左から)坂田隆一郎、山口乃々華、ジェイミン
こだわりの舞台及び映像コンテンツを企画プロデュースするconSeptが、『conSept2026:シーズンReBORN』として舞台作品を3か月連続上演する。その第一弾のミュージカル『SERI~ひとつのいのち2026』が2026年2月に上演。本作は、倉本美香『未完の贈り物 娘には目も鼻もありません(2012年刊)』原作で、conSeptのオリジナル・ミュージカルとして2022年に初演。「多様性の暗闇に光を当てる」をテーマに、目も鼻もない状態で生まれた少女・千璃(セリ)と母・美香をめぐる実話を、ひとつのいのちに贈る愛と祝福の物語として紡ぎ好評を得た。その話題作が新バージョンとして上演される。千璃役は、初演で話すことができない役を圧倒的な身体表現で体現した山口乃々華が続投。母親の美香役には韓国で『ジーザス・クライスト=スーパースター』のマリア役などで歌唱力を絶賛されているジェイミンが日本のミュージカルに初登場。父親の丈晴役はアーティスト・俳優として活躍する坂田隆一郎が務める。親子を演じる3人に、今作の魅力やお互いの印象などを聞いた。
――山口さんは2022年の初演に引き続き千璃役で出演されますが、2026年版の公演が決まったことについて心境をお聞かせください
山口 プロデューサーの宋元燮さんから「公演が決まったよ」という連絡をいただいて、「引き続き、乃々華さんにやってもらいたいです」って言ってもらえて、すごく嬉しかったです。千璃は身体表現を思い切りできる役で、元々パフォーマーだった私の武器を使って自由にできるところが、とても好きでした。体も3年前と違う感覚になっているかもしれないですし、あそこまで出来るかなという不安もありますが、高みを目指して、もっともっと自由に表現が広げられたらいいなと思っています。

――ジェイミンさんと坂田さんは今作に初参加されます。出演が決まったことについて心境をお聞かせください
ジェイミン 日本のミュージカルに出演してほしいと言われて、最初は“え!”って驚きました。韓国語で演技をするのとは次元が違うことなので、日本語が話せても演技ができるのかすごく不安で悩みましたが、一回しかない人生で何事も挑戦しないと、1%の可能性も生まれないという思いでチャレンジしてみようと思いました。宋さんが私を信頼してオファーしてくださったことは、すごく嬉しかったですし感謝しています。
坂田 今のジェイミンさんのお話を伺って、とても感動しました。初演が素晴らしかったから、今回の公演が決まったと思うんですけど、その素晴らしい初演を作り上げたキャストやスタッフの想いも大事にしながら、もっともっといいものを作れるように、僕に出来ることをしっかりやりたいと思います。内容的にもセンシティブな部分がありますし、父親役を演じるのも初めてなので、正直不安は大きいです。でも、先程ジェイミンさんがおっしゃっていたように一度きりの人生なので、不安に負けずに少しでも想いを伝えられるように頑張りたいです。

――今作で親子を演じられる皆さん。本日が初対面ということですが、お互いの第一印象を伺えますでしょうか?
山口 ジェイミンさんは、すごくキレイな方だなと思いました。そして「あだ名で呼んでくださいね」と話しかけてくださり、緊張がほぐれました。優しい大人の方だなと。坂田さんは、たぶんすごく真面目で、シャイな方なんだなと(笑)。
坂田 僕、本当にめちゃくちゃ人見知りなんですよ。
山口 今のところそんな印象です(笑)。
ジェイミン まず、乃々華さんに初めて会った瞬間に、“あ!自分の娘さんだ”っていう感動がありました。ぶわ~ってすごく胸が熱くなって、その場は気づかれないように頑張りましたけど、ちょっとウルウルしてきちゃったんです。こんな可愛い方と親子になるんだなと、すごく嬉しかったですし、これから楽しい作業になるんだろうなと思いました。旦那さんは、“若い!”と思いました(笑)。すごくカッコいい方で、ちょっとシャイなところも見えて、“ああ~美香さんが恋に落ちた理由が、ここにあるんだな~”と(笑)。一緒に誠実にやっていきたいです。これから、よろしくお願いします。
坂田 こちらこそよろしくお願いします!乃々華さんは、すごく笑顔が素敵で透明感がある方だなと思いました。千璃を魂として表現するシーンがあるんですけど、妖精のような雰囲気がある乃々華さんはイメージどおりだなと。ジェイミンさんは、僕の人見知りを察して話しかけてくださって、すごく優しい方です。一緒に歩んでいきたいと思えるお二人なので、本当にありがたいなと思っています。

