2020年11月から東京・大阪で上演される、『ミュージカル「NINE」』。イタリアを舞台に繰り広げられるこの名作ミュージカルで主演を務める城田優に、作品に対する意気込みを聞いた。
――今回は主演ということで、昨年の「ファントム」での演出の経験が生かせそうなことはありますか。
今回演じるグイドは映画監督なので、モノを作り上げることや行き詰った時のストレスなど、自分で演出や映像の監督をした経験を活かせることはあるとは思います。ただそれはあくまでも城田優の感情であって、グイドのものと一緒かと言われればわからない。経験を通してグイドに理解・共感できることは沢山ありますが、根本的に城田とグイドは違う人間なので。スランプになったらどう行動するのか、グイドになったつもりで考えていきたいです。
――城田さんご自身は、スランプになった時どう過ごしていますか?
スランプがあまりないんです。あっても1日とか。(笑)一部のシーンについてはどうしよう、って悩んだりもするけど、悩みながらもその他のシーンについてはアイデアが出てきますし。なのでスランプはないです。僕がグイドだとしたら全盛期ですね。絶好調です。(笑)――今年の頭に役作りも兼ねてイタリアに行かれたそうですね。イタリアではどのように過ごしましたか?
グイドのようにカサノヴァと言われる、プレイボーイというか、女性に気を持たせるような男性。自分自身があまりそういうタイプではないので、彼らのように女性を抱いたりして取材のネタを作ってこようと思ったのですが、残念ながら何もなかったです。(笑)現地の女性との会話は一切なかったですね、自分が想像したイタリアの旅とは少し違いました。(笑)
でも、イタリアの空気を感じたり、自身に満ち溢れたおしゃれした男性たちを見て、すごくかっこいいなと。着飾ることで武装したように強く、かっこよく見える。グイドも自分が良いなと思った人にはばんばん声をかけていく人なので、そういった人たちを見て、役の参考にできるような人間観察はできたと思います。
――それをもとにどうグイドを演じていきますか?
どう演じたらいいとかは、台本の中にも答えはなくて。稽古を通して、議論しながら自然と深まっていくものなので、自分の中で固め過ぎず思い込まず、流れに身を任せていきたいです。グイドってそういう人だと思うんです。ずるがしこくて憎めない、人間らしい人。グイドのチャーミングな部分を稽古場で僕も出していければ。「嫌いだけど好き」「うざいけど好き」と思われるグイドになっていければと思います。――このグイドという役を演じることについて、いかがですか?
今自分が30代半ばですが、自分の中でのネクストステップになるのでは。毎回新しい作品に挑むときは「これをやってみよう」という想いをもって臨んでいますが、NINEに関してそれは大人の魅力。これまではピュアな役が多かったのですが、今回のグイドは嫌われるけれど、その一方で女性が放っておかないような魅力的な男です。才能は確実にあるけどスランプに陥っているという人間らしさがあり、魅力的に見えるけどだらしない。ただかっこいいだけではなく、表裏の感情や具体的な色味を両方兼ね備えている人物。そんなとても人間臭いこのキャラクターを今この年齢で演じるのはチャレンジングだけど、僕はチャレンジングなことに興味があるので。
この役は40代の大人の魅力を持っていないといけないので、5年後・10年後に演じる方がむしろやりやすいかもしれないですよね。だから、34歳でどこまで魅力的な色っぽさが出せるかがとてもチャレンジング。エロティックというか、魅力的な色気を出せるように、かわいいとかだらしないとかいろんな誉め言葉やけなし言葉が混在している人間を目指してやっていきたいです。
――演出家の藤田さんとの関係について教えてください。
今日、藤田さんの想像しているセットや作り方、方向性の確認をしてきました。台本を読んだだけでは少し難解で、抽象的に描かれていたり時空がゆがんだりと1回では分からないところもありましたが、今日藤田さんと話して、少し道が開けました。方向性などがわかったので、斬新なセットの作りとかアイデアを聞いて楽しみが増えましたね。
映画監督の役なので、それがまた活きてくるような新しくて面白い演出、新しい演劇の形ができそうで楽しみです。演じる側に徹しながらも、作品をより良くしていけるよう、皆さんに楽しんでいただけるように準備していきたいと思います。