★11月3日から博多座にて開幕★中村獅童・尾上松也共演の新作歌舞伎『あらしのよるに』。関連イベントも続々と!

中村獅童・尾上松也らが出演する新作歌舞伎『あらしのよるに』が11月3日(土・祝)より博多座にて開幕。その公演に先立ち、8月には二人が福岡市動物園を訪れ一日園長を務めたり、福岡市天神の新天町商店街でのお練りなどが行われ、多くのファンを楽しませてくれたが、公演関連イベントはまだまだ終わらない!

現在、福岡PARCOでは11月4日(日)まで「あらしのよるにの世界展」を開催中。実際に着用される衣裳(衣裳のみ10月28日まで展示)や、本作の原作者による原画、中村獅童の隈取の数々が展示中。また、11月5日(月)には福岡・岩田屋きらめき通り広場にて「歌舞伎絵本 あらしのよるに」トークショーとして、「あらしのよるに」原作者・きむらゆういち、中村獅童、尾上松也の3人が登場するなど、イベントが続々決まっているなか、新たなイベントが追加に!10月30日(火)12時からは、中村獅童や尾上松也をはじめ幹部俳優9人(予定)による“お練り”が開催されることも決定!場所は、公演会場・博多座のお膝元である博多の上川端商店街・櫛田神社側入口からスタートし、川端中央商店街を通って博多座前にて出演者らの挨拶が行われる。これらのイベントは全て、中村獅童らの強い希望によって実現したもので、無料にて開催されるというから、本人たちの公演に対する意気込みを感じずにはいられない!

 

まだ歌舞伎にふれたことがない人も、歌舞伎大ファンの人も、そして『あらしのよるに』の原作が好きな人も!このまたとない機会に役者たちや原作者による貴重なお話をぜひ聞きに彼らに会いに、会場へと足を運んでみては?また、本作のチケットもまだまだ発売中!ローチケでは座席選択をして購入も可能なので、イベント参加後には本公演もチェックして頂きたい!!それぞれのイベントに関する詳細は、博多座の公式HPをご確認ください。

 

<番外編>

『あらしのよるに』中村獅童・尾上松也 取材会レポート

 

オオカミとヤギの友情を描いたベストセラー絵本「あらしのよるに」が新作歌舞伎となって九州に初登場!この新作歌舞伎でオオカミのがぶを演じる中村獅童とヤギのめいを演じる尾上松也。猛暑となった8月某日にはこの主演の二人が福岡市動物園にて一日園長を努めた後、福岡市・天神では“お練り”も開催された。その後に行われた取材会では二人による本作への熱い思いが次々に語られていた。

 

=親子で観て楽しめる新作歌舞伎への確信

獅童「今作は、京都での初演(2015)、2016年の東京公演に続いて3度目の上演となります。当時も親子で来られている方も多く、小さなお子さんも身を乗り出して楽しんでくれていたほどでした。歌舞伎だと、お子さんが声を出したりすると親御さんは『静かに!』と制したりしますが、この芝居では笑いたい時に笑って、お客さんには畏まらず自由に鑑賞して欲しい。ストーリーも分かりやすいですし、親子でぜひ観て欲しいです。きっと大人になった時に『お母さんと歌舞伎に行ったなぁ』とか思い出すでしょうし、歌舞伎に行ってみようかなと思ったりしてくれたら嬉しいです」

 

松也「初めて演じた時は、今までにない高揚感を感じました。新作を作る時は苦しいもので、初日が開くまで不安にも駆られます。でも、この作品は稽古の段階から『きっと皆さんに愛してもらえる!』と確信めいたものを感じていました。口コミで反響がありまして、京都の時はにぎわって盛り上がってくださったのを忘れませんし、達成感もありました。ここまで親子で楽しんで大声出して楽しめる歌舞伎は他にないし、やる意味があると思っています。この作品に関われて幸せだと思っています。ご家族で観に来て頂きたいですね」

 