――山口さんが思われる、今作の魅力を教えていただけますでしょうか?
山口 取り扱っているテーマがセンシティブであり実話なので、苦しさや重さはあると思うんですけど。演出家の下司(尚実)さんが、両親は心配だから悲しんだり苦しんだりするけれど、千璃ちゃん自身は悲しいわけじゃないという、明るくハッピーなほうに視点をもっていってくださっていて、心がギュッと締めつけられたり温かくなったり、人の愛情が確かに感じられる瞬間が詰め込まれている作品だと思います。
――ジェイミンさん、坂田さん、お2人は脚本を読まれてどのような感想を持たれましたか?
ジェイミン 脚本を読ませていただいて、ものすごく感動しました。ストーリーの中にはいろいろな限界が描かれています。千璃ちゃん自身の生まれながらの限界点、障がいのある子どもを持って闘う母親としての限界の壁、そういう家族を背負う父親の限界点…。みんなそれぞれの自分の限界の壁を、落胆するばかりじゃなくて勇気を持って乗り越えていくところが感動的ですし、結局限界はないんだというメッセージが込められている作品なんだなと思いました。
坂田 僕は、脚本全体を通して愛といのちと幸せがテーマになっているなと思いました。千璃が幸せになるために、僕が演じる丈晴と美香はどうすべきかをそれぞれ考えていくんですけど、同じ親でも考え方の違いから衝突したり、周りの目を気にしてしまったり。でも、自分が何を幸せと思うか、この子が何を幸せと思うか、それを認めてあげる、認めてもらうことがすごく大事なんですよね。最後には認め合うことでその先の世界が見えるお話なので、心が救われた気持ちになりました。
――山口さんが、初演で千璃を演じる上で大切にされたこと、またご苦労されたことは?
山口 大切にしていたのは、コンテンポラリーダンスです。ヒップホップとかみたいにワン、ツー、スリーと決まった振付があるわけじゃなくて、こういう気持ちになったら、こういうふうに動いてみようみたいな流れを決めてくださる形で、毎回ちょっとずつ違ってもOKなんですね。だから、その瞬間の“楽しい”とか“嬉しい”とか“辛い”、“痛い”、“嫌だ”、“きれい”とか、そういうシンプルな感情のまま自由に表現していました。そこは難しいとは思わず楽しく取り組むことができました。大変だったのは、(自由に動きすぎて)あちこちにアザができてしまったことです(笑)。アスリートみたいに、膝パッドやヒップパッドをつけて稽古していました。
――2026年版で深めたいことはありますか?
山口 3年前は舞台経験が浅くて自分のことで精いっぱいだったので、今回は、共演者の方々とギフトを交換するような温かいお芝居のやりとりがもっとできたらと思っています。
――ジェイミンさん、坂田さん、お2人が役作りなど、演じる上で大切にされたいことは?
ジェイミン 韓国ではミュージカルを13年くらいやっているのですが、ずっと大事にしているのは、役の人物の立場になって感情に寄り添って、そのキャラクターを理解していくことです。ただ、今回は言葉が違う環境ですし、何もかも初めてという気持ちで、自分をからっぽにして白紙の状態で臨みたいと思っています。表現の仕方って国によって違う部分もあると思いますし、活かせる場面があれば活かして、いろんな感情表現を探りながら、日本のお客様に受け入れられるような美香を作っていきたいと思います。今から稽古するのがすごく楽しみです。
坂田 丈晴は、千璃が生まれる前から父親になって、そこから子育ての苦労とかいろいろ感じていくと思うんですけど、自分自身も一緒に成長していけるような役にしていきたいです。一公演一公演をリアルに、その瞬間に自分が何を感じたのかを大切にしながら、舞台上で生きていきたいと思います。

――今作は実話でもあり、「いのち」をテーマにしたメッセージ性の強い作品だと思います。観客にどのようなことが伝わればいいと思われますか?
坂田 この作品を観てくださったお客様が、身の回りの大切な人たちに、感謝や愛情を伝えたいと思うきっかけになったらいいなと思います。
ジェイミン 私たちの生きる人生は、こんなにも大切なんだっていうことが、ちょっとでも伝われば。皆さんの心が温まるような作品になるといいなと思っています。
山口 音楽監督でもあり作曲もされている桑原まこさんが作られる音楽が、本当に素敵で美しいです。舞台で私自身が歌うシーンは少ないですが、お風呂で歌ってしまうくらい(笑)、キャッチ―な楽曲ばかりなので、音楽好きな方にも大満足していただけると思います。この作品は、観る方によって感じ方が変わると思います。でも、「明るいことも暗いことも共存している世界だけれど、明るい方をみんなで見て行こう!」って、美香さんに共感しながら前向きになって帰っていただけると思います。
取材・文/井ノ口裕子
撮影/瀬津貴裕
スタイリスト/尾村あや
ヘアメイク/田中エミ
