はラジオディレクターの役ですが、そのキャラを作った上で歌舞伎の役も作っていかなければならないので、ちょっとハードルが高いとは思います。『仮名手本忠臣蔵』ではおかるを演じますが、それを女方として演じるのか、女性キャラクターとして演じるのか、など今後の稽古でディスカッションしながら作っていければいいなと思っています。

――「こえかぶ」を観に来てくださるお客様へのメッセージをいただけますでしょうか

斎賀 とにかくまずは『こえかぶ』を観て、聴いて、感じていただきたいです。そして、歌舞伎公演もしっかり観てみたいな、『こえかぶ』もまた観たいなと思っていただければいいですね。我々も楽しみながら演じていきたいと思いますので、皆様も楽しんでいただければと思います。

平田 同じく歌舞伎に興味を持っていただけるきっかけになればいいですね。「忠臣蔵」は歌舞伎だけではなく映画やドラマにもなっていて、既に知っている方も多い作品ですので、入口としてもとてもいいと思います。僕は古典落語を柳家小三治さんがきっかけで好きになったのですが、歌舞伎も同じで現代語で分かりやすくなると「なるほど」と思える話がたくさんある気がします。そうすると次から次へと興味が湧くようになってくる。歌舞伎にはまだまだ多くの演目がありますので、この先も『こえかぶ』が続いてくれたらいいなと思います。

吉野 皆様もおっしゃっていますが、歌舞伎に興味を持つきっかけになってほしいです。『こえかぶ』がひとつのコンテンツとしてずっと続くことで、少しでも歌舞伎の入口が広く浅くなり、初心者が勉強する機会になればいいと思いますので、まずは『こえかぶ』をしっかりやりたいと思います。

立花 これをきっかけに歌舞伎に興味持っていただければと思いますし、ハードルを少しでも下げられたらいいなと思います。朗読劇はチームが変わると同じ台本でも全く違うものに仕上がるということが面白さの一つですので、日替わりの3チームすべてを楽しんでもらえたら幸いです。

――本日は有難うございました。これにて取材会は終了とさせていただきます。