=亡き母の思いが詰まっていた本作の歌舞伎化

獅童「この作品に初めて出会ったのが13・14年ほど前。正月の浅草公会堂で歌舞伎公演『義経千本桜』で狐忠信という役を勤めさせて頂いて、その数ヵ月後にNHKの方からこの作品のテレビ絵本での語り部と動物の声をやってもらえないかとお話を頂くことになったんです。狐忠信の役を演じた直後に作品を読んだので、『これ歌舞伎になるなぁ』ということを私の母にも話していました。でも、その時はその話はそのままになっていたのですが、母が亡くなった翌年の2015年に京都の南座でこの作品の初演が決定したんです。その初日前日、松竹の方から呼ばれて『実は10年ほど前にお母様がこの作品の手書きの企画書を持ってこられた』と聞きました。『獅童が出し物をやれるような役者にもしなれたら、これは獅童にピッタリだからやらせて欲しい』と言ってきたそうで・・・。僕に一言も言わずにそんなことをしてくれていて、亡くなってからも親の世話になりっぱなしだなと・・・。何か遺言じゃないですけどね。あとは、この作品の舞台版で『自分を信じろ』という台詞が出て来ますが、どこか僕の役者人生と重なり合うようなところもあって共感したんですよね。僕のライフワークになっていけばいいなと思っていたので、3度目の上演が出来ることが嬉しいです。3度目ですが、原作のきむら先生からのリクエストもあるようなので、博多座はまたちょっと違うバージョンになると思います。原作が絵本だからといって決して子ども向けにはしていませんし、こういった作品を大人が観ることで精神が、心が洗われるといいますかね。だから、皆がそれに真剣に取り組むからこそ皆さんに感動して頂けたと思うので、今回もその時の気持ちを忘れずに演じたいです。この作品が持つテーマ、普遍的な愛は海外だと人種問題とかにも通じるものだと思います。だから、こんな作品がもっと愛されていくような時代が来れば、争いごとも減っていけばいいなと。そんな皆の思いが詰まった作品になっています」

 

= “めい”役への思い

松也「初演の二年前くらいかな?獅童さんの楽屋に行った時に、こういう話があるから一緒にやろうと言ってくださったんです。率直に嬉しかったですよね。新作の歌舞伎で、僕自身も歌舞伎で大きな役をやっていない時期でしたから、歌舞伎でそういった大きな、主役の一人でもあるので、そういう責任ある役を頂けるということがすごく嬉しかったです。そして、なんの迷いもなく自然に『松也、一緒にやろう!』と言ってくれた獅童さんの心意気と姿勢に感銘を受けました。お芝居を僕の力でいいものにしていきたいなという気持ちはその時点で既にありました。原作の映画化で獅童さんが声優をやられたのも見て知っていました。予備知識があったので、僕にも迷いはなく、めいのイメージがある程度方向性が決まっていました。どんな方にも自分とリンクするような部分がある作品でして、性別・年齢・国を問わず、何かを発見できる作品だと思います。めいとがぶの関係も非常に好きです。歌舞伎では一応男の子の設定ではありますが、演じるうえで性別とか意識せず、どちらにもどんな関係性にも捉えられるように演じたいと思ってやってきています」

 

 

=絵本の世界観を残した古典歌舞伎を意識した作り・演技

獅童「人間が動物を演じるので、演技の工夫と床山さんや衣裳の方でも動物に見えるように工夫してくれています。われわれ歌舞伎の世界では動物を演じる時の型が残っています。キツネだと、(指全部を軽く内側に折り曲げて)手に表情をつけるようにしたり、所作などでキツネのように見せる演技をしますので、今回演じるがぶもオオカミということで、『義経千本桜』に登場する狐忠信の役を基にしているところがあると思います。登場人物の心情を音楽に合わせて語ってくれる“義太夫”で笑いが起きるというのは、古典歌舞伎ではなかなかないことですが、本作ではそれが起きてしまう。古典にこだわりながら「あらしのよるに」の絵本の世界観を残しながら古風に見えるように、新しい技術を使うことだけが新作ではないので、歌舞伎の古くからの表現方法にこだわった、歌舞伎のいいところが凝縮している新作歌舞伎です。長唄の歌詞でも結構笑えるところがあるので、そんなところも見て・聴いて頂けるといいと思います。とにかく衣裳は熱いです(笑)。1公演で1.5kgくらい痩せるほどです」

写真は福岡PARCOで開催中「あらしのよるにの世界展」での展示衣裳より。黒い衣裳が中村獅童演じるがぶのもの。右の白い衣裳は尾上松也演じるめいの衣裳。がぶの手はオオカミの鋭い爪をイメージした手袋を着用する

松也「演じる上ので工夫に関しては、顔とか人間のままで演じているので、それがどういう風に見えるかは義太夫や長唄、演技などで工夫していますが。個人的には、ヤギが草を食べる時の口の動き、あとは初演時から僕は勝手にヤギの形を手元で作っていたりしてます。オオカミは爪がついている手袋をしているんですけど、ヤギは素手だけなので、客席からは見えないんですが指先で蹄のような感じを作ってみたりしてます。そこが僕なりのこだわりです(笑)」

 

取材・文・写真/ローチケ演劇部(シ)