
東京ドームへ、いざ参らん。
毎年、作品に登場した刀剣男士たちが一堂に会する大型公演を開催してきたミュージカル『刀剣乱舞』(=刀ミュ)シリーズが、十周年を記念して東京ドームでライブを行う。刀ミュの始まりから演出を担ってきた茅野イサムは、「野球好きなので東京ドームには何度も行っているのですが、あらためて“ここで自分が演出するのか”と感じています。ですが臆する気持ちはなく、ワクワクしています」と意気込む。
「いつか東京ドームでも刀ミュをやりたいと思っていたんです。密かに“こういうことが出来たら”などと企んでいたので、開催が決まってすぐいろいろな人に相談を持ち掛けました。その中で実現しそうなプランは半分くらいですかね(笑)。でも不可能だろうなと思っていたことが通ったりもしています。時間や予算、ものづくりは全て制約の中で作るものだと思っていますし、制約を逆手に取ることも面白さのひとつ。開催に向けて、楽しみながら準備中です」
今回は総勢44振りの刀剣男士が出陣。
「やはり大人数になると豪華ですね。数はパワーです。それと同時に、お客様にはお気に入りの刀剣男士や役者さんがいるわけですから、どれだけ増えてもそれぞれが薄まらないようにしなくてはいけない。カンパニーが少人数と大人数の場合でコミュニケーションの取り方も違ってくるので、難しいと感じる部分もあります。でも僕はにぎやかなことが大好き。それに“こんなに増えたのか”って思うと嬉しいじゃないですか。年に一度みんなで集まれる場があるのはとても幸せなこと。スタッフ陣や役者さんたちもそう感じてくれていると思います」
様々な方向へアプローチし、常に新たな挑戦に臨む刀ミュシリーズは、ジャンルにとどまらず、その存在感を強く示し続けている。
「こういうことも、ああいうことも出来るのではないかと、ずっと可能性を感じているんです。それは「刀剣乱舞ONLINE」という作品自体が持っている力なのだと思います。果てなく続く、無窮の天のような作品ですね。メディアミックスもアニメに映画、舞台に歌舞伎と多岐にわたる。だからこそ僕も刀ミュで色んな表現方法にトライしたい。大袈裟な言い方をすれば、それをしないことは作品への冒涜のような気がしてしまうんです。とはいえ、十年前のトライアル公演で初日を迎えるまでは“刀剣男士が歌って踊るなんて、けしからん!”と反対の声もありました。僕も“ごもっともです”と思いながら(笑)。でも乗り越えてくれたら、絶対に新しいものが見えるからと。それに刀ミュ、遡れば2.5次元というもの自体、時代が欲したものだと考えているんです。僕はエンタメや芸術といった表現全般は時代が生み出すと思っていて。さらに刀ミュでは歴史を扱っているので、歴史を学べば学ぶほど、全ての出来事は必然だったのだと感じずにはいられない。そう捉えると、ミュージカル『刀剣乱舞』は時代が求めてくれたのだろうなと思うことはあります」
刀ミュは今年、既に2本の作品を上演。多忙を極めている茅野は「この十年を振り返っている時間はない」と苦笑しつつも、「続けてこられたのは、お客様のおかげです」と感謝を述べた。
「作り手側が続けたいと願っても、受け取ってくださるお客様に“観たい”と思っていただけるかどうかなので。お客様の期待に誘(いざな)われて、今の刀ミュがあります。今後については答えるのが一番難しいのですが……。今お伝え出来ることは、皆さんが気になっているところは長くお待たせせずに描く予定だということ。その上で新たな展開に行けたらいいなと画策しております」
インタビュー&文/片桐ユウ
【プチ質問】Q:手土産を選ぶポイントは?
A:ある日、稽古場にお菓子を大量に買っていったら、あっという間になくなって。置いても置いてもなくなるので、どれくらい食べるんだろう?って面白くなっちゃって(笑)。今は3日に1回くらい大量に買っています。うまい棒とか歌舞伎揚げとか、個包装されているお菓子を大型スーパーで買っています。なるべく、甘いものとしょっぱいものを混ぜるようにしています。どこのスーパーに何が売っているか、お菓子に詳しいですよ。
※構成/月刊ローチケ編集部 6月15日号より転載

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【プロフィール】
茅野イサム
■カヤノ イサム
『サクラ大戦 スーパー歌謡ショウ』やミュージカル『刀剣乱舞』シリーズなど、2.5次元舞台の先駆けとなる作品を数多く手掛ける。