続編は〝無限列車編〟と〝遊郭編〟
野村萬斎演じる煉獄杏寿郎に刮目
野村萬斎が演出・謡本補綴を担当し、監修を人間国宝の大槻文藏が手掛ける「能 狂言『鬼滅の刃』-継-」。「-継-」では原作における“無限列車編”と“遊郭編”が描かれるが、屈指の人気エピソードだけに注目度も高い。
「どちらも壮大なお話でありますので、それをどう能楽堂という空間に収めるかがひとつの演出の見所です。まさか電車そのものを持ち出すわけにはいきませんからね。日本文化には“見立て”というものがありますので、そこは能舞台なりのアレンジをしまして、“あ、こういうことか”と思っていただけたらと思います」
セットなどがない能舞台だからこその演出。無限列車と遊郭が目の前にどう現れるのか、興味は尽きない。
「前作をやっているときから、無限列車のアイデアは頭にありました。能舞台は橋掛かりという廊下のような部分と、正方形の舞台があるだけですが、これだけ豊かになるってことをまざまざと体感していただけるのでは?能舞台のマジカルなところは、大きいものを小さく見せたり、小さいものを大きく見せたりするところです。古典って、ここまでぶっ飛んでるんだなと感じていただけたらと思います」
演出家としてだけでなく、今作では煉獄杏寿郎、堕姫、鬼舞辻無惨の3役を演じる。なかでも煉獄杏寿郎をどう演じるかは気になるところ。
「煉獄杏寿郎は、目線がまっすぐで、曲がったことが嫌いであり、それに対する非常に強い意志を持っている人。そういうまっすぐなところを全面に出して、役者としての熱量をストレートに出していこうと思っています」
前作では新体操のリボンを使い“水の呼吸”を表現し、大いに話題となった。今作で登場するであろう“炎の呼吸”はどう魅せるのか?
「今回、猗窩座との戦いがあります。原作やアニメでも非常に色彩的な要素が強かったと思います。ですが、それをリアルにやるというのは不可能ですから、天元とのド派手なシーンも含めて、今まであった古典の手法とは違う新しい要素を入れてお見せしようと思っております」
古典と言われる『源氏物語』や『平家物語』も元々は新作と呼ばれた時期があった。『鬼滅の刃』も回数を重ねるごとに洗練され、アップデートされていく。それを見届ける機会でもある。
「『鬼滅の刃』という皆さんが知っている物語を、能のダイナミズムや繊細な部分、そして狂言的なおかしみを含めて新作として見ていただくことで、“能 狂言ってけっこうやるじゃん”と思っていただけたらと思います。あまり難しく考えず、みんなで想像力を埋め合って遊んでほしい思います」
インタビュー&文/高畠正人
※構成/月刊ローチケ編集部 1月15日号より転載
掲載誌面:月刊ローチケは毎月15日発行(無料)
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【プロフィール】
野村萬斎
■ノムラ マンサイ
狂言師。祖父・故六世野村万蔵及び父・野村万作に師事。3歳で初舞台。重要無形文化財総合指定者。