舞台「サイボーグ009 -13番目の追跡者-」ゲネプロレポート

©石森プロ ©舞台「サイボーグ009」製作委員会

2024年に誕生60周年を迎えた、石ノ森章太郎によるSF漫画「サイボーグ009」。戦争用兵器として改造手術を受けた9人のサイボーグ戦士たちが、悩みや悲しみを背負いながらも平和のために戦う物語だ。2024年5月に舞台化されるとクオリティの高さが話題となり、舞台ファンはもちろん原作ファンからも熱い支持を獲得。2025年11月14日(金)より、第二弾となる舞台「サイボーグ009 -13番目の追跡者-」が上演されている。

前作に引き続き、演出を植木 豪、脚本を亀田真二郎が務め、サイボーグ戦士のキャストは七海ひろき、天華えま(声の出演)、高橋駿一、音波みのり、里中将道、桜庭大翔、酒井敏也、川原一馬、Toyotaka、大高洋夫が続投。
彼らの前に立ちはだかる謎の組織「黒い幽霊団(ブラック・ゴースト)」の最高幹部であるスカールを中塚皓平が演じ、本作で初登場の0012を野々花ひまり、0013を後藤 大が務める。脇を固めるBG SOLDIERSには、世界的に活躍しているダンサーなど多彩なメンバーが勢揃いした。

<ゲネプロレポート>

今回も、冒頭の楽曲から迫力満点。ダンスと歌唱に加え、キャスト陣の身体表現、照明や映像効果、舞台機構を駆使した演出でサイボーグ戦士たちの格好良さと強さが存分に披露される。それぞれの能力を活かしたパフォーマンスを見せてくれるため、今回初めて「サイボーグ009」に触れる方も、スムーズに理解できるのではないだろうか。
スカールと0012と0013の怪しくも美しいパフォーマンス、BG SOLDIERSのアクロバットなどもあり、どこを見てもワクワクする世界に一気に引き込まれるはずだ。

物語は00ナンバーサイボーグたちが束の間の休息を楽しんでいる中、ギルモア博士が行方不明になることから始まる。平穏を楽しむジョーたちの穏やかで幸せそうな姿があるからこそ、その後の戦いにおける敵・味方双方の言葉が胸に響いた。第一作目以上に、七海演じる009/島村ジョーの優しさ、サイボーグ戦士たちが抱える悲しみ、敵として立ちはだかるサイボーグたちの事情や苦しみなどが描かれている。超人的な力を持つ彼らの人間らしさが伝わる物語になっていると言えるだろう。同時に、平和のために終わりの見えない戦いに身を投じるジョーたちの姿から、多くのメッセージを受け取ることができる。

新たな刺客・サイボーグ0012、0013のドラマは、原作をベースにアレンジが加えられているため、舞台ならではの展開を楽しむことができる。不敵な態度の中に悲しみを覗かせる0012と、純真な心と優しさが切ない0013。彼らが抱えるドラマ、サイボーグ戦士たちとの交流や衝突も丁寧に描かれており、グッとくるシーンが随所にあった。
楽曲やダンスからも手強い敵であることが伝わってくるため、ジョーたちは大丈夫だろうかとハラハラドキドキしつつ、魅力的な二人の活躍ももっと見たいと感じてしまう。原作ファンであれば「あれを舞台でどう表現するんだろう?」と気になるだろう彼らとのバトルも、演出の工夫とスタッフワーク、キャスト陣の熱演によって見事に見せていた。

そして、魅力あふれるキャラクターたちが紡ぐ美しく悲しい物語を存分に味わった後は、ヒーローカーテンコールやフォトショットカーテンコール、アフタートークなど、回替わりのアフターイベントを楽しむことができる。ゲネプロでは、スカールの命令を受けたBG SOLDIERSにさらわれた観客をサイボーグ戦士たちが救い出すというヒーローカーテンコールのパフォーマンスが繰り広げられ、大いに盛り上がった。
本作は2025年11月14日(金)~24日(月・祝)まで東京・品川プリンスホテル ステラボールにて上演。11月14日(金)と11月24日(月・祝)の各公演は、本編とアフターイベント/カーテンコールの配信も行われる。

<初日開幕コメント>

演出:植木 豪

今回も最高なキャストと最強なスタッフの皆様で「サイボーグ009」の世界に飛び込んでいただけるように全員で挑みました。
稽古場で繰り広げられるサイボーグ戦士達の特殊能力は、まさに子供の頃に憧れて真似をしていた事が目の前で体現されていて毎日ワクワクしていました。
そして、そのサイボーグ達と戦うBG SOLDIERSの面々の鍛え上げた身体表現が更に戦いをスキルフルにパワフルに魅せてくれています。
今回登場する敵のサイボーグ達はこの作品が大事にしているテーマを背負って登場いたします。
この時代だからこそ更に伝わるストーリーを亀田さんの脚本で舞台の世界に繰り広げられて、また奥深く味わっていただけると思います。

誰が為に何の為に戦う、、、

「サイボーグ009」は今また私達に大事な事を教えてくれている気がいたします。

サイボーグ009/島村ジョー役:七海ひろき

前作同様、亀田真二郎さんの脚本、植木豪さんの演出のもと、新たなキャストも加わり、個性あふれる皆さんと共にお届けできることを心から嬉しく思います。
稽古を重ねる中で、石ノ森章太郎先生の世界観に込められた想いの深さを改めて感じました。さらに進化した私たちの熱量を、ぜひ劇場で受け取ってください。

0012役:野々花ひまり

宝塚を卒業して初めて挑む、舞台「サイボーグ009」。
お稽古場では、演出の植木豪さんをはじめ、皆様の作品に対する熱意と愛を全身で感じながら、毎日が新しい発見と挑戦の連続でした。
この舞台に立てることへの感謝と、0012として生きる覚悟を胸に、お客様と共にこの作品がさらに進化していく瞬間を、心から楽しみにしています。

0013役:後藤 大

舞台「サイボーグ009」の新たな幕が上がります。
前作を拝見した際、009チームの皆さんの絆と心の通い合いを真正面から浴びて、その素敵な空気感に感動し「この作品にぜひ出演したい」と強く思いました。
その想いを終演後に皆さんへお伝えしたことを覚えています。
そして今回、0013として出演させていただくことになり、今度は自分が皆様にこの作品の魅力をお届けする番になりました。
「サイボーグ009」は日本が誇る名作です。
僕はこの物語を、決して遠い未来の話でなく、私たちがこれから向き合うかもしれない現実の物語でもあるように感じでいます。
その中には恐怖や狂気、そして希望も共存しているように思っています。
0013を演じながら、他者との繋がりや優しさについて考えました。
優しくて、悲しくて、そしてとても純粋な彼の心を大切に演じていきます。
もともとパン派なのですが、0013の影響でさらにパン派になりました。
どうぞ、最後まで見届けていただけたら嬉しいです。

※石ノ森章太郎の「ノ」の字は、約60%縮小が正式表記。

舞台写真

インタビュー・文・撮影/吉田沙奈